パナソニック コネクティッドソリーションズ(CNS)社の傘下にあるパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)は、CNS社の注力事業である「現場プロセスイノベーション」を支えるフィールドエンジニアリングの取り組みについて説明した。

PSSJのエンジニアリング本部は、全国約70拠点、約1600人のサービススタッフで構成。出張修理や定期点検、コールセンター、運用支援を行う「フィールドサポートセンター」、リペアやライフサイクルマネジメントを担う「プロダクトサポートセンター」、システムや機器の施工、設置などを行う「施工センター」を通じて、施工から設置、保守、運用サービスまでを提供。年間受付件数は約40万件、年間稼働件数は約16万件、対応可能な品番数は2万3000件に達し、パナソニック製品以外にも対応しているという。

  • エンジニアリング本部の組織体制

    エンジニアリング本部の組織体制

パナソニック システムソリューションズ ジャパン 取締役専務執行役員/エンジニアリング本部 本部長の藤井克敏氏は、「お客様の現場を支える部隊が、フィールドエンジニアリング。データを取得するためのエッジデバイスを最適に設置、運用し、24時間365日のサポート体制を敷いている。機器の特性を理解しているメーカー系エンジニアだからこそ、システムの特性を生かして、パフォーマンスを最大限に引き出すことができる。そして、顧客の運用状況にあわせた最適な体制でサポートを行える。現場を支え続けるフィールドエンジニアリングを強化することで、さらなる現場プロセスイノベーションの実現を目指す」とした。

  • パナソニック システムソリューションズ ジャパン 取締役専務執行役員/エンジニアリング本部 本部長の藤井克敏氏

現場プロセスイノベーションは、パナソニックの100年にわたる製造業としての知見やノウハウを通じ、現場の人、モノ、機器の動きをデジタルデータとして可視化し、サイバー空間で分析。それらの情報をフィードバックし、現場の課題解決を行ったり、経営判断につなげて企業の経営課題の解決を実現するものだ。

これまで、製造、物流、流通の3分野を、現場プロセスイノベーションの対象領域としていたが、今後は、PSSJが手掛けるあらゆる業種に範囲を拡大。フィールドエンジニアリングの貢献範囲も広がることになる。

「1968年に納入した郵便局向け窓口会計機を皮切りに50年以上に渡って、顧客のビジネス現場を支えてきた経験がある。顧客の要望やシステムの変化に合わせて機能を強化し、オペレーションノウハウを蓄積。顧客のビジネスを止めないために、最適に、迅速に、顧客視点のフィールドエンジニアリングを、日本全国をカバーするプラットフォームによって提供している」(藤井氏)

機器の設置などにおいては、これまでのノウハウを生かしながら、データを収集しやすい位置にレイアウトしたり、CNS社現場プロセス本部のコンサルティングチームなどと連携しながら、最適な提案を行うといったことが可能になっている。

また、顧客の現場で障害が発生すると、その連絡をコールセンターで受け取り、システムを活用して担当者を迅速にアサイン。現地対応が必要であればフィ―ルド部門が駆け付け、引き取り修理が必要であればリペア拠点で対応する。全国に拠点や店舗などを展開している顧客の場合には、PSSJの運用統括部門が、顧客の責任者などと直接調整を行い、フィールドとリペアの双方の仕組みを活用しながら迅速な対応を行うという。

  • サービスフロー

札幌で運営している障害受付窓口のコールセンターでは、契約ユーザーへの応答率は90%以上、重要契約ユーザーでは99%を達成。東京・品川に設置している「システムお客様ご相談センター」では、パナソニック製品の購入相談や技術相談に対応。一次解決率は92%に達しているという。

さらに高水準でのサービスを提供するために、社員の教育制度の強化にも力を入れており、業務に必要な国家資格やベンダー資格の取得を助成する制度を用意。今後の市場の要望に応えるために、IT系資格やプロジェクトマネジメント系の資格取得を促進していくという。現在、IT系資格者は661人、プロジェクトマネジメント資格者は455人、無線系資格者413人、電気および電気通信に関する管理技術者は333人が在籍している。

  • 教育制度

また、社内独自認定制度を設け、サービス提供に必要な知識を、体系的に取得する体制も整えている。

「フィールドエンジニアリングを支えるのは人であり、人材育成に投資を続けている。社員全員がなにかしらの資格を取得している体制を目指す」とする。

さらに、経営品質啓発センターでは、過去の事例や顧客の声をもとにした学習を繰り返しているという。

いくつかの事例も紹介した。

全国2万4000カ所の郵便局に設置されている端末や、防犯カメラシステムにトラブルが発生した場合には、連絡受付後、駆けつけて即日対応を行っているという。約70カ所にサービス拠点を配置しているのは、全国2万4000カ所の郵便局のすべてに即日対応が可能なサービスレベルを提供するための体制であり、「全国どこでも高水準のサービスを実現できる組織力が強みである。顧客からは、機器メーカーであるパナソニックの社員が直接駆けつけてくれるため、安心であるという声をもらっている」とした。

  • 郵便局端末・防犯カメラシステム

2つめは、レットノートの修理対応である。

PSSJのエンジニアリング本部では、国内の法人向けレッツノートのすべての修理に対応。オンサイト保守では、翌々営業日に訪問し、その場での障害対応を行うほか、引き取り修理では到着後24時間以内に修理を完了する。「年間対応可能台数は5万台。高いサービスレベルを保つことで、顧客のビジネスを止める時間を最小限に抑えている」という。

  • レットノート修理対応

3つめは、決済端末の設置、保守、運用サービスの提供だ。

パナソニックは、国内における据置型決済端末でナンバーワンシェアを持っており、100社以上のクレジットカード会社などと連携。全国の加盟店に年間10万台の新規設置を行っている。また、コールセンターで受け付けるサポート件数は年間1万6000件に達している。

  • 決済端末

「カード会社ごとの対応を熟知し、それぞれにあわせた対応を全国で行っている。効率的で、高品質な対応を、同じ水準で提供している」とする。

4つめが、防災行政無線システムである。

置局設計から建設工事、個別受信機のキッティング、システム点検や保守、無線局の登録点検までをカバーするという。

防災行政無線システムは、1963年に、浦和市(当時)に納入以来、数多くの自治体に納入、運用した実績を持ち、設備の老朽化や高度化に伴う更新も、数多く手がけているという。また、システム構築から施工に至るノウハウを蓄積。無線設備の設置、施工、点検に必要な無線技術者を全国に配置して、この分野におけるシェアナンバーワンの納入実績を支えているという。

  • 防災行政無線システム

こうした事例を示しながら、藤井氏は、「フィールドエンジニアリングのミッションは、顧客の現場と、パナソニックの開発、製造、販売をつなぐことである。他社では、開発、製造、販売とは別にエンジニアリング会社を運営していることが多く、現場の声が開発に届かないということが想定される。パナソニックでは、開発、製造、販売と、フィールドエンジニアリングを、ひとつの会社で提供しているため、現場の声や現場の課題を社内にフィードバックし、顧客の業務プロセスに最適化したソリューションの提供につなげることができる。さらに、サービスを含めたビジネスプランを作ることも可能である。フィールドエンジニアリングによって、顧客と継続的な信頼関係を構築し、リカーリングビジネスを創出することができている。システムを導入するだけの単発的な関係で終わるのではなく、保守、運用の付き合いのなかで、顧客の現場により精通することができる。新たなソリューションビジネスの開発へとつながり、顧客と長期的な関係を築くことができる」としている。

パナソニックは、現場プロセスイノベーションによって、自らの得意領域でのビジネスを推進する戦略を打ち出しているが、それを実行する上で、地道な活動を行うフィールドエンジニアリングの存在は欠かせないといえる。