カブトムシの成虫は「昆虫の王様」と呼ばれ子供たちに人気だが、ずんぐりした幼虫が固い地面をどのように掘り進むかは長年の昆虫学者の間でも謎だった。大阪大学の研究グループが、幼虫は固い地中でもでんぐり返しを繰り返して回転しながら掘り進むという技を持っていたと発表した。地中での幼虫の動きを詳細に観察できる独自の装置を開発し、その生態を突き止めた興味深い成果だ。

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    カブトムシ幼虫が連続回転しながら地面を掘り進む様子(大阪大学提供)

カブトムシの成虫は頭部の角の長さを除いても体長3~5センチほどある大型の甲虫で、角が日本の兜(かぶと)に似ていることからその名が付いている。地中に産み付けられた卵は2週間程度でふ化して幼虫になるとされるが、地中での詳しい生態はよく分かっていなかった。

大阪大学大学院生命機能研究科の大学院生、足立晴彦さんらの研究グループは、ずんぐりして太く、頭も丸いカブトムシの幼虫が固い地面でどのように穴を掘るのかという長年の謎を解明するために、地中での幼虫の動きをリアルタイムで詳しく観察でき、土の固さも変えることができる独自の装置を開発した。

装置は縦2センチ、横13センチ、高さ21センチ。足立さんらは観察しやすいように装置の中に土の代わりにストローを短く切って敷き詰めた。そして、“地面”の固さを変えながら幼虫の動きをビデオで観察し、動きをコンピューターで解析するなどした。

その結果、“地面”が軟らかいときは、ミミズのように体を波打たせるぜん動運動をしながら直線的に掘り進んだ。一方固くなると、でんぐり返しのような、連続的な回転運動をしながら周囲を削るように掘り進んだという。

研究グループの足立さんらは今回の研究成果について「これまであまり研究が進んでいなかった土中での昆虫の動きが、予想以上に知性的であり、バラエティに富んでいることを示し、動物行動学の分野に新たな光を投じる」とコメント。「土木関係で何か役に立つ機器の発明につながる可能性も無きにしもあらずだが、それよりも多くのカブトムシファンの子供たちが、より生き物に興味を持ち、自分でも面白い発見ができるかもしれないと希望を持つ価値の方が高いと思う」と話している。

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    オスのカブトムシ(成虫)

研究成果は7月16日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版で掲載された。

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