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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

2021年7月22日より『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』の全国ロードショーが始まりました。

1979年のTV「機動戦士ガンダム」に始まる壮大なガンダムシリーズの中、ガンダムの原作者である富野由悠季が総監督・脚本を手掛けたTV「ガンダム Gのレコンギスタ」(14~15)全26話を5部作に再編集(&新作カットも挿入)してお届けする劇場版映画シリーズ、その第3弾。

今回はちょうどドラマの折り返し地点にあたり、その後のクライマックスへ突入していく上でも重要なパートになるので、シリーズ・ファンは見逃し厳禁のものとなっています。

地球内外の勢力が入り乱れる中
明かされる衝撃の事実



『Gのレコンギスタ』の舞台となるのは、かつての宇宙戦争によって多くの科学技術や知識が失われたものの、地球上の全エネルギー「フォトン・エネルギー」を供給する軌道エレベータ「キャピタル・タワー」を支えに、少しずつ再興の兆しを見せていたR.C.(リギルド・センチュリー)1014年。

ある日、キャピタル・タワーの防衛を目的とする組織「キャピタル・ガード」の候補生ベルリ(声:石井マーク)は、謎のMS「G-セルフ」でタワーを襲撃した宇宙海賊の少女アイーダ(声:嶋村侑)と出会います。

いつしか彼女の行動に巻き込まれていくベルリは海賊部隊の母艦「メガファウナ」に乗船してG-セルフのパイロットになり、キャピタル・ガードから派生した軍事組織「キャピタル・アーミィ」の攻撃を幾度も退けていきます。

そんな中、大国「アメリア」が宇宙艦隊を編成し、キャピタル・タワー制圧のために出撃。

実はアメリア軍の隠密部隊であった宇宙海賊も、それに追従します。

大気圏外で繰り広げられる激しい戦いのさなか、アメリア軍が、続いてキャピタル・アーミィとメガファウナが、キャピタル・タワーの最上部ザンクト・ポルトに到達して……。

といったところまでが『GのレコンギスタⅠ 行け!コアファイター』(19)『GのレコンギスタⅡ ベルリ撃進』(20)の大筋。

そして今回の『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』ですが、まずはザンクトポルトにいるアメリア軍がスペースコロニー国家「トワサンガ」の攻撃を受けます。

それは、トワサンガが地球への帰還をめざす「レコンギスタ作戦」を開始したためでした。

ザンクトポルトで地球内外の4勢力が結集し、それぞれが権利を主張して意見を戦わせていく中、アイーダとベルリはトワサンガを目指し、そこでふたりに関する衝撃の事実が明かされます……。
 
--{説明台詞の域を優に超えた リズム&ケレンの富野作品}--

説明台詞の域を優に超えた
リズム&ケレンの富野作品



実はこの『Gのレコンギスタ』、TVシリーズ放映時はストーリーが入り組んでいて難解であるといった声が多かったのですが、劇場版はそれを払拭すべくかなりわかりやすい構成がなされ、また個々のキャラクターの心情を深く掘り下げる新規カットも多くみられることで、単なるTVの総集編とは一味も二味も異なる“映画”そのものの面白さが新たに生まれています。

とはいえ、TV未見のまま初めて劇場版に接した方は、それでも設定の複雑さや作品世界独自の専門用語の羅列、敵味方が大いに入り乱れまくるキャラクターの多さなどに眩暈を覚えるかもしれません。

(ちなみに、本作のチラシやパンフレットなどにはかなりわかりやすい作品世界の相関図が載っていますので、それらを参考にされるとかなり難解度は緩和されるでしょう)

何よりも、富野監督作品ならではの独特の言い回しによる膨大なる台詞の応酬!

その大半は言ってしまえば説明台詞なわけですが、富野監督作品に関しては説明の意味を成さなくなるほどのけたたましい速さと量をもって、特にこのシリーズに関してはまるで見る側の情報処理能力テストでも受けているのか? と恐れおののくほどのものなのでした。

昨年『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(20)が大ヒットした際、日頃アニメを見ない実写畑の映画人たちが作品を見て、その説明台詞の多さに愕然としたという批判の声をあちこちから聞かされたものですが、確かに昨今の日本のアニメ作品は説明台詞が多いのが、ひとつの大きな特徴になっているとはいえるでしょう。

(これには声優人気も関係していて、要するに歌舞伎役者の大見得を彼ら彼女らの「声」で表現している感も、個人的には受けています)

しかしながら富野監督作品の台詞は、説明することよりも、まずは作品そのもののリズム感を醸し出すために機能していて、さらにはそのけたたましさから独自のケレン味なども生じていくことで、エキセントリックながらもダイナミックな世界観が確立されているような気もしてなりません。

--{「考えるな、感じろ」を実践する 富野監督作品の世界観}--

「考えるな、感じろ」を実践する
富野監督作品の世界観



私自身、本作に限らず富野監督作品は、台詞も含めて頭で理解しようと務めるのではなく、声の響きそのものを画と共に感じるように常に心がけています。

そうすると、はっきり申して1回見ただけでは当然ながらストーリーそのものを把握しきれるはずがありません!?

しかし、そのケレンのリズムの虜になり、見終わった後はずっと脳内幸福モードに包まれてしまい、またしばらくすると再び見たくなり、今度はストーリーをちゃんと把握しようと試みつつ(ただし1回見ただけで既に漠然とわかった気にもなってはいます)、またも「感じる」ことの幸福感で満たされ、もう1回、もう1回と繰り返していくという……!

名作クンフー映画『燃えよドラゴン』(73)のブルース・リーの名台詞「考えるな、感じるんだ」とは、まさに富野監督作品のために存在するのではないでしょうか。

さらに『Gのレコンギスタ』は吉田健一による陽性のキャラクター・デザインが、よくよく考えるとかなり過酷なストーリー展開であるにも関わらず、どこかしら爽やかな印象をもたらしてくれています。

戦闘シーンのスリリングな躍動感なども、当然ながらガンダムシリーズの韻を踏んだ優れもので、それでいて常に新しいガンダムを構築しようと模索し続ける富野監督の、決してシリーズ人気に甘えようとしない若々しい気迫みたいなものを感じてしまいます。

(最近も「鬼滅つぶす、エヴァつぶす。そのくらい思わないと!」といった、さすがの宣言をされてましたね)

ここまでの『Gのレコンギスタ』劇場版3作品を続けて見ていきますと、TVの総集編どころか、シリーズそのものをギュッと絞りつくしたかのような濃縮感をもって、銀幕に接するこちらをあれよあれよと翻弄&圧倒させてくれるという、まさに“映画的”な逸品に仕上がっていることに気づかされます。

そもそも富野監督作品の真価は映画館の大画面で見てこそ最大限に発揮できるのではないかと、今回の『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』を目の当たりにしながら改めて痛感させられました。

DREAMS COME TRUEのテーマソングに乗せて各キャラクターが楽し気に踊るエンドタイトルにも見惚れつつ(振付は富野監督の次女でダンサーの富野幸緒。TV版アイキャッチの振付も彼女の担当でした)、この後続く第4弾と第5弾を「感じる」ことを楽しみに待ちたいと思う次第です。

(文:増當竜也)

--{『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』作品情報}--

『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』作品情報

【あらすじ】
ザンクト・ポルトにいるアメリア軍の航宙艦が、突然攻撃を受ける。スペースコロニー国家トワサンガが、地球への帰還を目指すレコンギスタ作戦を始めたのだ。ザンクト・ポルトに集結した地球内外の4勢力が、それぞれの権利を主張して意見を戦わせる。そんななか、真実を求めるアイーダ(声:嶋村侑)は、ベルリ(石井マーク)や仲間とともにトワサンガを目指すことを決意する。そして、月の裏側にあるトワサンガで、ベルリとアイーダは衝撃の事実を知らされる……。 

【予告編】


【基本情報】
出演:石井マーク/嶋村侑/寿美菜子/佐藤拓也/逢坂良太/高垣彩陽/福井裕佳梨/鶏冠井美智子/中原麻衣

監督:富野由悠季

配給:バンダイナムコアーツ、サンライズ

製作国:日本