オリンパスは7月21日、総務省プロジェクト「タイにおける高精細映像技術を活用した内視鏡及びAI診断支援システムの国際展開に向けた調査研究」に参画したことを発表した。タイ消化器内視鏡学会(TAGE)と連携して、同国における内視鏡AI診断支援システムの有用性や、普及可能性に関する実証調査を実施する。

  • 総務省プロジェクト参画者(左から、オリンパス執行役員 内視鏡事業担当 河野裕宣氏、総務省聡官房審議官 辺見聡氏、昭和大学横浜市北部病院教授 工藤進英氏、サイバネットシステム医療ビジュアリゼーション部部長 須貝昌弘氏)

同社は昨年度に、インドを対象とした総務省プロジェクトに参画し、同国の大手医療機関と連携してAI診断支援システムの臨床応用に関する実証調査を実施している。インドにおける臨床での使用と日本人医師からの指導によって、超拡大内視鏡「Endocyto」、AIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN」、および「EndoBRAIN-EYE」の有効性と今後の普及可能性が示されたという。

そこで本年度はTAGEと連携して、サイバネットシステムの協力のもとで同プロジェクトへの参画に至ったとのことだ。タイは経済成長に伴って食生活が欧米化しており、また高齢化の影響でがんの罹患率が増加傾向だという。特に大腸がんは、がん全体の中で罹患率が第4位、死亡率が第3位と高く、社会的な課題になっているとのことだ。

同国ではがんの早期発見や治療のために必要な、内視鏡検査の需要の増加が見込まれている一方で、内視鏡検査を実施する際に必須となる知識や技術を持つ医師が不足している。そこで同社は、トレーニングを受けた指導医が同国および周辺国の医師を育成して、最新のAI技術を活用した内視鏡診断の普及と発展に貢献することを狙って、同実証を開始する。

同実証ではAI診断支援システムを用いた医師トレーニングを実施するとともに、同国の医療政策および医療ICT化の現状を調査する予定だ。2021年8月から2022年3月にかけて、AI診断支援システムを用いた大腸内視鏡による病変の検出から鑑別診断までのトレーニングが実施される予定であり、同社は機材の提供とトレーニングコースのアレンジを担当する。