ロックの時代到来?オリヴィア・ロドリゴは2020年代のゲームチェンジャーとなるか?

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年6月25日発売号の誌面に掲載されたオリヴィア・ロドリゴのデビューアルバム『SOUR』を考察した記事。2021年最大のセンセーションを巻き起こしている彼女は、「ラップがポップになった時代」だった2010年代を後景に、2020年代を「ロックの時代」として定義するのだろうか?

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「drivers license」が記録的なメガヒットとなったことによって、オリヴィア・ロドリゴは2021年初頭におけるポップの主役に躍り出た。だが、もしかしたら、それもただの始まりに過ぎなかったのかもしれない。テイラー・スウィフトを抜き、アメリカでの2021年初週最高売上で全米初登場1位を記録したオリヴィアのデビューアルバム『SOUR』は、ラップがポップになった時代=2010年代からのモードチェンジを促し、2020年代の新しい扉を開く可能性も秘めている。

Olivia Rodrigo – SOUR

改めて言うまでもなく、2010年代は「ラップがポップになった時代」だった。2010年代半ばから新世代のラッパーたちが次々と台頭し、特にポスト・マローン以降はラップとポップの境目が完全に溶解。ポップシンガーたちにとっても、「ラップからの影響を如何に咀嚼するか?」というのが2010年代後半の最重要課題となった。ビリー・アイリッシュはラップとポップを並列に聴いてきた世代の代表的な表現という意味で、まさに2010年代の集大成であったと位置づけていい。

ところが、オリヴィアの『SOUR』にはラップからの直接的な影響は少ない。せいぜい「good 4 u」のヴァースにその爪痕が確認できるくらいだろう。乱暴に言えば、本作の基本的な構成要素はポップパンク/ロックとテイラー・スウィフトだ。今のところ、これが今年最大のヒットになりそうな勢いで聴かれているという事実。そこに時代の大きな転換の予兆を感じ取ったとしてもおかしくはない。

アルバムの幕開けを飾る「Brutal」は、ブリーダーズの面影がよぎる90年代オルタナ風。全米1位の「good 4 u」は、コーラスに入るとパラモアやアヴリル・ラヴィーンを彷彿とさせる痛快なポップパンクへと一気に旋回する。もっとも、アルバムには「drivers lisence」路線のメロウなバラッドも多い。だが、それはむしろ、彼女がただのパンクキッズではなく、ポップとロックのハイブリッドであることの証拠だろう。

Olivia Rodrigo - brutal (Lyric Video)

おそらく、ここまでストレートにロックの影響を打ち出したポップヒット作はここ10年なかったのではないか。彼女のレーベルは「Brutal」をアルバムに収録すること、しかも1曲目に持ってくることに「これでは誰も聴かなくなる」と難色を示したというが、それほどこのアルバムは既存のトレンドにそぐわず挑戦的だったということだ。

もしかしたら、『SOUR』は今後のメインストリームのトレンドを一新し、2020年代をロックとパンクの時代に塗り替えてしまうかもしれない。そんな大それた予想が頭をよぎるほど、本作は新鮮な驚きに満ちている。

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Edited by The Sign Magazine