吉沢亮主演の大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で、“プリンス・トクガワ”こと徳川昭武役を演じている板垣李光人。第22回では、第15代将軍となった異母兄の徳川慶喜(草なぎ剛)の名代として、渋沢栄一(吉沢亮)らと共に海を渡り、パリ万国博覧会へ赴いた昭武が、ついに皇帝ナポレオン三世に謁見した。同シーンは、まさに板垣にとってはハイライト的な見せ場となった。そんなシーンは、コロナ禍での撮影となったため、人知れぬ苦労があったようだ。板垣が本シーンの撮影秘話を明かしてくれた。

  • 『青天を衝け』でグリーンバックでの撮影に臨んだ徳川昭武役の板垣李光人(中央)

「ナポレオンとの謁見は、昭武にとっては大きな仕事でした。彼は日本の今までの歴史をすべて背負ったうえで、自ら先頭に立って歩いていくシーンになっているので、カッコいいシーンになっていればいいなと思っていました」と言う板垣。

とはいえ撮影されたのは緊急事態宣言中の5月だったので、ほぼグリーンバックでの撮影となった。「芝居をしている時は、緑の箱みたいなところにいて、VRみたいに人や物を配置していただいた中でやりました。事前に映像を見せていただくのですが、それは豪華絢爛な宮殿でたくさんの人が並んでいて、昭武の正面にナポレオンがいるというものでした。昭武がそんな空間を、おずおずと進んでいくという流れです。実際の宮殿であれば、人の呼吸や歩く足音が響いたりすると思いますが、それらすべてを自分のなかで想像しなくてはいけなくて。そこはかなりの集中力を求められました」と告白。

のちの回で登場する昭武と栄一が2人でセーヌ川を歩くシーンも、すべてグリーンバックで撮影された。「本来は外で撮るシーンですし、ああいう芝居は、ロケーションに助けられるところがすごくあるのですが……。あのシーンでも本来感じられるはずの風や川の匂い、パリの景色など、全部を想像しないといけなかった。そういう意味では、今回グリーンバックの撮影がとても印象に残っています」と語る。

ただ、板垣は同シーンについて「個人的にはとても好きなシーンとなりました。昭武が栄一に対して、正直な思いを吐露する部分なので、すごくいいシーンになっているのではないかと」と手応えを口にする。

昨年、映画『約束のネバーランド』(20)で、2次元の世界から抜け出してきたかのような美貌で一気に脚光を浴びた板垣。今年は、春に放映されたドラマ『カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。~』(21)でのジェンダーレスな美少年ぶりでも話題を振りまいたが、プリンスである昭武役も予想どおりハマリ役となった。

そんな昭武は、これからさらなる人生の山場を迎えていく。兄である徳川慶喜が大政奉還を行ったことで、新政府から帰国要請を受けることになる。

「パリに立つ前に慶喜から、今後何かが起こるかもしれないといったことを言われていたけど、昭武はすごく頭がいいから、きっとその時点で何かを考えていただろうし、行く前に覚悟もしていたのではないかと。ただ、日本からすごく離れた異国にいるから、情報が入ってきた時点でタイムラグがあるし、じゃあ今、日本はどうなっているんだろうと、大きな衝撃を受けたはず。でも昭武のことだから、今後自分はどう動いていくべきかと、考えを巡らせるほうにシフトチェンジしていったのではないかと思いました」。

そんな昭武だからこそ、時代の一歩先を見据える栄一に目をかけたのも大いに納得がいく。「昭武と栄一では身分が違いますし、昭武には水戸藩の近しい家臣もいます。では、なぜそこまで彼は栄一に信頼をおき、いい関係を築けたのか? そもそも昭武の父親(徳川斉昭)はすごく硬い人だったけど、慶喜は非常に頭の柔らかい人だから、きっと昭武は兄のほうに感銘を受けていたと思うんです。そんな昭武が、パリでも水戸藩士の考え方に違和感を抱いたところに、臆せずものを言う栄一がいた。聡明な栄一は、パリに行ったあとも柔軟な考え方をしていたから、身分を超えて昭武は栄一にすごく心を動かされたのではないかと」。

今後、さらに怒涛の展開を迎えていく『青天を衝け』。キーパーソンとなるプリンス昭武と慶喜を栄一がどう支えていくのか、今後も目が離せない。

■板垣李光人(いたがき・りひと)
2002年1月28日生まれ。2015年大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK)で幼少期の吉田寅次郎役、2018年『仮面ライダージオウ』のウール役などで注目される。主な映画出演作は『約束のネバーランド』(20)、『ツナガレラジオ~僕らの雨降Days~』(21)、『ゾッキ』(公開中)など。ドラマ『ここは今から倫理です。』『カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。~』(21)も話題となる。公式インスタグラム(@itagakirihito_official)も人気。

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