日常では出会うことができない各界のトップランナー12名が講師を務める「世界がひろがるアカデミー」が2021年8月に開校する。今回、「世界がひろがるアカデミー」の発起人であり校長を務める倉本美津留(放送作家,演出家etc)と、講師の1人・こやまたくや(ヤバイTシャツ屋さん,寿司くん)による対談を前後編にわけて掲載する。

  • 「世界がひろがるアカデミー」の発起人であり校長を務める倉本美津留さん(右)、講師の1人・こやまたくやさん(ヤバイTシャツ屋さん・寿司くん、左)

後編では、こやまが思うものづくりや発信することへのこだわり、コロナ禍におけるエンタメを取り巻く状況について2人が今感じていること、そして開校へ向けてのメッセージをいただいた。

こやまさんが想う"表現"へのこだわり

――こやまさんは、音楽を作ることと映像を作ることは分けて考えてはいないんですか?

こやま:あんまり考えてないですね。表現としてはなんでもいいというか(笑)。音楽と映像以外でもいいし、文章で面白いことが発信できればそれでもいいと思ってます。もともと音楽はずっと好きで、映像と出会ったのも音楽がきっかけですし。映像って総合芸術って言われていて何でもできるというか、音も絵も必要だし、色んな要素が必要になってくるので、時間をかけたら面白いものができると思ってます。ただ、映像はコスパが悪いなって思いますね(笑)。映像作るのはすごく大変やなって。それは音楽をちゃんとやるようになってから思うようになりました。優劣をつけるわけじゃないですけど、自分自身でやってる感覚として、僕の場合は単純に使う労力が映像の方が高いと思います。

  • こやまさんが語る"表現すること"へのこだわり

――音楽はわりとでてきたものをそんなにこねくり回さずにそのまま出しているような感覚ですか?

こやま:それもありますし、映像ってほんまに作るのにすごく準備とかが必要やったりとか、作った後も編集とかに時間がかかるし、それを見てもらうのにもすごく工夫が必要やし(笑)。 音楽も準備や編集が必要ですけど、ありがたいことに今は色々協力して貰える環境にいるのでなおさら、映像は色々コスパ悪いなと思うことがあるんですよ(笑)。ただ、作るのはすごく楽しいです。

倉本:それを同時にやっている人がこれまで少なかったと思うんですよ。こやま君はそれを当たり前のようにやっていたと思うんだけど。規模がでかくなるほど大変になってきたということだよね?

こやま:そうですね。あと、ここ数年で映像もYouTubeで誰でもできるようになったので。僕が始めたのは10年ぐらい前なんですけど、その頃はまだ映像の編集してる人とかもそんなにYouTubeにいなかったんですよね。そこから2、3年で急にYouTuberが出てきたり、誰でもスマホで編集できるようになったりとか、みんな当たり前のようにプレミアとか使えるし、誰でも映像を作れる時代になったので、技術も大事やけど発想力がより大事なんやろなって思うようになりました。今、ヤバTのMVとかを作るときはそういう風に思ってやってますね。

倉本:ヤバTのMVは、発想の塊やもんね。まず発想があってそれを映像にする。だらこそ影響力を持つ作品クオリティになる。で、そんな面白い発想の映像は人にヒントをあげるものなるので、そのヒントを得た人が後からどんどん映像を作って来る。そういう意味では、自分で自分の首を絞めていくようなところもあると思う(笑)。それは大変なことやけど、それをやっていかなあかん、というような人やと思うんですよね。人と違うことをやってブレイクさせていくという道を選んだ人やから。

こやま:そうですね。人と違うことはしたいなってずっと思ってます。

倉本:「世界がひろがるアカデミー」の講座では、みんながそれぞれ違うすごい人になってほしいというのがあるので。こやま君は、「いかに人と違うことで生きていけるのか?」みたいなことの学びにすごく良い生き方をしてくれてるなって思います。

作品をつくることと同じぐらい大切な"知ってもらうための工夫"

――自分が作ったものを、どのように発信するのか悩んでいる人もいると思います。

倉本:これがまた、誰でも発信できる時代になっているだけにね。今後どうなっていくのかというのはあると思いますけど。

こやま:僕は、作品を作って終わりじゃなくて、それをたくさんの人に見てもらうための工夫が、ものを作るのと同じぐらい必要やなと思っていて。学生時代からそう思っているんですけど、作ったものを人に見てもらわないと意味がないし、自己満足で終わるのが嫌なんです。学生の頃に周りにいた人たちの中には、「これはわかる人だけわかればいいから」みたいなものづくりの仕方をしている人が結構いたんですよ。そういう人たちは作品を作ったことで満足していて、それをたくさんの人たちに見てもらおうということは考えていなくて。それはそれで良いと思うんですけど、僕は「みんなわかって面白い方がええやん」って思っていたんです。僕は自分が作ったものを見て欲しいし、承認欲求もすごく強いし(笑)。だから、作品を作る前に、見てもらいやすい環境づくりをしようと思って、何にも作品を作っていない状態で、先にSNSのアカウントを作品を載せるために作ったんです。そこで面白い風の文章をいっぱいツイートしてフォロワーを増やした状態にしてから、そこに「寿司くん」というアニメをドーンと載せて広まりやすくしたりとか。そういう工夫はしてましたね。

  • 表現者として、これからの時代に必要な能力とは?

倉本:はあ~、なるほど。寿司くんをいきなり出しても……

こやま:見てくれないですよね。先に見てもらえる環境を作ってから載せるっていう。

倉本:もう、僕は1つ勉強させてもらいました(笑)。

こやま:順番として、寿司くんをやってからヤバイTシャツ屋さんを1~2年後に始めたんです。寿司くんのときに、「こうやったらみんなが見てくれて注目を集められるんや」っていうのが自分の中で勉強できていて。ヤバTはその流れで、SNSのアカウントを作って、1回ネット中心に面白がってもらえるような感じにして、そこからライブもたくさんやるようになったりとか。寿司くんをやってたから、ヤバTが上手くできたのかなっていうのはありますね。

倉本:その感じが普通じゃないというか、いち早くそういうことをやり始めている感じがあるよね。それは発想と経験と蓄積を自分の身にどう落としていくかということだと思うから、色んな人の場合にもヒントになるというか。「私はこんなことをやろうとしているんですけどどうしたらいいですか?」みたいな質問には的確に答えてくれるんじゃないかな。

こやま:バンドマンとかでも、自分の仕事は曲を作ることであって、それを広めるのはレーベルとか事務所の仕事って言ってる人もいるんです。

倉本:それはわりと多いよね。

こやま:でも、自分でやった方が効果があるなと思っていて。自分の思ってるように発信できるし、「こんな作品ができたんです」って直接届けた方が、効果的なんかなって。自分で作ったものを広める努力はいるのかなって思います。

二人が考えるコロナ禍におけるエンタメの在り方

――こやまさんご自身が今、クリエイティブなことで倉本さんに訊いてみたいことはありますか?

こやま:コロナ禍になってから自分の体感として、みんなエンタメに対するモチベーションがすごく低くなってるなって思ってるんですよ。自分の力不足を勝手にコロナのせいにしてる部分もあるんですけど(笑)。エンタメに対してまだまだ不要不急やと思われている感触があるんですけど、倉本さんはどう思いますか?

倉本:やっぱり、ライブに出かけて集団の中で盛り上がるということに対しては、拒否反応は出てるし、出るやろうなって。その盛り上がり方がむずかしくなってきているというのは、もともとそういうことで楽しむことが多かったやんか?音楽にしてもスポーツにしても。

こやま:そうですね。

倉本:そこで楽しませることができないとなると、どうなったらいいのかなっていう考え方で、切り開いていかなあかんのやろなって思うよね。

  • コロナ禍におけるエンタメの在り方とは?

こやま:そうですよね、切り開かないといけないでしょうね。例えばサブスクとかYouTubeって、みんなライブに行くための予習として見ることも多いんですよね。やっぱりフェスとかライブがないと、バンド全体の再生数があからさまに落ちてるんです。結構、ステイホームでみんな家で見るんちゃうかとか思ってたんですけど、そうじゃなくて。色々チェックしてるんですけど僕らだけじゃなくて、フェス常連アーティストの勢いがすごく落ちていて、エゴサーチしていてもお客さんたちのモチベーションが、「どうせライブもいけないし」みたいになってるのが伝わってきて。今まで通りのライブがいつできるようになるかもわからへんし、今まで通りにやっていてももうあかんのやろなって。コロナ禍になって1年半ぐらい経ってしまいましたけど、なかなかそこの新しいアイディアというか、モチベーションが下がった人たちを連れ戻すアイディアというのが難しいんですよね。

倉本:ライブ会場に行って盛り上がるのが好きな人が、配信でライブを見たときの満足度ってたぶんすごくギャップがあると思うんだよね。大きなバンドとかは、生配信でどんどんやっていった方がいっぱい人が見に来るからええのかなって思ったりもするけど、実際は当事者としてはそうでもない感じなんや?

こやま:当事者としては、なかなか厳しいなあって(笑)。どうにか離れていかないように工夫はしているけど、やっぱりみんな離れていってるなあ~という感じはありますね。例えば、テレビ番組に出ていっぱい歌ってるような人たちはまた違う界隈というか、メディアで歌ったりはしないけど、フェスやライブハウスでどんどんお客さんを取り込んでいくスタイルでやってる人たちにとってはすごく厳しい1年やったと思います。それこそ、切り開くためには僕らがテレビに出してもらって歌えばいいんじゃないかとかっていう葛藤もあるんですけど、そこを今急にブレさすのも、今までいた人たちがガッカリするんじゃないかって。そういう気持ちもあったりとか、むずかしいですね。だからとにかく、早く元に戻ってくれるのが一番いいんやけど(笑)。今は答えがないんですよね。

倉本:「ライブ」ということで言うと、ジャルジャルのライブをずっと作ってきていて。 毎年2回ずつやってきていたんですけど、それが去年コロナでできなくなった。彼らも地上波のテレビでバンバンやるというタイプでもないから、単独ライブでどれだけたくさんの人に見せられるかっていうモチベーションでやってきていた中、さてどうする?となって、そのライブ用に用意していたネタをクラウドファウンディングで映画にすることにしたんです。舞台用に作ったコントをムービーにするということで自ずから見せ方が変わって、結果、今までにないものができたんです。背に腹は代えられないが表現方法の幅が広がった。俺の勝手な意見やけど、こやま君は映像を作る力があるから、ヤバTでめっちゃ映像でしかできへん新たな表現追求してみてもええんちゃうかな?(笑)。

こやま:ああ~なるほど。

倉本:そこを追求していったらどうなるかっていう。

こやま:そうですね。ほんまにもう、結局自分らが頑張らなあかんだけの話ですよね(笑)。

倉本:ははははは(笑)。

「世界がひろがるアカデミー」の魅力とは?

――では最後に、「世界がひろがるアカデミー」開校に向けてひと言ずつお願いします。

こやま:僕はきっと、堅苦しい講義にはならないと思います(笑)。なんとなくボケ~っと聞いてもらうだけでも、面白いなと思いながら何かちょっとは持って帰れるようなものがあると思っています。他の講師の方たちもめちゃくちゃ豪華ですし、受講される方も限られてますし(定員50名)、知っている人もまだそんなにいないと思いますから、この記事を今見ていることは、まずここで出会いがあったということですから、すごくラッキーなんですよ(笑)。すごく楽しめてためになると思いますので、是非参加していただきたいです。

倉本:本当に、何かもやもやしているという人はたくさんいると思うし、そのもやもやは誰かの話を聞いたり誰かとコミュニケーションを取ることで晴れていくものだと思うんです。このアカデミーは自分が目当ての人に話を聞きに行くと、勝手にいろんな体験が同時にできるようになっている。だから「えっ?全然違う景色があったんだ!」ということになって、もやもやがパッと解消されると思います。今回、こやま君のことを全然知らなかった人が、「そんなバンドがあるのか!?」って、ヤバTにハマるようなことが起きたりするのが一番面白いと思うんですよ。そんな可能性を広げるために、全然違うジャンルから、僕が凄いと思う12人の人達に声を掛けました。こやま君が講師に入ることでめちゃくちゃ幅が広がりました。茂木健一郎とこやまたくやが両方おる授業って普通無いですからね。おかしいじゃないですか(笑)?

こやま:ははははは(笑)。

――YOUさんが講師を務めるというのも相当貴重な気がします。

倉本:そう、YOUさんは普通なら絶対に講師的なことをしたがりませんからね。でもやってくれたら絶対面白いと思ってオファーしたら「まあ、美津留がそんなに私が出来るっていうのなら、それを信じてやってみようか」って引き受けてくれました。昨日、どんな内容にするかミーティングしてたんですが、どんどん面白い形が見えてきて、本人も楽しみになったきたって言ってました。これはレアですよ。ここでしか絶対あり得ない講義になります。「世界がひろがるアカデミー」は参加人数限定50名、早いもの勝ちの講座なので、見つけ今がチャンスです。是非ご参加ください。

●information
「世界がひろがるアカデミー」
2021年8月開校、2021年9月授業開始
※9月以降、原則隔週第2・第4水曜日19:00講義開始予定