国内電力の約3割を担うJERAが脱炭素化を進める意味

「日本の脱炭素化を前進させる!」

 愛知県名古屋市から南へ約40㌔。碧南(へきなん)市の港湾部に位置するJERAの碧南火力発電所。合計最大出力は410万㌔㍗と、石炭火力としては国内最大、世界でも最大級の火力発電所である。ここでアンモニアと石炭を混ぜて燃やす世界初の実証事業が始まろうとしている。

 現在は畑など、主に農業分野で肥料として利用されているアンモニア。近年は、燃焼時にCO2(二酸化炭素)を排出しないことから、温室効果ガスの排出削減に大きな利点があるとして、発電用燃料としての利用が期待されているのだ。

 今回の実証事業は環境負荷の低減に向け、石炭とアンモニアの混焼による発電を行い、ボイラの収熱特性や排ガスなどの環境負荷特性を評価し、アンモニア混焼技術を確立することが目的。同社は8月から少量を混焼した実験を開始し、2024年度にアンモニアの20%混焼を目指すという。

「アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないCO2フリー燃料のため、火力発電所において燃料として利用することでCO2を抑制することができる。大型の石炭火力発電所で大量のアンモニアを燃料するのは世界初の試み。本実証を成功させ、将来の日本の脱炭素化を前進させると共に、日本同様、火力発電を必要とする国々へのソリューションの一つとして提供できる技術に仕上げていきたい」

 こう語るのは、JERA社長の小野田聡氏。

東京電力と中部電力が折半出資する国内最大の発電会社であるJERA。同社は昨年、2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする政府の「カーボンニュートラル」宣言に先立ち、2050年のCO2排出ゼロを目指す『JERAゼロエミッション2050』を打ち出した。

 旧式で非効率な石炭火力発電所は2030年までにすべてを停廃止し、残った火力発電所はアンモニアや水素を活用した発電所に置き換える他、洋上風力などの再生可能エネルギーの割合を増やしていく方針。

 水素、アンモニア両面から事業化の可能性を探っているJERAも、水素を混焼させた火力発電は2030年代以降に運用開始し、40年代に混焼率を拡大させることを想定。一方、アンモニアは30年代には混焼率20%、40年代にはアンモニアだけを燃料として使用する”専焼化”を始めようとしている。

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新たなサプライチェーンの構築が必要

 JERAはアンモニアの活用を図るため、5月には世界最大手、ノルウェーの窒素系肥料メーカー、ヤラ・インターナショナルとの協業を検討することで覚書を締結。発電燃料としてのアンモニアの安定供給に加え、新たなサプライチェーンの構築や事業ノウハウの獲得を進める考え。

 小野田氏は「今回、実証実験を行う碧南火力4号機でアンモニアを20%混焼する場合、アンモニアの年間所要量は約50万㌧になる。これは日本の消費量の約半分に相当する量であり、発電用の大量のアンモニアは既存のサプライチェーンでは賄うことができない。そのため、エネルギー業界に留まらず、経験を有する事業者や大規模需要家など、国内外の大手企業と協力し、新たなサプライチェーンを構築していく」と語る。

菅義偉首相は4月に、30年度に温室効果ガスを13年度比で46%削減する目標(従来目標は26%減)を表明したばかり。こうした目標を実現するためには、水素やアンモニアなどの活用は欠かせないものになる。

 その意味で、国内電力の約3割を担うJERAが脱炭素化を進めることの意味は大きい。同社の取り組みは国の政策や他社の動向にも影響を与えそうだ。

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