11代目となるホンダの新型「シビック」が、やっと我々の目の前に姿を現した。目指したのは、モヤモヤが続く現代の「一服の清涼剤」となる「爽快」なクルマだ。新型の開発過程では過去のシビックをじっくりと研究したそうだが、中でも3代目「ワンダーシビック」に学ぶところは多かったという。
日本では苦戦? 「シビック」の現状
シビックといえば、ホンダが製造する四輪車の中で最も長い期間、同じ車名で販売が続けられてきた同社のメイン車種である。初代のデビューは1972年。低公害のCVCCエンジンを搭載するとともに、コンパクトなFF2BOXという斬新なスタイルで登場し、たちまち世界中に認められる大ヒットモデルになったのはご存知の通りだ。
それ以降、「スーパーシビック」(2代目、1979年)、「ワンダーシビック」(3代目、1983年)、「グランドシビック」(4代目、1987年)、「スポーツシビック」(5代目、1991年)、「ミラクルシビック」(6代目、1995年)、「スマートシビック」(7代目、2000年)など各世代に愛称が付けられ、世界170カ国以上で累計2,700万台以上が販売されてきた。
小型のベーシックカーとして開発されてきた7代目までに対し、8~10代目はミドルクラスへと大型化。世界では相変わらず売れていたものの、日本では「シビックらしさが失われた」として次第に人気に翳りが見られるようになった。4ドアセダンだけの販売となったり「タイプR」だけになったりと、後半戦は苦戦を続けてきたというのが日本におけるシビックの近況だ。
新型「シビック」のコンセプトは「爽快」
事前説明会に登壇した開発責任者の佐藤洋介氏によると、新型シビックのグランドコンセプトは「爽快シビック」。11代目となる新型シビックは、混迷が続く現代の「一服の清涼剤にしたい」との思いで開発が始まったという。目指したのは親しみやすさと充実・凝縮された特別な存在感を併せ持ち、乗る人全員が「爽快」になることのできるクルマだという。
そんな佐藤氏が事前説明で言及したのが3代目のワンダーシビックだ。その意図を本人に聞いてみると、こんな話を聞くことができた。
「人を中心とするエクステリアとインテリアのパッケージングについて、本当に磨きがかかっているのがワンダーシビックだと感じました。10代目まであるシビックの中でも原点といえるワンダーシビックを、もう一度、今の時代にふさわしいシビックにしたい。そんな思いで開発をスタートしました」
「例えば3代目のインパネの上面は本当にすっきりとしていて、実際に走ってみてもガラスへの写り込みが少なく、ドライバーへのノイズが少ないのです。そのノイズレスな価値を提供するのが、今回のシビックです。さらに形として、四隅のタイヤにしっかりとキャビンが『乗って』、踏ん張っているのがカッコいい。それがクルマの本質ではないかと思っています」
「3代目を実際に所有したことはありませんが、借りて乗ってみるとインパネの低さが印象的でした。実は、新型でも同じくらいまで低くすることはできたのですが、下げすぎるとドライバーは逆に不安になってくる。そこで、新型では視界の見下げ角と合わせる形で、安心できるポイントまで上げています。昔のクルマは速度域が低かったのでインパネが低くても良かったのですが、今は欧州も含め高速域で走行することが多く、200km/hで走っても不安にならないことは重要なポイントです」
昔のクルマには「宝が詰まっている」と語る佐藤氏。過去の遺産を研究し、宝物の数々を現代のクルマとして再構築したのが、新型シビックというクルマなのだ。