フォルクスワーゲンの新型「ゴルフ」はマイルドハイブリッド車(MHV)だが、エンジンは排気量違いで1.0Lと1.5Lの2種類がある。1.5Lを積む上級グレードは1.0L搭載車より60万円ほど高いが、その価格差を飲み込んでまで1.5Lを選ぶ意味はあるのか。試乗して考えた。

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    新型「ゴルフ」の「R-Line」に試乗!(本稿の写真は撮影:原アキラ)

日本で買える「ゴルフ8」のグレードは「eTSI Active Basic」(291.6万円)、「eTSI Active」(312.5万円)、「eTSI Style」(370.5万円)、「eTSI R-Line」(375.5万円)の4種類。前の2つが1.0L、後の2つが1.5Lを搭載する。下位グレードと上級グレードの価格差は約60万円。最初に乗った1.0Lの「eTSI Active」がとても好印象だっただけに、あえて上級グレードを選ぶ意義があるのかどうかが気になった。今回は「eTSI R-Line」に試乗して感じたことをお伝えしたい。

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    試乗した「eTSI R-Line」。ボディは「オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト」という長い名前のオプションカラーに塗られていた

「R-Line」の見た目は何が違う?

まずはR-Lineのエクステリアを確認してみよう。「Active」はフロントのエアインテーク両側に3本の“ヒゲ”があったが、「R-Line」はそのあたりがブラック一色になっていて、印象としてはより低く、ワイドになった感じだ。外側にはブラックの太い縁取りがあって、その大きさを強調している。右側の「IQ.LIGHT」の脇と左右のフェンダーには「R」バッジを備える。

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  • ほかのモデルに比べスポーティーな仕立てとなっている新型「ゴルフ」の「eTSI R-Line」

サイドは太いCピラーがゴルフであることを主張。「Active」よりもワンサイズ大きい225/45R17のブリヂストン製タイヤ、ボディ下端のブラック処理、リアの4本出しマフラーカッターなどが「R-Line」であることを教えてくれる。こうしたちょっとしたアクセントの違いによって、どんどんスポーティーに見えてくるのは歴代ゴルフが持つ美点で、“素”のゴルフもいいんだけど、やっぱりコッチの方が……などと、購入を予定するオーナーを悩ませることになるのだ。

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  • ワイドになったフロントインテーク周り(左)、4本だしマフラー(中央)、17インチのタイヤ(右)などが「R-Line」の証

インテリアでは、チェックのファブリックとマイクロフリースを組み合わせた専用のハイバック式スポーツシートが目を引く。背面には「R」のロゴが刺繍されている。ヒーター付きのステアリングもR-Line専用で、レザーの太いグリップはとてもいい感触だ。

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  • チェック柄の専用スポーツシートが目を引く「R-Line」のインテリア

室内のデジタル化については、基本的に1.0Lモデルに準ずる。違いとしてはフロントシートヒーターが付いたり、ダッシュ中央にドライブモード変更のためのタッチスイッチが加わったりしている。スイッチや各パネル部分に使われているプラスチックなどのパーツは、下位モデルと素材感の差があまりなく、黒くて質素なまま。このあたりもゴルフらしいところかもしれない。

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  • エアコンの温度やオーディオの音量を調整できるスライドバーを備えたインフォテインメントシステム。「R-Line」のシートヒーターは、温度調整のバーをダブルタッチすると作動する。タッチスイッチで選択できるドライブモードは「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「カスタム」の4つ

1.5LのMHVはパワフルで正確

R-Lineのパワートレインは、最高出力110kW(150PS)/5,000~6,000rpm、最大トルク250Nm/1,500~3,500rpmの1.5L直列4気筒に9.4kW(13PS)、62Nmのモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステム。試乗したのは静岡県の御殿場だったので、近くの長尾峠に持ち込んでみた。

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    150PS/250Nmを発生する「R-Line」の心臓部

中低速のコーナーが続く長尾峠のワインディングは、大パワーの高性能スポーツカーにとってはちょっと手に余る部分が多いのだが、コンパクトな2BOXボディを持つゴルフのスポーティー仕様あたりにはぴったりのコース。モード選択で「スポーツ」を選び、パドルシフトを使って走ってみると、フラットで鷹揚な加速を示した1.0Lモデルに比べ、はるかに明確なメリハリ感があって、シフトごとの加速や減速が思い通りにできるようになる。

R-Lineはロックtoロックがわずか2回転のプログレッシブステアリングを専用装備として装着しているので、狭いコーナーでもステアリング操作が1発で決まり、狙った通りの正確なライン取りができる。思わず、「ゴルフはやっぱりこれじゃなきゃ……」と声が出る。

足回りはフロントがアルミ素材のサブフレームを使用したマクファーソンストラット、リアが運動性と快適性の両方を兼ね備えるマルチリンク(4リンク)式サスペンションを採用。コーナリングの途中に段差があっても姿勢変化は少なく、凹凸の大きな路面を通過するときにはボディが落ち着いていて静粛性が高い。このあたりが、1.0Lモデルに対して大きなアドバンテージとなる部分だ。ワンランク上のクルマに乗っているような上質さが印象的だった。

「トラベルアシスト」の使い心地は

御殿場ICから乗った東名高速では、ワンボタンで自動運転レベル2相当の追従運転ができる「トラベルアシスト」を試してみた。R-Lineの試乗中は小雨だった雨がかなりの大粒になりはじめ、大型トラックなどが豪快に水しぶきを跳ね上げながら並走するような状況で、周囲のクルマやレーンをきちんと認識するにはかなり厳しい条件だった。それにもかかわらず、トラベルアシストの作動は極めて良好で、前方のクルマとは適度な車間を取りながら、レーンの中心をキープして走り続けてくれた。

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    大雨の東名高速で「トラベルアシスト」を試した

ゴルフ8のコックピット画面をトラベルアシストモードにしてやれば、テスラ車のように前方と隣のレーンを走るクルマの形状をアイコンで表示してくれるので安心感があるし、見ばえも先進的だ。あえていうと、画面に映るクルマは前方を写すカメラの画像をもとに表示するものなので、後方にいるときは普通車として表示されていたクルマが、自車を追い越した途端にトラックに形が変わったりしてしまう点は、ちょっとだけ気になった。

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    コックピットの表示を「トラベルアシスト」モードに切り替えると、前走車や両隣の車線を走るクルマを具体的な形状で描写してくれる。まるでテスラのような表示方法でわかりやすい(写真はインパネ中央のディスプレイに同じ画面を表示させて撮影)

燃費面では1.0Lモデル同様、巡航中にはすぐにコースティングモードに入ってくれるし、状況によっては4気筒の半分の2気筒で走る2シリンダーモードも選んでくれる。返却時の航続可能距離は590キロになっていたが、51リッターのタンクをわずかに使った状態から計算すると、実際の燃費は13~14km/Lあたりになりそうだ(WLTCモード燃費は17.3km/L)。

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    走行状況に応じて気筒休止を行ってくれる「R-Line」

本国では2019年に発売済みのゴルフ8。そのバリエーションは豊富で、よりスポーティーな2.0Lターボエンジンを積む245PSの「GTI」をはじめ、高性能版(300PS)の「GTI クラブスポーツ」、320PSの最強4WDモデル「R」がすでに登場している。その全てが日本に入ってくるかどうかはわからないけれども、スポーツゴルフが欲しくて予算に余裕があるのなら、それらを待つという手もある。