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昨年秋に公開された本広克行監督『ビューティフルドリーマー』で、自主映画をかじったことのある身にとってはとても好ましい存在感を発揮していた主演の小川紗良。

既に自主映画界の監督としても高い評価を得ていたと知ったのもそのときですが、そんな彼女の初長編映画監督作『海辺の金魚』も、初々しく、瑞々しく、そして繊細で切ない思春期の想いみたいなものがあふれ出る秀作に仕上がっています。



また実はこちらも環境こそ違えど鹿児島県で高校時代までを過ごしていた身なもので、阿久根市の児童養護施設で暮らす18歳のヒロインがこれからどう旅立っていくべきなのか? といった不安や葛藤みたいなものは、少しばかりは共有できている気が勝手にしているのでした。

(もっとも、世代的には芹澤興人演じる児童指導員みたいな目線や立場になってしまうことも、今では多々ありますが……)

やはり昨年の山本政志監督によるアナーキーの極み映画『脳天パラダイス』のインパクトが大だった小川未祐ですが、ここでは一見凛とした立ち姿の中から垣間見えるはかなさや孤独、焦燥みたいなものまで上手く醸し出されています。

また、だからこそ、家の水槽の中にいる限りは可愛く映え続けるであろう金魚を海へ連れ出すという暴挙(!?)をもって、これからも無謀を繰り返しては傷つき、そして大人へと成長していくヒロインの未来が示唆されているようにも思えてなりません。



『誰も知らない』(04)などの山崎裕撮影監督によるキャメラの妙もあって、美しい風景をあくまでも自然体で捉えつつ、その中でどこかしら同じ哀しい体験を経てきているような18歳と8歳の孤独な少女の関係性を際立たせていくのも好感の持てるところでした。

いずれにしましても、新たな才能の巣立ちの決意を見せつけられた想いの作品であり、既にとうのたった大人たるこちらとしては、ただただ今後も次代の意気込みを見守り、応援し続けていきたいものです。

(文:増當竜也)

--{『海辺の金魚』作品情報}--

『海辺の金魚』作品情報

ストーリー
児童養護施設で暮らす花は、夏を迎えて18歳になった。翌春には施設を出るきまりだが、将来への夢や希望が何ひとつない。花が8歳のとき、母親が無差別殺人の罪で逮捕・勾留されて以来、彼女の心には何物も入り込む余地がなくなっていたのだった。ある日、ボロボロのぬいぐるみを抱えた女の子・晴海が施設にやってくる。必死になってぬいぐるみを抱きしめている晴美の姿に、花はかつての自分を重ね合わせていた……。

予告編


基本情報
出演:小川未祐/花田琉愛/芹澤興人/福崎那由他/山田キヌヲ

監督:小川紗良

公開日:2021年6月25日(金)

製作国:日本