コロナ禍で働き方が一変しつつある昨今、デジタルを上手に取り入れ、業務効率化と売上アップを果たした企業がある。デジタル化が遅れていると言われている業界で、何をきっかけにシステム導入に踏み切ったのか、そして導入後の効果はどうだったのか、今回は整骨院の事例を紹介します。

東京・神奈川・大阪・兵庫・広島で整骨院を展開している“ぷらす整骨院グループ”を運営するSYNERGY JAPAN。小児鍼やスポーツ選手に対する筋肉治療・出産後の骨盤矯正や身体の歪みを整える骨格矯正・神経痛などへの鍼級治療など幅広い施術内容で、現在は40店舗以上を経営しています。

  • “プラス整骨院”市ヶ谷店

整骨院業界はデジタル化が遅れている

リモート勤務や外出自粛など環境の変化で生じるカラダの不調を相談に来る方も多いそうで、コロナ禍でも売上は前年対比約120%UPと好調です。ただ業績が伸びる一方で、同社はひとつの課題を抱えていました。それは、顧客・売上・予約など、すべてがアナログな管理だということ。

「全国に約5万件ある整骨院のうち、売上上位10社の店舗数を合計してもわずか500店舗、全体の1%です。施術する先生=店舗オーナーという個店ではデジタルツールの導入まで手が回りません。さらに、職人気質な先生が多いので、ITに苦手意識を持っている方も多く、感覚的には飲食業界よりも15年くらいデジタル化が遅れている業界だと感じています」と語るのは、同社の取締役COOの上口泰正氏。

  • SYNERGY JAPAN / COO 上口泰正氏

「デジタル化の遅れは当社にも言えることでした。昨年まで店舗の予約台帳や顧客管理は紙ベースで、POSシステムのない現金管理のみのレジを使用していたので、終業後、現場スタッフが売上をExcelに入力し、翌日経理がジャーナル(1日の売上データを出力したレシート等)とExcelの入力内容を照らし合わせるという管理方法でした」(上口氏)

  • 以前使用していた紙カルテ

デジタル化の遅れにより慢性的に発生する残業時間を減らしたい

現場に依存したアナログな管理方法は、抜け漏れミスによる二度手間三度手間が発生する事も多々あり、現場スタッフや経理担当の業務負担はさらに増え、残業が慢性的に発生していたという。業務を効率化してスタッフの労務環境を改善すること、それが同社のデジタル化のきっかけだった。

残業時間を増やしていた2大アナログ業務が、 Excelシートに日々の売上を商品別に入力する売上管理と、紙カルテに施術内容などお客様情報を書き込む顧客管理。この2つをデジタル化して、さらにデータ連携させることができれば、労務環境は大幅に改善すると考えた上口氏は、売上管理としてPOSレジ「ユビレジ」を、顧客管理として「Salesforce」を、そしてこの2つをデータシームレスに連携させるために「ユビレジ for Salesforce」の導入を決めた。

  • 顧客管理の「Salesforce」とPOSレジ「ユビレジ」の連携イメージ

「当時運営している整骨院は全国に37店舗ありましたが、全店一斉にデジタル化に踏み切りました。『ユビレジ』は操作が簡単なので、どの店舗も大きな混乱はありませんでした」(上口氏)

導入後、気になっていた残業時間は大幅に削減された。具体的には、これまで60~90分かけてExcelに入力していた売上管理業務は、POSレジ上の締めボタンを押すだけの1分で終了するようになった。自動集計なので抜け漏れやミスもなくなり、スタッフの労務環境が改善された事で離職率も減少した。

デジタルデータをマーケティングや人事評価にも活用

また、Excelの集計では拾いきれていなかった先生ごとの売上がPOSレジによって可視化され、データに基づいた公平な人事評価もできるようになったという。

  • 先生別の正確な売上がデータ化

さらに売上と顧客情報をデータ連携させた事で、顧客の来店頻度や月間売上・客単価などが見える化され、店舗ごとのロイヤルカスタマーを顕在化する事もできたという。

「この情報を元に個々に合わせたマーケティングを行い、売上アップや単価アップなどに繋げていきたい思います」と上口氏。実際、1カ月以上来店のない離反客リストを作成し毎月個別にアプローチすることで、リピート率が上がっているという。

  • 離反客リスト

「整骨院の1カ月の平均来店回数の5回です。ある意味かかりつけ医のような存在なので、いつ・どのような施術をしたのか、お客様情報をきちんと把握・蓄積していく事は大切です。それは以前の紙カルテでは限界があります。引き続き自社のデジタル化を推進していくのはもちろん、業界全体のデジタル化が進む事も望んでいるので、今後も良いモデルケースとなっていければと思っています」(上口氏)

著者:木戸啓太(きどけいた)

株式会社ユビレジ 代表取締役

1985年生まれ、石川県加賀市出身、慶應義塾大学大学院 理工学研究科 データサイエンス専攻 修了。大学院在学中に起業し、2010年8月タブレットPOSレジの「ユビレジ」をリリース。その後「ユビレジ ハンディ 」「ユビレジ 在庫管理」など“カンタンがいちばん”をコンセプトとしたサービスを拡充、2020年6月コロナ禍での非接触オーダーを可能にした「ユビレジ QRオーダー」の提供を開始した。