【人気エコノミストの提言】観光産業の苦境を救え

コロナ禍で最も甚大な打撃を受けているのが観光産業である。2021年1-3月期の財務省「法人企業統計」では、宿泊業の赤字が突出していた。売上高営業利益率では、飲食サービス業の比率の約5倍(▲48・0%)だった。全国各地には観光を主軸にする地域や都市が無数にある。すでに、コロナ禍での旅行自粛の傾向は1年以上に及ぶ。インバウンドの流入が停止している期間も同じくらいになる。

 ごく短い期間だけGoToキャンペーンによる需要回復期はあったが、全国的な観光支援が2020年末に止まって以来、長い冬の時代に突入している。旅館・ホテルでは、感染が落ち着くと予約が入ってくることはあるが、感染が急拡大するとせっかく入った予約の大半がキャンセルされると嘆きの声を聞く。本質的に感染が収束しなければ需要は回復していかない。

 さて、感染収束の目途であるが、正直に言って、21年内は難しそうだ。65歳以上の高齢者に限っても、7月末という菅首相の強調する期限を守るのは難しい。8~9月中までずれ込む公算は高い。

 すると、たとえ1日のワクチン接種回数が100万回を達成できたとしても、16~64歳の接種は4カ月半かかるから、22年春くらいに国民全体への接種が完了することになる。ここには、ワクチン接種は不安だから自分は打ちたくないという人がかなり多く隠れていて、集団免疫を遅らせる可能性もひそんでいる。副反応やワクチン効果を信じない人に対する丁寧な説明がなくては、接種率はいずれ進みにくくなるだろう。

 感染収束の目途が、さらに1年先の22年春以降になるとすれば、観光産業は持ちこたえられるのであろうか。それはなかなかに厳しい。

 だから、ワクチン接種を済ませた人に限って、グループをつくって旅行を楽しめる仕組みをつくってはどうか。接種済みの記録をデータで保存しておいて、ツアーを組むときに提示する。ワクチン・パスポートというアイデアである。

 これは旅行に限らず、夜間の飲食店利用にも使えるようにする。ワクチンを打った人同士のグループであれば、集団での飲食やカラオケの利用もできる。例えば、7月末までに高齢者3600万人の接種が終わると、その人数だけ観光などを楽しむことができるという訳だ。

 この仕組みをどのように具体化するかは、まだ見えていない。米国のニューヨーク市では、2000万人の市民がブロックチェーン技術を使ったワクチン・パスポートをすでに利用しているという。イスラエルでもすでにある。そうしたものを即時輸入して日本版をつくるか、紙を利用した簡便なものを日本独自でつくるか、という方法が悩ましい。こうした工夫を急ぐことで、破綻の危機に瀕した観光産業を救うことができる。インバウンド再開の下準備にもなるだろう。

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