〝サービス版のアマゾン〟を目指すココナラのマッチングビジネス

誰もが持っている知識や特技。ここに焦点を当て、個人のスキルをオンライン上で売買できるビジネスを展開している企業がある。3月19日、東証マザーズに上場した「ココナラ」だ。コロナ禍でも出品者・購入者の登録数は右肩上がり。著名なデザイナーが参入したり、一方で自分の趣味で収入を得る人がいるなど、個人の潜在能力の最大化を進めている。社長CEOの鈴木歩氏が〝サービス版のアマゾン〟を目指すと語る世界観とは。

個人の知識や経験をオンライン上で売買

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 デザインや動画制作、翻訳、プログラミングから始まり、メイクの相談、ゲームのアドバイス、電話占い、楽器レッスン、恋の悩み相談……。40万を超えるサービスがサイトの画面にはズラリと並ぶ。サービスの購入者は出品者が掲げる内容や価格、販売実績、評価などを比較して選び、クリックすると見積もり依頼やサービスの購入ができる。

 同サイトは「ココナラ」と呼ばれるプラットフォームだ。出品者は個人で20~40代が中心だが、中には子供や主婦、70代のシニアもいる。出品者は自らの知識や技能を活用したサービスを出品し、オンライン上で購入者とマッチングして取引から納品までやりとりする仕組み。いわばスキルのシェアリングだ。

 サービスの中には、「5歳の子供によるイラスト作成」(保護者の合意の下)をはじめ、「自作曲の仮歌を歌う」「愚痴聞き」や「キャリア相談にのる」といったプライベート色の強いサービスがあったり、「持続化補助金の申請の仕方を指南」「ビジネス文書の作成」といったビジネス関連のサービスもある。

「これまでは個人が会社組織に所属して働くことが当たり前だったが、副業解禁の流れもあり、個人が小さくスキルを売り始め、実績を積み上げた結果、自信もスキルも顧客も得て、本業として生計を立てられるようになる人も増えている」とココナラ社長CEOの鈴木歩氏は語る。

 ココナラが創業したのは2012年。サービスの開始時はワンコインの500円でスキルを売買するプラットフォームとしてスタートした。「当初は取引サービスの約7割が占いや似顔絵サービスだったので、ライトな要素の強いサイトだと思われていた」(同)。だが今ではカテゴリーも200を超えており、価格帯も500円から100万円まである。

 その後、出品側と購入側の両方を含む会員登録数は徐々に増え、17年に60万人だったのが、19年には133万人と倍増。コロナ禍の今年3月19日に東証マザーズに上場したが、このコロナ禍が同社にとって追い風になっている。鈴木氏は「昨年の1回目の緊急事態宣言が出された4月から、まずは出品する登録者が増え、5月以降になると購入する方が増えた」と話す。

 出品者が増加した背景には、収入が不安定になることを危惧した人が第2の収入源として出品したり、副業解禁や在宅勤務の広がりを受け、「隙き間時間に自分のスキルを試したい人や収入を得たい人」(同)などが登録。他にも、結婚・出産で会社勤めをやめていた元デザイナーの主婦がデザインの仕事で復帰するといったケースもある。


個人のスキルを売買するプラットフォーム「ココナラ」

 一方で購入者は非対面・非接触が求められる中で、オンラインでの取引で完結できることにメリットを感じて増加。見積もりでの細かな事前相談や電話、ビデオチャット、テキストチャットなど多岐にわたるコミュニケーションが可能になっている。

 緊急事態宣言の発出が繰り返されている21年8月期第1四半期でも、前期に比べてサービスの流通高や営業収益は6割近く伸びており、「この勢いは今も継続している」と鈴木氏は語る。実はココナラには120人ほどの従業員がいるが、買い手と売り手がダイレクトにマッチング・取引するため、「営業担当者はいない」(同)。

 特に売買が盛んになっているのが「制作・ビジネス」の分野だ。例えば、データ入力やパワーポイントのスライド作成といったサポート業務のほか、ロゴのデザインや広告用の動画、Webサイト制作といった高単価なサービスでも利用が増えている。

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価格の決定権は出品者

 スキルのシェアリングというと、ギグワーカーに代表される安価な労働力を企業が活用するという課題が指摘されるが、ココナラでの値付けはスキルを提供する側が自分で設定する。

「価格決定権が出品者にあるため、安売りする必要もなく、高い価格が敬遠されれば、値段を自ら下げるしかない。我々に価格の決定権はない」(同)

 そんなココナラが見据える姿は「何か困ったら、まずはココナラに来て検索してもらえるような世界観をつくりたい。目指すのは〝サービス版のアマゾン〟だ」と鈴木氏は強調する。そのためにも、同社が抱える課題に対して手を打っていく考えだ。

 例えば、カテゴリーの拡張。ココナラではプライベートからビジネス、生活、相談に至るまで様々なカテゴリーのサービスを持っているが、法律相談などの専門性の高い領域もある。そこで専門的な独自のプラットフォームの構築も視野に入れる。

 他にも「マッチングの精度を磨き上げていく」(同)ことが挙げられる。前述の通り、営業担当者がいないからこそ「サービスを磨き続けて、使い勝手を良くしなければ、ユーザーは使い続けない」からだ。このシステムの改善が何よりも不可欠だと鈴木氏は緊張感を示す。

 そんなココナラのサービスの特徴は「何でも揃う場」(同)であること。20年9月から代表取締役社長CEOに就任した鈴木氏はリクルートで商品企画、営業、事業開発、海外経営企画などを担当し、16年にココナラに入社した。「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくるというビジョンに感銘を受けた」と鈴木氏。

 コロナ禍を契機に新たな働き方・生き方が模索される中、ココナラが新たな選択肢を示すことができるかどうか。今後のサービスの磨き上げにかかっている。

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