【コロナ危機下の不動産経営】賃借人の中途解約と保証金の返還

(Q社長)都心に所有するビルのワンフロアを、A社にオフィス用途、期間5年で賃貸し、保証金は賃料12カ月分の預託を受ける予定だが、気を付けた方がよい点あれば教えてくれませんか。とくに「テレワークの普及で賃借フロアが過大になった」などと中途解約されたような場合を念頭にですが。

(L弁護士)賃貸借の中途解約の後始末が昨今問題になっていますね。保証金といっても多目的で賃貸人への貸付けや敷金のような担保の意味もありますが、保証金の一定額を償却つまり返還しない特約もあります。

(Q社長)そう、その償却の特約だが、期間満了のときは賃料6カ月分を償却する特約を予定しているんだけど。

(L弁護士)中途解約の場合の保証金の償却は定めないんですか?

(Q社長)中途解約の場合を定めなかった場合、期間満了の場合と同様にはならない?

(L弁護士)中途解約の場合の保証金の償却を期間満了の場合と同様に考えられるかですが、いくつかの有力な判例では、期間満了の場合の保証金の償却部分は、賃貸建物の損耗の補償などを目的とするとして、中途解約の場合は、約定の期間のうちの賃借利用した期間の割合に応じて保証金の償却部分を按分して算定すべきだ、との見解を示しています。

 貴社のケースでいくと、賃料6カ月分を丸々償却することは認められず、約定期間のうち中途解約まで賃借使用した期間の割合に応じ、賃料6カ月分を按分した部分のみを償却できることになります。

(Q社長)そうすると、賃貸して間もなく中途解約されてしまうと幾らの期間もないから、償却できる部分も少額になるよね。賃貸人としては、残存期間の賃料確保も狂うし新たな賃貸のコストも生じ、損失の補填に困るよね。

(L弁護士)そうです。ですから、中途解約の場合の保証金の償却も特約で明確にしておくべきです。残存期間の賃料収入の確保や新たな賃貸のコストなどを考えて、中途解約の場合は保証金を全額償却(全額没収)と定める特約もありえます。

 この点は、賃貸人の損失に比して過大な額の負担となるような特約なら暴利行為で無効とされる恐れがありますが、賃貸人の損失の補填として合理性があり、賃借人の自由意思で合意したと認められれば、そうした特約も有効とした判例(浦和地裁昭和59年1月31日判決)もあります。

【コロナ危機下の不動産経営】賃借人からの中途解約に対する違約金請求 その2