中小企業に最適な人事評価制度とは?|導入時のポイントや制度の作り方も解説

人事評価システム

人事評価制度の整備は、中小企業が抱える人材不足を解決する重要な施策の1つです。いくら採用活動を強化しても、離職率が高いと優秀な人材を確保しにくくなります。

本稿では、中小企業が人事評価制度を整備・運用するためのポイントや、中小企業に適した制度の作り方について解説します。最後に中小企業向けの人事評価システムも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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中小企業の人事評価制度の実態とは

中小企業は、人事評価制度をどの程度導入しているかなど、導入・運用の実態について再確認しましょう。

1 評価制度の導入率が低い

厚生労働省が毎年実施している「令和元年度能力開発基本調査」によると、職業能力評価を実施している事業所は、企業規模30~49人の場合43.8%、50~99人の場合は46.6%です。

企業規模1,000人以上の事業所は68.8%に達しており、その差は20%を超えます。企業規模が小さくなるほど評価制度の導入率は下がっており、中小企業には評価制度がなかなか浸透していないことがうかがえる数字です。

2 制度を導入していても運用できていない

人事評価制度は、導入して終わりではなく、運用を継続していかなければ意味がありません。人事評価を行うには、評価者側に一定のスキルが必要です。評価者への教育ができていないと、実際に運用してもうまく活用できず形骸化するケースもあります。

評価者の評価に一貫性がなかったり、評価結果を活かす仕組みがなかったりすると、従業員側も不満を抱きやすくなります。評価基準への不満、プロセスの評価がない、ダメ出しのみでフィードバックがないなどは不満の例です。最終的に、従業員は人事評価制度そのものに背を向け、非協力的になる可能性が高まります。

3 適材適所の人材配置をするための手段がない

人事評価制度によって従業員の評価を実施しても、評価の結果を人材育成や適切な人材配置に反映する手段がないと、評価結果を活かせません。人事評価制度の制度設計の段階で、人事制度への活かし方を具体的に決めて実行する仕組みを構築し評価結果を活かすような業務フローを作成する必要があります。

4 結果として若手の離職率が高い

人事評価制度が運用されていない企業は、従業員に対して納得性のある人事評価を示せません。そのため、従業員は仕事に対するモチベーションが低下します。特に若手の場合、自分の成長が実感できない環境やなかなか上がらない評価や給料に不満を覚え、離職率が高まります。

このように人事評価制度の運用は、本格的に取り組まなければ運用が継続できないという難しさがあります。問題があっても、人事評価制度を中小企業が運用しなければならない理由には何があるでしょうか。

中小企業にこそ人事評価制度が必要な4つの理由

人事評価制度の導入・運用が中小企業にこそ必要な理由を4点にまとめて解説します。

1 従業員のモチベーション向上による生産性向上が期待できる

人事評価制度を運用する過程で、人事評価の評価基準を明確に示すことで、評価の納得性を高め、従業員のモチベーション向上が期待できます。

目標管理制度も組み合わせて、従業員の能力に合わせた目標を立て、定期的に進捗状況の確認とフィードバックを継続すれば、さらに効果的です。

従業員のモチベーションが向上すると、仕事内容も品質が高くなり、生産性の向上まで期待できます。

2 離職率を低く抑えることで採用コスト低減も可能

従業員のモチベーションが高くなると、離職率も低く抑えることが可能です。評価者(基本は直属の上司)からの適切なフィードバックは「仕事を見てもらえている」という実感を醸成し、若手従業員の定着率を高められます。

離職した従業員の穴を埋めるための採用活動には、一定のコストが必要です。離職率が下がると、採用コストも低く抑えられ、その分自社に不足しているスキルを持つ人材を新たに採用し、人員の強化もできます。

3 大企業に比べて従業員1人の問題が会社に大きく影響する

中小企業は大企業に比べて従業員1人の働きが事業に影響を与える割合が大きくなります。

例えば、10人の企業で1人の生産性が下がると、単純に考えて業務の10%に支障が出る計算です。1,000人の企業なら、1人の生産性が下がっても0.1%しか影響がなく、その差は歴然としています。

逆に、人事評価制度で適切な評価を与え、適材適所に配置することで、従業員のモチベーションが向上した場合を考えてみましょう。受ける恩恵は、中小企業の方が大きく、業績向上に直結します。

4 コミュニケーションによる組織活性化が期待できる

業務が忙しいと、部下との会話は仕事だけになりがちです。そのような状況下でも、人事評価制度の運用を進めることで、従業員と上司のコミュニケーションは密になり、風通しがよくなります。

例えば月1回など定期的に部下と簡単な面談を行い、現状の業務に対してフィードバックをするだけでも十分に組織の活性化が期待できます。

人事評価制度を継続的に運用することで、中小企業が抱えている人材不足の問題を解決し、組織の活性化や生産性向上にも期待できます。

「でも、うちの従業員数は5人でお互い顔を見ながら仕事をしているから人事評価制度は不要」というケースもあるでしょう。そこで、中小企業が人事評価制度を導入するかどうかの判断基準についても確認しましょう。

人事評価制度を中小企業が導入するかどうかの判断基準

中小企業が人事評価制度を導入するかどうかを検討する場合、以下4点の判断基準を確認してください。当てはまるものが多い場合は、人事評価制度の導入を進めましょう。

1 従業員が50名以上

一般的な基準として、従業員数が50名以上の企業は、人事評価制度を導入する方向でご検討ください。人事評価を行う上司の様子を確認して、部下の仕事について把握できているでしょうか。

従業員数が50名以上になると、従業員同士でも社員全員の顔を覚えきれなくなり、上司も部下の仕事振りに目が行き届かなくなりがちです。

2 働き方改革を進める必要がある

テレワークの導入や、残業を減らして生産性を高めるなど、働き方改革を進める場合は、人事評価を根本から見直す必要があります。従来のように、残業時間が多いほど会社に貢献しているという評価方法では、いつまで経っても残業時間は削減できません。

従業員全員が会社の経営方針に沿った目標を立て、達成度によって評価される仕組みが必要です。従業員の能力や仕事のプロセスを評価する仕組みなら、従業員も納得できてやる気が高まり、労働生産性も向上します。

3 若手を多く採用して離職率を下げたい

現在離職率が高い状態を改善して若手を多く採用したいのなら、人事評価制度を導入し、仕事をきちんと評価するように改革する方向で検討しましょう。人事評価制度の導入することで、従業員のモチベーション向上による離職率低下が期待できます。

また、人事評価制度を継続していくと、全従業員のスキルレベルを把握でき、今後補完するべきスキルを持つ人材の特徴も見えてくるでしょう。若手を採用する際、自社にとって効果的な人材を探せるようになるという点でも、人事評価制度は役立ちます。

4 従業員のモチベーションが低く組織を活性化したい

従業員にあまりやる気が見られず、組織内のコミュニケーションが不足している状態を改善したい場合は、人事評価制度の導入を検討しましょう。上司と部下が定期的に面談を行い、部下の仕事と目標達成をアシストするため具体的なフィードバックを行うことで、組織内の風通しがよくなります。

以上の判断基準より、自社にも人事評価制度が必要かどうか検討してください。次に、人事評価制度の導入を成功に導くためのポイントを紹介します。

中小企業が人事評価制度を導入する際のポイント9つ

中小企業が人事評価制度を導入する際は、いくつか押さえておきたいポイントがあります。人事評価制度の導入・運用を軌道に乗せる重要なポイントですので、確実にクリアしましょう。

1 企業理念・事業計画と明確に結びついた人事評価とする

人事評価は、企業理念や事業計画と明確に結びついていることが重要です。会社の業績に貢献できる成果を出した従業員が正当に評価されることで、納得性の高い評価が可能になります。

企業理念や事業計画に直結した人事評価にするためには、従業員が毎期目標を立てる際、自分の属する部署の目標を達成するような目標にすることがポイントです。上司は部下の立てた目標が自部門の目標達成に貢献するかどうかを確認した上で承認します。

2 明確な基準が示され、公平性・透明性をもって運用されること

人事評価の基準は全従業員に明示します。立てた目標を〇%以上達成できたらこのレベルの評価を受けられる、と明確な数値で確認できることが重要です。評価者の主観だけで評価が決まっているのではないと理解できる仕組み作りを目指しましょう。

数値化した基準を示すことで、従業員は人事評価制度が公平性や透明性をもって運用されている、と納得できます。

3 評価内容を開示

評価内容の開示も重要です。人事評価にはどのような項目があり、自分の達成度はどのように評価されたか、従業員自身が確認できるようにしましょう。

評価内容を開示することで、従業員は評価が低い部分を知り、改善することができます。上司も、評価の低い部分をどうすれば改善できるかというフィードバックがしやすくなる点も重要です。自分の努力によって評価が改善でき、給与にも反映されることを実感できれば、従業員のモチベーションは向上します。

4 従業員へのフィードバックと次期の目標とも連動する仕組み作り

人事評価制度を運用する際は、従業員が立てた目標(予定)に対して、月1回程度の実績確認を行い、フィードバックを行うことも重要です。

立てた目標の状況を把握しないまま期末に達成度の評価を行うだけでは、目標未達の状況を挽回できません。予定に対して実績が思わしくない場合に、上司は部下に対してアドバイスを行い、目標達成をアシストします。

期末に人事評価を行う際は、当期の評価についてフィードバックを行うと同時に、時期の目標策定とも連動するよう仕組み作りを行いましょう。この仕組み作りは、従業員の継続的な育成にもつながります。

5 人事評価制度にコストをかけられない場合は自社で運用

人事評価制度を新しく導入する場合は、自社で進めるか専門のコンサルティングを受けるかの2パターンが考えられます。コンサルティングには年間で100万~200万円程度のコストが必要です。そこまで費用をかけられない場合は、自社での運用を検討しましょう。

6 人事制度の課題検討が自社で難しい場合はコンサルティングも活用

人事評価制度を新しく導入したいが現状抱えている問題を自社で解決することは難しいかもしれません。

例えば、経営層主導で策定した人事評価制度は、従業員の実態に沿っておらず反発を招く可能性もあります。専門のコンサルティングを受けると、経営層と従業員どちらの目線にも配慮した、公平な評価項目などを提案してもらえます。

7 人事評価制度のシステム化による効率化も検討を

人事評価制度の継続的な運用には、人事評価および目標管理の部分をシステム化して効率良く進められるようにすることも重要です。

人事評価制度をシステム化すると、経営目標・部門目標を明示して従業員に目標を決めてもらうことも簡単に実現できます。また、上司は部下の目標と実績をすぐに確認して、状況に応じたアドバイスをしやすくなります。人事評価の基準や評価結果の公開も、システム化すれば自動で行えて効率的です。

また、人事評価制度をシステム化する際、ソリューションサービスとして、自社の人事評価制度を整理するサービスを活用することもできます。

8 制度作りとともに評価者の研修によるレベルアップも検討

人事評価制度導入の成功・失敗を決める要因の1つは、評価者の評価スキルにあります。公正性のある人事評価を行うには、評価の仕方を学ばなければなりません。評価の仕方が分からないままだと、評価者は独自の判断でブレの大きな評価を下してしまいます。

人事評価制度を導入するなら、評価者の研修を運用の中に組み込み、評価作業のレベルアップを目指してください。

9 運用しやすく柔軟性のある制度作りを

人事評価制度は、運用ルールに則って運用されるのが原則です。ただし、中小企業のように組織が小さい場合は、時と場合によって柔軟性を持たせることも大切になります。

例えば、等級と賃金は賃金テーブルなどで定められています。中途採用時にそのままルールを当てはめると、魅力的な年収を提示できず、欲しい人材を逃すかもしれません。このような場合は、採用の可能性を高められるよう、例外的な年収の提示も可能な制度にしておきます。

中小企業が人事評価制度を導入する際のポイントについて解説しました。ここまでの説明を踏まえ、次に中小企業向けの人事評価制度の作り方について説明します。

中小企業に適した人事評価制度の作り方

これから人事評価制度を作る場合は、効果的な順番で進めることが重要です。そこで、中小企業に適した人事評価制度の作り方について解説します。

1 企業理念・事業計画から各部門の目標を明確にする仕組みを作る

評価基準を決めるには、まず人事評価制度の目的を明確にします。人事評価制度の目的の例としては、経営理念の浸透や人材育成、従業員のモチベーション向上などが挙げられます。

人事評価制度の目的を明確にしたら、従業員や各部門の目標は、その目的や経営目標を考慮して検討できるような仕組みを構築してください。人事評価シートに従業員が目標を記入する運用なら、評価シートに経営目標や部門目標が明示されている状態がいいでしょう。

経営目標や各部門の目標の目標を踏まえて各従業員が目標を策定することで、従業員が全社の生産性向上に直結する目標を持てるようになります。

2 評価基準を決める

その目標を達成するための評価基準を決めてください。人事評価項目は、成果・能力・服務態度の3種類があるので、全社で重視する項目と、部門別に重視する項目を決めていきます。

例えば、営業や製造など、成果を数字で示しやすい部門は評価項目を重視し、成果を数字では示しにくいバックオフィス系部門は、能力や服務態度の項目を充実させましょう。部門に合わせた評価項目を選ぶことで、部門別に納得性の高い評価基準が策定できます。

3 評価の手法を決める

人事評価にはさまざまな手法があります。誰が、どのような手法を用いて人事評価をするのかを決めましょう。

一般的によく見られる手法は、目標管理制度(MBO)です。MBOでは毎期、従業員が目標を立て、直属の上司が部下を評価します。他にも、1人の評価者に対して上司・同僚・部下が評価する360度評価や、挑戦的な目標を立てるOKRなどの手法があるため、自社に合う評価手法を選んでください。

4 評価に応じて報酬を決定する

人事評価と報酬をつなげる仕組みも重要です。評価の達成度に応じてどのような報酬を受けられるのかが自動的に決まるように、制度設計を行いましょう。評価を達成すると確実に報われる仕組みであることを従業員に明示することで、人事評価制度に対する従業員の信頼感は高まり、モチベーションも向上します。

ここまでで、中小企業に適した人事評価制度の作り方を説明しました。この作り方を踏まえて、実際に人事評価制度を構築する流れを紹介します。

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中小企業向けの人事評価制度を構築するまでの7ステップ

中小企業向けの人事評価制度を効率的に構築する流れを、7ステップに整理して解説します。

1 人事評価制度の目的と企業理念を明確にする

各部門の目標を明確にする仕組みを作る前準備として、人事評価制度の目的および企業理念を明確にしてください。人事評価制度の目的と企業理念は基本的に変わりませんが、念のため毎年見直します。

2 評価基準と評価項目を決める

人事評価制度の目的および企業理念をインプットとして、各部門における評価基準と評価項目を策定しましょう。部門や職種ごとの特性に合わせた評価基準・評価項目を策定することが、納得性の高い評価制度にする上で重要なポイントです。

また評価基準を決める際、現場の声も反映できると、評価基準や評価項目の納得性が高まります。

3 評価の手法を決める

評価者は誰で、どのような評価手法を利用するかを決定します。評価の手法が決まることで、人事評価シートや目標管理シートのフォーマットも決まります。評価の手法が決定したら、評価の基準などをマニュアル化し、人事評価を行う役職者向けの研修準備も進めましょう。

評価手法は、自社が従来採用している手法にするか、新しい手法にするかを検討してください。人事評価制度導入の目的を達成するにはどの手法が適切かがよく分からない場合は、ピンポイントで専門のコンサルタントに相談するのもいいでしょう。

4 評価に応じて報酬を決定する

評価基準と評価手法が決まったら、次に評価に応じた報酬を決定します。すでに職級に応じて賃金テーブルがあれば、その内容を元に、目標達成度の割合によってどのように昇給・昇格するかを決定しましょう。評価と対応した報酬の一覧は、従業員に公開することを前提に作成します。

5 具体的な運用ルールの決定

ここまで決めた後は、具体的な運用ルールを定めます。人事評価制度の管理部門はどこか、評価者はどのように決定するか、面談や目標作成・人事評価のスケジュールは最低限決めるべき事項です。

目標管理シートや人事評価シートの記入方法についてはマニュアル化します。人事評価システムを導入する場合は、システムの使い方についても説明資料が必要です。

6 従業員研修のスケジューリング

新しい人事評価制度を軌道に乗せるためには、従業員研修の継続的な実施が重要です。目標管理制度については全従業員へ研修を行い、人事評価については評価を行う従業員への継続的な研修を行います。

7 ルールに則った運用の開始

ここまで準備が完了すると、後は運用ルールに則って運用を開始します。特に導入1年目は、人事評価制度の管理部門への質問が集中することが予想されます。管理部門は人事部門が担当するケースが多く、他の人事業務への影響もあるため、何らかのサポートも検討してください。

例えば、導入後1年間のみ、コンサルティングや人事評価システムの運用支援サービスなどを活用するのも1つの方法です。管理部門の負荷を緩和することで、人事部門が本業に集中しながら人事評価制度の運用について学ぶこともでき、継続的な運用が可能となります。

ここまでで、中小企業向けの人事評価制度を構築する流れを確認しました。次に、中小企業の人事評価制度でも取り入れるかどうか検討したい評価手法をいくつかご紹介します。

中小企業の人事評価制度でも取り入れたい評価手法

人事評価の手法はさまざまな種類がありますが、中でも中小企業で取り入れやすい評価手法を7種類紹介します。

1 目標管理制度(MBO)

目標管理制度(MBO)とは、従業員個人や部門・全社などの単位で目標を定め、目標の達成度で人事評価をする評価手法のことです。英語では「Management By Objectives and self-control」と言います。MBOは会社規模を問わず多くの企業で導入されており、中小企業にも導入しやすい評価手法です。

目標は各自勝手に設定するのではなく、従業員(被評価者)と上司(評価者)が話し合って合意した目標を設定する仕組みです。双方の意識を合わせることで、組織として同じ方向の目標が設定できます。目標設定と評価の間隔は、1年ないし半年で設定するケースが多く見られます。

ただ、あまりにも間隔が空いてしまうとフィードバックできるタイミングも少なくなり、目標達成をアシストしにくくなる点は要注意です。もう少し短い間隔で従業員の状況を確認し、アドバイスを行う仕組み作り(人事評価システムの導入など)を行いましょう。

2 コンピテンシー評価制度

社内で特に高い業績を上げている従業員の行動特性を分析し、その行動特性を評価基準に取り入れる評価手法です。自社にロールモデルが存在するため、分かりやすい評価基準となり、従業員にも理解しやすい点が特徴です。

MBOと併用される場合が多く、その場合はMBOをボーナス査定に、コンピテンシー評価を昇給査定に利用する企業が多く見られます。

3 360度評価

360度評価は、1人の被評価者に対し、その人の上司・部下・同僚など複数の評価者が評価する手法です。複数の視点で評価されるため、より公平な評価が実現できます。

評価する人が増える分、評価制度全体のコストがかかる点はデメリットです。そのため全社で導入するのではなく、役職者だけなど、ピンポイントで利用するケースもあります。

また、従業員数が100名以下の小規模な企業の場合、誰が評価したのかが分かってしまう点もデメリットです。自社の従業員規模によっても、導入の可否を決めましょう。

4 OKR

OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、会社が達成するべき目標(OKR)より各部門や各従業員の目標を設定し、達成度で評価する手法です。

MBOと似た手法ですが、両者の大きな違いは目標の達成難易度にあります。MBOは現実的な達成目標を基準に、少し挑戦的な内容も含む目標を設定します。一方OKRは達成できる可能性が60~70%と、難易度の高い目標を設定し、個人や組織が成長することを主眼に置いている点が大きな違いです。

OKRはスタートアップ企業など、挑戦的な事業を展開している、比較的小規模な企業に向いている評価手法です。挑戦的な目標を設定しているため、達成度もその点を考慮します。またMBOよりも頻繁に部下とコミュニケーションを取り、仕事のプロセスを評価することが重要となります。

5 ノーレイティング

評価をランキング(A・B・Cなど)で行わず部下と継続的な面談を行い、上司が昇給や賞与を決める評価手法です。上司には部下に与える賞与や昇給の原資が与えられ、その範囲内で部下を評価します。

上司の裁量権が大きい制度である一方で、評価者である上司の責任がかなり重くなる点には注意が必要です。負荷の大きくなる上司に対しては、管理部門の方でサポートを行う体制作りも必要になります。

6 1on1

1on1ミーティングとも呼び、上司と部下で行う1対1のミーティングのことです。上司は、部下の業績・仕事上の悩み・課題などを聞き、前に進むための助言を行うことで、部下との信頼関係を醸成しつつ、部下の成長をサポートします。

1on1のミーティングを開催する頻度は決まっていませんが、一例として大手企業では週1回30分の頻度で1on1ミーティングを開催しています。

1on1は、部下のモチベーション向上や組織のコミュニケーション改善に大きな効果が期待できます。ただし、部下の主体性を引き出すという面では弱い点や、上司と部下の相性が悪い場合は逆効果という点はデメリットです。

7 ビジョン実現型人事評価制度

ビジョン実現型人事評価制度とは、経営理念を「ビジョン実現シート」にまとめ、その内容を元に人事評価を行う制度です。

ビジョン実現シートは、「理念・目標・人材育成目標」の3点を定義します。経営理念実行過程では、毎月アクションプラン会議を開催し、PDCA(Plan Do Check Action)サイクルを回してアクションプランのブラッシュアップを行います。

評価制度の運用では、個人の評価とアクションプランは別々にPDCAサイクルを回し、個人および組織の成長を促すことを力点に置いた評価手法と言えるでしょう。

中小企業におすすめの人事評価制度用評価項目と評価シート

中小企業におすすめの人事評価制度に活用できる評価項目と、評価シートのフォーマットについて紹介します。新規に人事評価制度を構築する場合や、従来の制度を改革する場合にお役立てください。

1 評価項目

人事評価の評価項目は3種類あります。下記の一覧表に、評価項目の種類別に、具体的な評価項目をまとめました。

種別 内容 評価項目例
成果関連
(業績評価)
業務の結果や成果に対する評価 営業成績や目標達成度など
能力関連
(能力評価)
仕事に関連する個人の能力に対する評価 資格や免許
定性的な能力(プレゼン力・企画力など)
服務態度関連
(情意評価)
仕事に対する取り組み姿勢に対する評価 仕事への熱意やリーダーシップ、責任感、協調性など

3種類の評価項目を満遍なく取り入れますが、部門や職種の特性によっては、服務態度関連の評価を増やすなどの調整は必要です。

2 評価シートのおすすめは厚生労働省のテンプレート

一から人事評価シートを作成しなければいけない場合、どのような形で作ればいいかは難しいかもしれません。そのような場合に参考となる資料は、厚生労働省が公開している職業能力評価シートのテンプレートとキャリアマップです。

公開されている職業能力評価シートは、事務系と各業種別に計17種別あり、種別ごとに、職種・職務レベルに分かれた評価シートが準備されています。職級・等級(レベル)別に評価項目と必要な知識、判断基準も明記されているため、自社と似た業種のシートをダウンロードして評価シート作成の参考にしてください。

以上で、人事評価制度に活用できる評価項目と、評価シートのフォーマットについて解説しました。最後に、中小企業が人事評価制度をスムーズに運用するのに役立つ、おすすめの人事評価システムを紹介します。

中小企業におすすめの人事評価システム5選

人事評価制度を運用するために、人事評価システムの導入を検討している中小企業に対しおすすめの5製品を紹介します。

10名から使えて評価手法に多く対応「評価ポイント」
株式会社シーグリーン

POINT
  • 参考価格:初期費用50,000円 月額10IDまで7,000円、以降10IDごとに7,000円 その他オプション・サポート費用・コンサルティングなどあり
  • 提供形態:クラウド / ASP / SaaS
  • 従業員規模:全ての規模に対応
  • 売上規模:全ての規模に対応
  • 対応機能:コンピテンシー評価・MBO(業績目標)評価・360度(多面)評価

シーグリーンは4種類の人事クラウドシステムを展開しています。「評価ポイント」はその中でもリアルタイム評価機能を提供する人事評価システムです。

社員の行動を可視化して、業務を推進するプロセスを確認できる機能や、社員同士でチームメンバーを評価し合う機能などを提供。貯まったポイントを評価指標としても活用できる点が特徴です。

他の人事クラウドシステムも、人事評価に活用できる以下のラインナップとなっています。

・パルスサーベイにより従業員のエンゲージメントを可視化する「Attuned」

・面談履歴管理に適した「1on1ミーティング」

・MBOやコンピテンシー対応の「ヒョーカクラウド」

必要なシステムを選び、組み合わせて使うことで、自社に必要な人事評価手法を自由に組み入れることもできます。10名から利用可能なので、中小企業でこれから人事評価制度を導入したいという場合におすすめの製品です。

カスタマイズ自在の柔軟性が魅力「カオナビ」
株式会社カオナビ

POINT
  • 参考価格:別途問い合わせ
  • 提供形態:クラウド / SaaS
  • 従業員規模:全ての規模に対応
  • 売上規模:全ての規模に対応
  • 対応機能:コンピテンシー評価・MBO(業績目標)評価・360度(多面)評価・

「カオナビ」は、従業員のタレントマネジメントを実現するクラウド型のシステムです。360度評価やOKRなどさまざまな人事評価手法に対応下テンプレートを標準で提供し、テンプレートのカスタマイズも可能です。自社独自の評価シートも作成できます。

評価結果は顔写真付きのグラフィカル表示でひと目見て分かるように表示。画面上で評価のバランスを確認しながら、評価の甘辛調整も可能です。

その他にも、スキル管理やポートフォリオからの戦略的な人材育成計画、人材配置や要員のシミュレーションなども提供。人材育成や適切な人材配置を支援する機能が豊富にあります。

本製品は、人材評価だけでなく、人材育成や人材配置も改善・効率化したいという場合に適しています。

人材の育成・評価と組織の開発・戦略をサポート「HRBrain」
株式会社HRBrain

POINT
  • 参考価格:69,800円(月額)~初期費用などは別途問い合わせ
  • 提供形態:クラウド
  • 従業員規模:全ての規模に対応
  • 売上規模:全ての規模に対応
  • 対応機能:コンピテンシー評価・MBO(業績目標)評価・360度(多面)評価

「HRBrain」は、使いやすい画面で面談記録や目標をクラウドで管理し、組織分析も容易に行える人事評価システムです。従業員数10人の中小企業から数万人レベルの大企業まで、導入実績は豊富にあります。

評価シートのテンプレートは、OKR・MBO・1on1など主要な評価手法のものを用意。評価手法の選択肢は豊富です。人事評価だけでなく、人材育成や人材配置、ポテンシャルの高い人材の発掘と分析などもサポート。人材関連業務を大幅に効率化します。

人材データを一元管理して、スキルの可視化も行えるため、欲しい人材が社内にどれだけいるかを確認しやすい点もおすすめポイントです。

評点分析や給与シミュレーション機能がユニーク「あしたのクラウドHR」
株式会社あしたのチーム

POINT
  • 参考価格:別途問い合わせ
  • 提供形態:クラウド / サービス
  • 従業員規模:全ての規模に対応
  • 売上規模:全ての規模に対応
  • 対応機能:コンピテンシー評価・MBO(業績目標)評価・360度(多面)評価・給与テーブル・

「あしたのクラウドHR」は、人事評価を給与へ反映する機能もあるクラウド型の人事システムです。評価手法は360度評価や1on1にも対応。人事評価の経年分析や甘辛分析も行えます。社員情報を顔写真付きで分かりやすく表示。目標設定や評価をスムーズに行える画面構成です。

また、人事評価制度の新規導入や大幅改革などの企業向けの、人事評価制度の構築支援や運用支援のサービスメニューもあります。新規に人事評価制度を導入したいが、自社だけで推進できるか不安という場合におすすめです。

人材管理業務全般をカバー「スキルナビ」
株式会社ワン・オー・ワン

POINT
  • 参考価格:別途問い合わせ
  • 提供形態:クラウド / オンプレミス
  • 従業員規模:全ての規模に対応
  • 売上規模:全ての規模に対応
  • 対応機能:360度(多面)評価

「スキルナビ」は、人材の採用計画や育成・評価など、人材評価だけでなく人材を活用する機能を網羅したクラウド型の人事評価システムです。経営・人事・マネージャー・従業員の役割別に管理機能が用意されていて、人事関連業務全般の効率化を実現しています。

360度評価やBSCベースの評価など、最新の評価手法にも対応しているため、自社に適した評価手法を自由に選べます。人事評価や目標管理などは全てオンラインで完結するので、資料のやり取りなどの手間もかかりません。

人事評価制度の導入で中小企業の経営を大きく改善しよう

人事評価制度は、中小企業が導入することでも大きなメリットを得られます。継続的に運用することで、従業員の離職率が低下し、新規人材の採用にもいい影響が得られることが期待できます。

ただし、導入と運用にはそれなりの準備が必要となり、安定運用を続けるには、人事評価システムやコンサルティングを活用することも必要です。効率的な人事評価を目指すなら、ぜひ人事評価システムを比較検討してみてください。

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