市場調査会社のTrendForceによると、契約市場とスポット市場でのグラフィックスDRAM製品の価格にかなりの不一致が見られるという。深刻な供給不足の状況が続く中、グラフィックスDRAM製品の大口契約市場での見積価格は上昇し続けているほか、一部の中小規模の顧客への供給は注文の約30%で推移しているという。この供給不足の状況は2021年第3四半期まで続くと予想され、その間、グラフィックスDRAMの契約価格は前四半期比で8〜13%上昇するとTrendForceは予想している。

一方、スポット市場については、2021年初頭から5月にかけて仮想通貨の価値が上昇し続け、新旧を問わずグラフィックカードの需要が高まり、グラフィックDRAM製品のスポット価格も契約価格よりも最大200%も高まった。暗号通貨が以前の強気の状態に戻るまでは、マイナー(マイニングの実行者)からのグラフィックカードの需要は比較的抑えられると予想され、その結果、グラフィックDRAM製品のスポット価格と契約価格のギャップは2021年第3四半期に縮小する可能性があるとTrendForceは見ている。

TrendForceは、契約市場でグラフィックスDRAMの価格を押し上げ続ける4つの重要な要因を次のように上げている。

  1. PC市場、特にゲーム製品の需要は依然として高いままである
  2. ほとんどのクライアントに割り当てられるDRAMサプライヤの生産能力は、NVIDIAがGPUにグラフィックスDRAMを多数搭載することにより制約されている。つまり、DRAMサプライヤは、小規模なクライアントではなくNVIDIAへの生産能力割り当てを優先している
  3. MicrosoftのXbox Series XとソニーのPS5の両方にGDDR6 8Gビットチップとは異なるGDDR6 16Gビットチップが搭載されている。2つのチップは互換性がないため、DRAMサプライヤが一方の生産能力を確約すると、同じバッチのウェハを使用してもう一方のチップを生産できなくなる
  4. 主流製品であるサーバDRAMの注文が復活したため、DRAMサプライヤ各社は依然としてこれらの製品の生産を優先している。さまざまな製品がそれぞれ限られたDRAM生産能力をめぐって競合するため、グラフィックスDRAMの契約価格は今後上昇すると予想される。特に、中小規模のOEM/ODMは、2桁%の価格上昇に直面する可能性がある。

暗号通貨の価値の急激な低下でグラフィックスDRAMのスポット価格も下落

スポット市場に関しては、GDDR6製品のスポット価格は5月以降わずかに下落しているが、それでも平均契約価格よりもほぼ100%高くなっている。逆に、GDDR5製品のスポット価格と契約価格にほとんど違いはない。グラフィックDRAM製品のスポット価格が下落した理由を見ると、スポット価格と契約価格の差が大きすぎることを除けば、暗号通貨の価値の急激な低下が最も重要な要因である。最近の暗号通貨の弱気な動きは、マイナーへのインセンティブの急激な低下をもたららした。したがって、GDDR5の価格は大幅に下落した。

ただし、新しいグラフィックカードに関しては、ゲーマーによる購入のおかげで、ベースラインレベルの需要がある。さらに、これらの新しいグラフィックカードは、新世代のゲームコンソールと同様に、GDDR6 DRAMを搭載している。したがって、GDDR6製品に対する現在の需要により、スポット市場での価格低下はGDDR5製品に比べて低くなっているという。