メルク・アンド・カンパニー(MSD)は6月9日(米国時間)、同社がRidgeback Biotherapeuticsと共同で進めている軽度から中等度の新型コロナウイルス感染症向け経口投与が可能なリボヌクレオシドアナログ治験薬「Molnupiravir(EIDD-2801/MK-4482)」の調達契約を米国政府と締結したことを発表した。

新型コロナウイルス感染症を引き起こすSARS-CoV-2を含むさまざまなRNAウイルスの複製を阻害する薬剤で、新型コロナウイルス感染症の確定診断を受け、重症化リスク因子を1つ以上有する外来患者の治療薬として、現在第3相試験MOVe-OUT(Part2)が実施されているという。

今回の契約において、米国食品医薬品局(FDA)による緊急使用許可(EUA:Emergency Use Authorization)または承認が得られた場合、同社では約170万回分のmolnupiravirを米国政府に供給する予定だという。これに対する支払いは約12億ドルが予定されているとするほか、同社ではmolnupiravirの開発や生産体制の増強を進め、2021年末までに1000万回分以上の供給体制を確立することを目指すとしている。

また、米国外でも緊急使用許可や承認の申請を提出していく計画で、現在、molnupiravirの調達に関する事前合意について各国と協議しているという。さらに、molnupiravirを世界中で速やかに提供していきたいとの考えを示しており、世界銀行のデータに基づき、新型コロナウイルス感染症の公衆衛生対策における各国の相対的な経済力に応じて段階的な価格設定を採用する計画とするほか、この医薬品アクセス戦略の一環として、低・中所得国104カ国において、各国の規制当局による承認または緊急使用許可を取得後、molnupiravirを速やかに提供できるよう、実績のあるジェネリックメーカー数社とmolnupiravirの非独占的で社会貢献的なライセンス契約を締結済みだという。