「お力になれず申し訳ありません」「お力になれず残念です」などのフレーズは、相手からの要望などを断る場合に多く見られる表現です。なんとなくニュアンスとしては知っていても、いざ仕事で断りのメールを作成する際は、どう表現すればいいか困る人も少なくありません。

本記事は、「お力になれず」の基本的な意味と、ビジネスメールで断りの表現として利用する場合の使い方について解説します。類語や英語表現も例文とともにまとめているので、ぜひ参考にしてください。

  • 「お力になれず」とは

    「お力になれず」の意味や使い方について解説します

「お力になれず」の意味とは

「お力になれず」とは、相手の要望や依頼に応えられない、という意味を持つ表現です。自分には相手の要望や依頼に応えるだけの能力や余裕がないというニュアンスも含み、相手の要望や依頼をお断りする際に用いられます。

「お力になれず」はそのままで敬語表現になる

「お力になれず」は、接頭辞の「お」がつくことで敬語表現となるため、ビジネスシーンでもそのまま利用できる表現です。自分の能力不足で応えたいが応えられないという気持ちを伝えることで、やんわりと断る意思を伝えやすい表現でもあります。

「お力になれず申し訳ありません」と使うのが基本

「お力になれず」は、基本的に「お力になれず申し訳ありません」「お力になれず残念です」など、定型句の一部として使います。また、これらのフレーズの後には、セットで「今後とも何卒よろしくお願い致します」と付け加え、相手との今後の関係に配慮した文言を付けるケースも多く見られます。

  • 「お力になれず」とは

    「お力になれず」は相手に断りの意思を婉曲的に伝えるのに便利

「お力になれず」のビジネスでの使い方

ビジネスメールで「お力になれず」を使う一般的なケースは、要望や依頼のメールに対する断りの返信と、提案の不採用通知の2パターンです。また、クッション言葉やフォローの言葉も、「お力になれず」とセットでよく使います。

要望や依頼のメールに対する断りの返信

基本の使い方でも紹介しましたが、要望や依頼のメールに対する断りの返信で「お力になれず」は多く使われます。例文は以下の通りです。

P案件の協力依頼として5名のアサインを頂きましたが、当Gも人員に余裕がなく2人の参画となります。

ご要望にすべてお応えすることは難しく、お力になれず申し訳ございません。

要望や依頼になぜ応えられないかの理由を先に説明することで、相手もこちらの事情を理解し、断りを受け入れやすくなります。

提案の不採用通知

取引先などの提案に対し、不採用を通知する際にも「お力になれず申し訳ありません」は多用されます。

商品企画や見積書など、相手の提案には労力がかかっているもの。その労力に対してはしっかりと感謝の意を示しつつも、不採用であることを明確に伝える場合に「お力になれず」を使用します。提案の不採用通知の例文は以下の通りです。

社内で検討の結果、予算の都合により貴社のご条件では難しいという結論に達しました。
ご尽力頂いたのにかかわらず、今回はお力になれず申し訳ございません。
今後、またの機会がございましたらお声がけ致しますので、その際は何卒よろしくお願い申し上げます。

不採用通知の場合も、不採用に至った理由を可能か限り記載することも受け取った相手の納得感を得られやすくなります。

クッション言葉もセットで使う

「お力になれず」を使用する際は、その直前や直後にクッション言葉を入れることで、柔らかい表現となります。クッション言葉を使った短文例は以下の通りです。

  • 不本意ながら、お力になれず申し訳ありません。
  • 恐縮ですが、お力になれず申し訳ありません。
  • お力になれず残念です。

クッション言葉を多用しすぎると読みづらくなるため、読みやすさも意識しながら効果的なポイントでクッション言葉を利用しましょう。

フォローの表現を直後に入れる

「お力になれず申し訳ありません」と断りの表現を使った直後は、何らかの形でフォローの表現や感謝の表現を入れるのも多く見られる使い方です。

「今後とも何卒よろしくお願い致します」「またの機会がありましたら何卒よろしくお願い致します」などはフォローの表現となります。「ご丁寧な提案を頂き感謝しております」のような感謝の表現もおすすめです。

  • ビジネスメールでの「お力になれず」の使い方

    「お力になれず」はビジネスメールでも頻出するので基本の使い方を確認しよう

「お力になれず」のビジネスメールでの例文

ここからは「お力になれず」を使ったビジネスメールの例文をシーン別に紹介します。相手から「お力になれず」のお断りメールを受け取った後の返信例文も記載するので、ぜひ参考にしてください。

時間的な都合がつかず要望を断る

件名:Re:【6/10】A案件キックオフミーティング設営支援の依頼

社会・公共事業部 社会1部 奈良岡部長
お疲れ様です。
経営企画部企画2部の冨岡です。

Aプロジェクトキックオフミーティング設営支援の件、ご連絡頂きありがとうございます。
あいにく当日は中国出張中で参加できそうにありません。
本来なら設営などお手伝いも必要なところ、お力になれず申し訳ありません。
私の代理で後藤を支援に出しますので、ご容赦くださいませ。

Aプロジェクト開始後は何かとお世話になりますので、今後とも引き続きよろしくお願い申し上げます。

支援依頼のメールを受けたが断る

件名:Re:Aプロジェクトの開発・テスト工程支援依頼(10名希望)

流通第1部 原田部長
お疲れ様です。
基板設計部 設計1G 坂元です。

Aプロジェクトの開発・テスト工程支援依頼の件ですが、当方も現在B社の障害対応に多くの人員を投入しているため支援が難しい状況です。
ご要望にお応えしたいのですが、お力になれず申し訳ありません。

障害対応に目途がつく1週間後には、5名ほど追加支援が可能になる見込みです。
1週間後に再度連絡を差し上げますので、今しばらくお待ちください。

それでは、引き続きよろしくお願い申し上げます。

提案の不採用通知

件名:Re:Aシステム案件のお見積提出

株式会社ABC 営業1部 友広部長
いつも大変お世話になっております。
株式会社ユーカリ 事業企画部 伴です。

Aシステム案件の見積書提出を頂きありがとうございます。
非常に分かりやすくまとめられており、費用の根拠も明解でとても理解しやすかったです。

弊社で検討の結果、予算的に折り合わないため、今回は見送らせて頂く結果となりました。
当方としては御社を推したのですが、お力になれず申し訳ありません。

また別案件がいくつか立ち上がる予定があり、その際はお声がけする予定ですので、その節はぜひ再度ご応募をご検討くださいませ。
それでは、引き続きよろしくお願い申し上げます。

「お力になれず」というメールを受け取ったときの返信

件名:【お礼】Re:Re:Aシステム案件のお見積提出

株式会社ユーカリ 事業企画部 伴部長

いつも大変お世話になっております。
株式会社ABC 営業1部 友広です。

Aシステム案件の件、ご検討を頂きありがとうございました。
伴部長におかれましては当社を推して頂き、感謝の念に堪えません。

また別案件の予定があるとのこと、ご連絡もありがとうございます。
次回は採用頂けますよう尽力致しますので、その節は何卒よろしくお願い申し上げます。

  • 「お力になれず」を使ったビジネスメールの例文

    例文を見て「お力になれず」の使い方を理解しよう

「お力になれず」の類語・言い換え表現

「お力になれず」には、類義語・言い換え可能な表現があります。例文とともに紹介しますので、利用シーンに応じて使い分けましょう。

お役に立てず

「お役に立てず」は「お力になれず」とほぼ同じ意味を持ち、そのまま言い換えられる表現です。

【例文】

  • 営業時間外の対応はできかねます。お役に立てず申し訳ありません。

ご要望に沿えず

「ご要望に沿えず」は、「要望には応えられない」の敬語表現です。

【例文】

  • 弊社ではそのようなカスタマイズに対応しておりません。ご要望に沿えず申し訳ありません。

ご期待に沿えず

「ご期待に沿えず」も「お力になれず」の類語表現です。相手からの要求内容によって「ご要望に沿えず」と使い分けます。

【例文】

  • ご期待に沿えず恐縮ですが、今回の商品購入は見送らせて頂きます。

不本意ながら

「不本意ながら」は、「自分の本当の意思ではないが」という意味を含んだ表現です。

【例文】

  • 社内のコンセンサスを得られず、不本意ながら今回の商品購入は見送らせて頂きます。
  • 「お力になれず」の類語・言い換え表現と例文

    「お力になれず」の類語表現

「お力になれず」の英語表現

「お力になれず申し訳ありません」を英語で表現する場合は、「お役に立てず申し訳ありません」という意味の「I'm sorry I can't be of more help.」と翻訳するとスムーズです。

  • I am sorry that I am unable to help you with your request.
     (せっかくご要望を頂きましたが、お力になれず申し訳ございません。)

「お力になれず」を使って断りの連絡をスムーズに進めよう

「お力になれず」は、相手の要望や依頼に対して断る際に使われる表現です。断る原因を自分の力が不足していると表現することで、相手への配慮を示しながら、自分の率直な思いを同時に伝えられます。

顧客や取引先などの依頼を断るのは勇気がいりますが、何も言わないでいると状況はかえって悪化します。要望や依頼を受けられない場合は、「お力になれず」という表現を上手に使って断るようにしましょう。