"おこもり美容"がトレンドワードになるなど、コロナ禍で需要が大きく伸びた家庭用のエステ商品。なかでも人気の商品がフェイスケア商品だという。

今回はパナソニックの美容家電ブランド「Panasonic Beauty」で、スチーマー ナノケアの商品企画を担当した光安優花氏に、ニーズを的確に捉えたヒット商品を生み出すための取り組みをうかがった。

  • 商品企画を担当した光安優花氏

暑い季節も使いやすいスチーマー

ホームドライヤー1号機から数えて、約84年の歴史を持つというパナソニックの美容家電。2010年に誕生した本格美容ブランド「Panasonic Beauty」で、光安氏は商品企画やマーケティングプランの立案・推進などに携わり、2019年からフェイスケア商品を担当している。

「これまでフェイスケア商品のお客様は、30~40代の女性が一番多かったんですが、近年は年齢や性別を問わず、ターゲットが幅広くなってきている印象です。『目もとエステ』の男女比率は半々くらい。美容感度の高い若者も増え、美容にかける金額が上がっているといったデータもあり、年齢の幅も広がってきています」

SNSで美容情報に触れる機会が増えたことが背景にはあるようだが、コロナ禍による消費の変化も反映し、同社の「スチーマー ナノケア」シリーズの販売台数は2020年4~5月で前年比207%を達成したと言う。

  • 「Panasonic Beauty」の商品の数々

昨年11月に発売された「スチーマー ナノケアEH-SA0B」では、季節を問わず心地よく使えるスチーマーというコンセプトのもと、6年ぶりにフルモデルチェンジ。

「スチーマー ナノケア」シリーズは2004年の発売以降、特に冬の肌の乾燥対策として好評を得てきたが、その商品開発にあたって光安氏は綿密な市場調査を行い、ユーザーのニーズを探ってきたと話す。

「自社で会員の方への調査や調査会社の協力でデータを集め、それらの調査をもとに今回のスチーマーを開発しました。商品コンセプトを具体的な機能に落とし込み、調査期間も含めると商品開発には数年単位の期間をかけています」

最新モデルでは温スチームと冷ミストに加え、化粧水を噴霧できる機能を搭載。温スチームを浴びた後に化粧水ミストを組み合わせるW保湿を行うことで、手で化粧水をつける場合に比べて保湿成分の浸透が15%アップするそうだ。

"年間を通して心地よく使える"という同商品のコンセプトについて、光安氏は次のように紹介した。

「フェイススチーマーは冬の乾燥対策のイメージが強く、販売も冬に偏っていますが、本来は年間を通じて使っていただきたい商品です。夏の一番のお肌悩みは"ベタつき"で、乳液などの保湿は不要と考えられがちですが、"隠れ乾燥"がそうした肌トラブルの原因になっていることが実は多いのですね。乾燥した肌が油分を出し、ケアを怠って余計に乾燥する悪循環に陥ってしまう。温スチームが敬遠される季節に向け、ベタつきの原因が乾燥にあることをお伝えし、その改善策として化粧水ミストの利用を促したいです」

今後のマーケティング施策は?

「Panasonic Beauty」ではSNSでの情報発信にも注力。2015年12月に開設したブランドのInstagramアカウントは現在、約7万7,000フォロワーを誇る。コロナ禍で店頭での体験会やイベント開催が難しい状況が続くなか、訴求の場をオンラインへとスムーズにシフトできたことも、同ブランドが好調に売り上げを伸ばした要因のひとつのようだ。

「せっかくならSNSでしかできない情報を発信したいと考え、商品写真やカタログだけでは伝わりにくい、実際の使用感を想像できるような情報を多く載せています。お客様の疑問や欲しい情報をしっかり汲み取りながら、ニーズに応えられる投稿を心がけていますね。1件1件コメントを返してお答えできないところはありますが、商品に関するご質問には極力ライブ配信などでお答えさせていただくようにしています」

  • SNSでのコミュニケーションにも注力している

自らインスタライブにも出演する光安氏だが、今後特に注目している商品ターゲットがZ世代と呼ばれる若年層だという。

「最近は10代の美容意識も高まり、メイクを始める女性の年齢が下がっていますが、メイクするようになると、皮脂の詰まりなどお肌トラブルを抱えやすくなります。お肌悩みがより顕著になる、もう少し上の世代からのニーズが高い美顔器などと異なり、エステ商品の中でスチーマーは一番ターゲットが広く、2万円を切るコンパクトなモデルもあり、若い方も比較的手に取りやすい商品です」

また、男女で美容に対する意識の垣根がなくなってきていることもあり、男性モデルを起用したプロモーションも実施しているとのこと。

「プロによる眉カットやヒゲ脱毛をしている男性や、ウェブ会議などでモニターに映る自分の肌が気になるという男性の声も聞いていて。実際に当社のフェイスラインをケアする『RF美顔器』は、企業の役員など人前に出る機会の多い40・50代男性にも、よく使っていただいています。性別、年代関係なく使っていただける商品開発を今後進めていきたいですね」