ANAは最終赤字、ヤマトは最高益 ヒトの動きは低調、モノの動きは好調

ヒトの動きは低調、モノの動きは好調──。運輸業界の2021年3月期決算はヒトを運ぶ業種とモノを運ぶ業種とで、さらに差が開く形となった。

「いったん小さい会社になってコロナを乗り切る」──。ANAホールディングス(HD)社長の片野坂真哉氏は連結純損益が過去最大の4046億円の赤字に陥った決算を振り返る。

 同社は昨年10月時点で21年3月の旅客数がコロナ前から国内線で70%、国際線で50%まで回復するという見立てを立てていたが、結果として「旅客需要はかつて経験したことのない規模で低迷」(同)。日本航空も約2870億円の最終赤字だった。

 片野坂氏が復活のカギと位置づけるのはワクチン接種だ。接種が進む米国や英国では旅客需要が復活し、海外のエアラインでも単月黒字を見通す企業が出てきている。ANAHDはコロナ前の水準に回復するのは、国内線が今年度末、国際線が23年度末と予測。それまではコスト削減を続ける構えだ。

 同様に、ヒトを運ぶ鉄道会社でもJR東日本が国鉄民営化以来初となる5779億円の最終赤字となり、JR東海も赤字決算。「人の移動が制限される限り、環境は上向かない」(関係者)。

 逆に活況を呈するのが荷物を運ぶ陸運だ。「コロナ禍でEコマースの裾野が広がったように感じる。シニア層がEコマースを使ってみたら便利だと気づき始めた」と語るのはヤマトHD常務の樫本敦司氏。同社の純利益は前期比2・5倍の567億円と05年の持ち株会社移行後で過去最高を更新した。宅急便の取扱個数は初めて20億個を突破。SGHDの業績も堅調だ。

 活発な荷動きを受けてANAHDでは貨物事業が「自動車関連の部品などで順調に伸びる」(片野坂氏)と見て新規路線を開設。JR東も新幹線物流に触手を伸ばす。「運ぶ」ものの主役は当面、モノになると見られる。

 ただ、ワクチン接種が広がると、「これまで我慢していた人の移動が爆発的に伸びる可能性もある」(関係者)。それを見据えた体制を整えておかないと費用がかさむリスクもある。今期も航空と鉄道にとって緊張感のある年になりそうだ。