【経済産業省】原発処理水の海洋放出 「誤解」払しょくに懸命

東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出を巡り、経済産業省が「誤解」の払しょくに懸命になっている。

 過去には政府や東電の説明資料で基準値以上の放射性物質を含む水も「処理水」と表現してきたため、一部で「基準値以上の放射性物質を含む水が放出される」との見方が広がってしまったためだ。今後は基準値以下の水だけを処理水と位置付けるよう定義を見直すが、一度広まってしまった印象を変えるのは容易ではないとみられる。

 第1原発からは建屋に流れ込んだ冷却水や地下水が溶け落ちた燃料デブリに触れ、放射性物質を含んだ汚染水が日々発生。特殊な機器で浄化しているが、トリチウムを含む水分子は通常の水分子と同じ性質を持つことから、現在の技術で取り除くことはできない。

 トリチウムを含んだ浄化済みの水は敷地内に設置した1千基超のタンクで保管しているが、政府は22年秋にもタンクが満杯となり、廃炉作業に支障が出かねないと説明。風評被害を懸念する漁業関係者の反対を押し切り、4月13日の関係閣僚会議で海洋放出の方針を決定した。

 誤解が生まれる背景となったのは、海洋放出の方針を決定するまで政府と東電が浄化前の水を汚染水、浄化後の水を処理水と表現してきたことだ。つまり、従来の定義で「処理水を海洋放出する」と言うと、タンクに保管された基準値以上の放射性物質を含む水をそのまま放出すると受け取られてしまう。このため経産省は方針決定を機に、追加の浄化や希釈を通じて環境基準を満たした水のみを処理水と呼称するよう定義を改め、報道機関にも同様の表現を要請。

 ただ、経産省の定義変更後も、処理水の情報を掲載する東電HPではタンクに保管中の水約125万㌧を全て「処理水」と表記しており、意思統一されているとは言い難い。処理水の安全性を疑問視する声は依然根強い。国民の不安を和らげるため、政府・東電には更なる説明努力が求められそうだ。