東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、IT・ソフトウエア業界の2021年4月のM&A発表件数は11件で、4月としては2012年以降の10年間では、2015年、2016年と並んで過去最高となった。取引金額は約7903億円で、こちらも4月としては2012年以降の10年間では2012年の約698億円を大きく上回り、過去最高を更新した。7000億円を超える大型の案件があったため、金額が大きく伸びた。

  • IT・ソフトウエア業界 M&Aの推移(4月)

取引金額のトップはパナソニックの7800億円

取引金額のトップは日立製作所が米国のIT企業グローバルロジック(カリフォルニア州)を買収すると発表した案件で、買収金額はグローバルロジックの有利子負債を含めた約96億ドル(約1兆422億円)に達する。

取引金額のトップはパナソニックが、製造業や流通業、物流業などの業務を効率化するためのサプライチェーン(供給網)用ソフトウエアの専門会社である米ブルーヨンダー(アリゾナ州)の株式80%を取得し、子会社化すると発表した案件で、買収金額は株式取得で56億ドル、有利子負債の返済を含めて71億ドル(約7800億円、ほかにアドバイザリー費用約30億円)。

パナソニックは2020年7月にブルーヨンダーの株式20%を取得しており、今回の株式の追加取得で完全子会社化する。顧客企業の生産性向上などに向けたサプライチェーンマネジメントサービスを強化し、世界規模で事業拡大につなげるのが狙いで、2021年度第3四半期(2021年10~12月)までに買収完了を見込む。

金額の2番目はインターネットイニシアティブが、システムインテグレーション事業を手がけるシンガポールのPTC SYETEM(S)PTE LTDの全株式を取得し子会社化した案件で、取得金額は約36億円。

PTCはストレージ・サーバー関連のシステム構築を主力としており、インターネットイニシアティブはPTCの子会社化によってASEAN(東南アジア諸国連合)地域における事業基盤の強化を目指す。

金額の3番目はテクノホライゾンがセキュリティー機器・ソフトウエアなどを手がけるシンガポールのPACIFIC TECHグループを子会社化することを決めた案件で、取得金額は24億円。

PACIFIC TECHグループはASEAN(東南アジア諸国連合)で、セキュリティー機器・ソフトウエアの販売、インストール、メンテナンス、サポート事業に取り組んでおり、テクノホライゾングループは子会社化によって、同地域での事業強化を目指す。

このほかに4月は10億円未満が4件、金額非公表が4件あった。