空席の東電HD会長に三菱ケミカル会長の小林氏が就任へ

昨年6月から空席だった東京電力ホールディングスの会長に前経済同友会代表幹事の小林喜光三菱ケミカルホールディングス会長が就任する。

 小林氏は代表幹事として、国際的な競争力低下の中で危機感に乏しい日本の現状を「ゆでガエル」と警鐘を鳴らし、経営者としては三菱ケミカルホールディングスの事業再編や「KAITEKI経営」の浸透などの実績を持つ。

 東電では、リーマンショック後の日立製作所の経営戦略改革を主導した川村隆氏が昨年6月に会長職を退任。会長空席の1年間に柏崎刈羽原発(新潟県)ではテロ対策施設の不具合や社員の不正入室問題が次々と発覚。柏崎刈羽原発6、7号機の稼働は1基当たり約900億円の利益改善効果が見込まれ、16兆円の廃炉負担を負う東電にとっては「重要目標」(幹部)だったが、相次ぐ不祥事で地元の不信感が高まっている。

 新会長に就く小林氏は、東電の企業統治を強化し、福島県や原発立地自治体の信頼を回復することが課題になる。

 政府は昨年春、川村氏の後任として起用することを模索したが、当時は東電の原発廃炉事業で利害関係にある東芝の社外取締役を務めていたため、断念。小林氏が昨年7月に東芝を退任したことを受け、働き掛けを続けていた。

 ただ、小林氏の出身母体である三菱ケミカルHDは2021年3月期に最終赤字となる見通しで、一部では会長退任の報道もあり、「三菱ケミカルHDの仕事はどうなるんだ? 」という声も出ている。

 東電は今後、柏崎刈羽原発の再稼働に加え、政府が方針決定した福島第1原発の処理水海洋放出に向けた調整なども大きな課題となる。海洋放出には、風評被害に伴う賠償が不可欠になり、関係自治体との十分なコミュニケーションも求められる。

 今後の焦点は新たに東電の顔となる小林氏の調整力。資源エネルギー庁幹部は「小林氏は火中の栗を拾ってくれた。万全のサポートをする」と語っている。