【農林水産省】原発処理水、海洋放出へ 水産業に風評被害の懸念も

政府は、東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水について、海洋放出することを決定した。

 漁業者らからは早くも「風評被害が発生するのは明らか」との懸念が聞かれる。政府は処理水を希釈した上で海に流すことから安全性を強調しているが漁業者に寄り添った丁寧な説明や、風評被害を未然に防ぐためのきめ細やかな対策が求められる。

 野上浩太郎農林水産相は「海洋放出により風評被害が生じることを懸念される気持ちは当然のこと」と指摘。風評被害を抑制するため「生産・流通・消費それぞれの段階での追加の支援策を政府全体で検討していく」と明言している。

 福島県産の水産物を集中的に支援していく見込みだが、隣県も含めてより広範囲な地域を対象とすべきとの意見もある。範囲や実施時期などの詰めを急ぐ。

 また、風評被害の発生が懸念されている農産物に対する販売促進策も講じる方針だ。

 政府は従来から実施している水産物の販売促進に加え、消費者団体や流通業界への安全性に関する説明会や、漁場でのトリチウムの濃度を検査するモニタリング調査などを実施し、風評被害の発生を徹底的に押さえ込みたい考えだ。

 これまでも、福島県などは原発事故発生後、漁獲した魚の放射線量を計測し、安全性の確保に腐心してきた。ただ、消費者庁が今年2月に公表した調査によると、同県産の食品の購入を「ためらう」と回答した消費者の割合は東日本大震災から10年経過したにもかかわらず、いまだに8・1%に達する。

 国内にとどまらず、海外でも日本産食品に逆風が吹き付ける可能性がある。原発事故に伴う日本産食品に対する輸入規制をいまだに続けているのは韓国や中国、台湾など15カ国・地域に上る。特に韓国は、宮城や福島など8県の水産物の輸入を禁じており、輸出拡大を狙う日本にとっては痛手だ。

 政府は規制緩和を働き掛けているが、今回の放出決定により、解除が困難になったとの見方が強まっている。