世界的な半導体不足の裏で中国が米国企業の再編に待った

2021年に入って以降、独フォルクスワーゲンやトヨタ自動車をはじめ、自動車の減産報道が相次いでいる。背景にあるのは世界的な半導体不足だ。

 2月初旬に米テキサス州を襲った寒波で独インフィニオンテクノロジーと蘭NXPセミコンダクターズの半導体工場が停止。3月にはルネサスエレクトロニクスの那珂工場で火災が発生した。インフィニオン、NXP、ルネサスは車載半導体の世界シェアではトップ3を占め、工場停止の自動車各社への影響も小さくない。各社はファウンドリーなどの活用で凌ごうとしているが「委託先のファウンドリーも急な増産には対応できない状態」(関係者)だ。

 半導体各社は10年以上前から自社の生産設備を軽くして、生産をファウンドリー(受託生産)に委託するモデルを進めてきた。そのため自社での急な生産増には限界がある。

 また、ファウンドリービジネスは規模勝負でもあるため、寡占化が進み、現在は台湾TSMC、台湾UMC、米グローバルファウンドリーズの実質3社で世界の半導体生産を支えていると言っても過言ではない。

 常に生産能力は逼迫しており、TSMCの幹部は「2023年には、クライアントに十分対応できるためのキャパを提供できればと思う」と語るが、「ファウンドリーが台湾に集中している。台湾にはいくつかの活断層があり、災害リスクも考えなければいけない。車業界はジャストインタイムを見直して在庫を積み増すべき」(アナリスト)と、台湾への一極集中リスクを懸念する声も出ている。

 半導体不足が叫ばれる中、米中対立の影響も見逃せない。

 3月には米半導体製造装置アプライドマテリアルズが米投資ファンドKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)傘下「KOKUSAI ELECTRIC」の買収を断念。中国の独禁法当局の承認が得られなかったためで、米国企業によるM&A戦略に中国が待ったをかけた形である。

 また、米インテルは200億ドル(約2兆2千億円)を投じて米アリゾナ州に新工場を建設することを発表。米中対立を含めたサプライチェーン(供給網)のあり方が議論される中で、米国国内での製造機能を強化しようとしている。

「半導体は産業のコメ」と言われるように、半導体は産業競争力や国の安全保障とも密接に絡んでくる。長期化する米中対立が、業界再編や企業の成長戦略をも変えようとしているといえそうだ。