映画『くれなずめ』の松居大悟監督が語る、成田凌を主演に抜擢した理由「あまり日本にいない俳優」

成田凌主演で話題の青春映画『くれなずめ』が、5月12日(水)から、テアトル新宿ほかにて公開される。“男子”6人、結婚式の披露宴と二次会の間に起こる短い物語。高校時代の“しょーもない”思い出と、認めたくなかった“友の死”…なぜ今この映画を撮ったのか、監督・松居大悟に話を聞いた。(前後編の前編)

【写真】成田凌、若葉竜也、浜野謙太ら出演・映画『くれなずめ』場面写真

――映画『くれなずめ』は、2017年に松居監督が主宰する「劇団ゴジゲン」で上演した同名舞台が基になっていますが、どういうきっかけで脚本を書いたのでしょうか。

松居 現在、ゴジゲンは6人の劇団員でやっているんですが、それまで目次立樹と2人でやっていたのが、2017年7月から6人になったんです。そのとき、劇団員のみでやる初めての公演だったので、死生観にまつわる話にしてみようと思いました。客演だと気を遣ってしまいますけど、劇団員だったら生き死にについてどう思っているのか踏み込めるなと。

――高校の帰宅部仲間6人が、友人の結婚式に参加するために5年ぶりに集まって始まるストーリーですが、空白の5年間が大きなキーワードになります。

松居 かつて一緒に演劇をやっていて、急にいなくなった奴がいたので、そいつの話にしようと。そいつがいるときは何も考えなかったけど、いなくなってからのほうが思い出すことが増えて僕の中で生きているなと感じたんです。

――不在によって存在が際立ったんですね。

松居 思い出ってどうでもいいことばかり覚えているので、そこもコメディになりやすいかなと。シリアスなテーマなので、放っておいたら、どんどん暗くなるんですよね。そんなのは恥ずかしいので、精一杯ふざけながら作りました。

――映画版でも、重くなりそうなシーンでバカバカしいシーンが入りますが、照れみたいなものがあったのでしょうか。

松居 とにかく明るくしたくて。あと恥ずかしくなるんですよね。熱いことを言うシーンは避けたいし、真面目になりそうだったら外したいんです。



――映画化をするにあたって、舞台とは構成も大きく変わりました。

松居 舞台は1シチュエーションで、披露宴会場の裏でダラダラし続ける話でした。映画では、2次会までの時間を過ごす店を探すために、6人がうろうろする話にしようと思いました。うろうろすればするほど彼らの所在のなさみたいなものが浮き上がってきますし、動き続けることで映画になるなぁと。

――回想シーンも随所に挟み込まれています。

松居 友達との過去を思い出すときって、ちゃんとしたエピソードではなく、「あいつ、あのときに、こういう表情をしてたな」とか、「変な服を着てたよな」とか、フラッシュのように瞬間的な記憶が蘇ってくると思うんです。だから回想シーンも、思い出した奴の目線に近い感じで、なんとなくお猪口を持った手元を見たときに思い出すとか、主観的なカット割りを意識しました。それを際立たせるために、現在のシーンは長回しにするなどの演出をしました。

――過去と現在のつなぎ方が非常にスムーズでした。

松居 できるだけシームレスにしたかったんですよね。生と死の狭間の曖昧なところだったり、昼と夜の曖昧なところだったりがあって、シーンとしてのつなぎ目も曖昧なままにしたいなと思ったんです。

――3週間しか撮影期間がない中、1週間を主要キャスト6人のリハーサルにあてたそうですが、どういう意図があったのでしょうか。

松居 6人それぞれが信じあっているという関係性を、そのまま言葉で伝えるのではなく、1週間ダラダラ一緒に過ごしたほうが感覚として掴めるだろうという意図からのリハーサル期間でした。撮影に猶予があるより、リハーサルの方が大切だなと。

――具体的にどんなリハーサル期間だったんですか?

松居 もちろん読み合わせや立ち稽古もしたのですが、ダラダラと下ネタを話したりして6人の雰囲気を作りました。たとえば稽古の再開時間になっても再開をせずに雑談を続けたり、終了時間よりも早く切り上げてメシに行ったり。そこでも、お芝居の話は一切しませんでした。その1週間で6人に、この映画で大切なことが感覚的に伝わったのかなと思ったので、クランクイン後は、現場そのものの動きなどに脳みそを使えました。



――主役の吉尾に成田凌さんを起用した理由は?

松居 吉尾って一緒にいる奴によって顔や言動が変わって掴めないんですよね。でも気になるよな、会いたくなるよなというタイプで、その役が誰に合うか考えたときに浮かんだのが成田君なんです。成田君が演じてきた役もそうですし、成田君自身にも、「こいつは一体何なんだ?」と思うことがあるんですよね。

――『愛がなんだ』(2019年)で成田さんが演じた田中マモルなんかも何を考えているか分からないですよね。

松居 そういう役に対するアプローチも、「どうやってこの芝居をしているんだろう?」って不思議なんです。あんまり、そういう俳優って日本にいないので、吉尾は成田君がやると面白いなと思ってオファーさせていただきました。

――目次立樹さんはゴジゲンの劇団員ですが、高良健吾さん、若葉竜也さん、浜野謙太さん、藤原季節さんの4人は、どのようにキャスティングを考えたのでしょうか。

松居 一緒にやってみたかった人たちというのもありますし、「この人とこの人が一緒にいたらどうなるんだろ」と感覚的に組み合わせを考えました。

――松居監督の映画は『男子高校生の日常』(2013年)や『スイートプールサイド』(2014年)、『私たちのハァハァ』(2015年)や『#ハンド全力』(2020年)など若者たちの生態をリアル描くことが多いです。

松居 少年少女を描くのが好きなんです。感情が1個じゃないというか、怒りながら悔しがったり、笑いながら切ながったり、いろいろ整理されずに生きている感じが撮っていて面白いんですよね。そういう映画が続いていたんですけど、『くれなずめ』を撮ってみて、少年少女に関係なく未整理なままでいる人たちを描くことができるなという発見がありました。

(後編へ続く)

【後編はこちら】『くれなずめ』『バイプレイヤーズ』が話題・松居大悟監督が語る“コメディ”へのこだわり