アジレント・テクノロジーの代表取締役社長である合田豊治氏は4月19日、同社が進めている細胞解析ビジネスについての現状説明をオンラインにて行った。

  • 合田豊治氏

    オンラインで自社の細胞解析ビジネスについての説明を行ったアジレント・テクノロジーの代表取締役社長である合田豊治氏

同社は2015年、細胞解析ツールの1つで、生体細胞代謝測定を得意とするSeahorse Bioscienceを買収することで細胞解析市場に本格的に参入。その後、2018年にLuxcel BiosciencesならびにACEA Biosciencesを、2019年にBioTek Instrumentを買収するなど、積極的な買収戦略でポートフォリオの拡充を図ってきた。

また、単にハードウェアの拡充のみならず、コンパニオン診断薬やオリゴ糖の受託製造などの周辺分野の拡充も進めており、これにより「バイオファーマのバリューチェーンにおいて、いままでは分析ソリューションしかなかったため、創薬、バイオプロセス開発(CMC)、品質保証(QA)、品質管理(QC)といった分野しか市場がなかった。しかし、細胞解析ツールなども手掛けるようになったことから、バリューチェーン全体を通してソリューションを提供できるようになった」(合田氏)とする。

また、コンパニオン診断薬を手掛けるようになったことで、さまざまな製薬メーカーが薬剤を開発する段階でコミュニケーションをとることができるようになり、製薬メーカーの開発の方向性などを理解することも可能になったほか、もともとヒューレット・パッカード(HP)の流れを汲む製造業が発祥であることもあり、米国にてオリゴの受託製造(CDMO)を手掛ける工場を有しており、すでに日本を含めた世界の製薬メーカーなどにRNAiベースの医薬原料(API)として提供を進めているという。このオリゴ受託製造と細胞解析は、遺伝子医薬品や細胞医薬品など、将来的に伸びていくことが期待される市場に対応できる事業と位置づけられているという。

そのため合田氏は「現在は、細胞解析市場で事業を拡大するための買収はほぼ完了し、主な市場である免疫療法、感染症、治療法開発(ジーンセラピーやセルセラピー)に対し、もともと持っていた技術に買収した技術を組み合わせることで細胞の開発段階から最後のQA/QCまでサポートできる体制が構築された」と自社の立ち位置を説明する。

一連のソリューションが整った同社。2021年6月には買収したBioTekの日本法人バイオテックジャパンのオフィスがアジレントのオフィスと同じビルに移転する予定だという。

また、事業戦略的には、現在のがん免疫療法(イムノオンコロジー)の分野がようやくひと段落といったところで、今後はセルセラピーやジーンセラピーの分野を次の柱とすべく注力していきたいとするが、世界のパイプラインを見ると、イムノオンコロジーのフェーズ2やフェーズ3などもあり、そうした動きも注視していきたいとする。

なお合田氏は、「セルセラピーやジーンセラピーの需要が大きくなればなるほど、アジレントの細胞解析ツールの活用頻度も高まってくる。すでに日本でもジーンセラピー向けソリューションとして20種類ほどを提供している」と、新分野での成長に期待を寄せており、アジレント側からも積極的に仕掛けていきたいとしている。