阪急電鉄の神戸三宮駅に直結する駅ビル「EKIZO 神戸三宮」がオープンした。同駅は開業以来、阪急の西のターミナルとしての役割を担っている。「EKIZO 神戸三宮」のオープンにより、駅周辺も含め、神戸三宮駅が大きく変わろうとしている。

  • 神戸三宮阪急ビル「EKIZO 神戸三宮」。4月26日にオープンした

■駅名を2度変更した阪急の西のターミナル 

阪急電鉄の主要路線である神戸本線は、1920(大正9)年に開通したが、当時の神戸側の終着駅は王子動物園の南側にあった上筒井駅(神戸駅)であった。上筒井駅から神戸市電に乗り換え、神戸の中心地である三宮へ向かったという。

現在の神戸三宮駅は1936(昭和11)年に開業。阪急は高架線での三宮乗入れを計画したが、神戸市は街が鉄道で分断することを嫌い、地下線での乗入れを希望していた。結局、コスト面から国鉄が高架線で乗り入れることが決まり、これに続いて阪急も当初の計画通り高架で延伸している。開業当初は「神戸」駅を名乗り、駅ビル「神戸阪急ビル」も開業した。なお、上筒井駅は三宮乗入れ後も存続したが、1940(昭和15)年に廃止されている。

  • ホテル「レムプラス神戸三宮」の27階「ツインルーム」からの眺め(4月21日の「EKIZO 神戸三宮」内覧会にて撮影)。高架の阪急神戸本線とJR神戸線が並行している

「神戸」駅にとって大きな転機となったのは、神戸高速鉄道が開業した1968(昭和43)年である。当時、阪急の他に阪神電気鉄道、山陽電気鉄道、神戸電鉄の私鉄4社が神戸市中心部に乗り入れていたが、各社のターミナル駅がバラバラにあり、相互の行き来は神戸市電を利用する必要があった。

神戸高速鉄道の開業によって4社が結ばれ、神戸市内の交通が大きく改善。同時に阪急の「神戸」駅を「三宮」駅に改称した。神戸本線の終着駅だった駅は中間駅となり、神戸高速鉄道・山陽電気鉄道との相互直通運転が始まった。

1995(平成7)年に発生した阪神・淡路大震災により、神戸市民に親しまれた神戸阪急ビルが甚大な被害を受け、後に取り壊された。現在の駅名「神戸三宮」への改称は2013年のこと。同駅が神戸の中心地にあることをアピールした。

神戸三宮駅の駅ビルは震災以来、長年にわたり仮設であったが、「EKIZO 神戸三宮」として生まれ変わり、下層階は旧神戸阪急ビルをほうふつとさせるデザインに。「EKIZO 神戸三宮」のオープンにより、阪急電鉄の神戸三宮駅は名実ともに神戸市のランドマークのひとつとなった。

■昭和レトロな駅構内も少しずつ変化

神戸三宮駅の構内は島式ホーム2面3線。中線(2号線)の両側にホームがある。中線は大阪梅田方面・新開地方面へ発車できる構造になっており、中線の南側は1・2番ホーム(新開地方面)、北側は3・4番ホーム(大阪梅田方面)となる。阪急電鉄の他の駅では、駅構内放送で「●号線」と放送されるが、神戸三宮駅では「●番ホーム」と放送される。

特急など上位の優等列車の多くが神戸高速線へ乗り入れ、高速神戸駅や新開地駅まで運転される。一方、日中時間帯に運転される普通は大半の列車が神戸三宮駅の中線に入り、同駅で折り返す。山陽姫路方面から来る山陽電車は、ほとんどの列車が4番ホームに到着した後、そのまま大阪梅田方へ引き上げ、JR三ノ宮駅のホーム付近の線路上で止まる。しばらくして折り返し、転線して神戸三宮駅の1番ホームに入線する。

駅構内はドーム状となっており、開業当初からあまり変わっていないように見える。主要駅にもかかわらず、ホームはそれほど広くはなく、朝夕のラッシュ時間帯になると前へ進むことも難しくなる。ホームの環境からか、神戸三宮駅では転落事故が年間数件発生していたという。そこで阪急電鉄は、国、兵庫県、神戸市の補助を受け、神戸三宮駅で可動式ホーム柵の設置工事に着手。今年2月までに、すべてのホームで可動式ホーム柵の運用が始まった。

  • 阪急神戸三宮駅のすべてのホームに可動式ホーム柵を設置。十三駅に設置した可動式ホーム柵と比べて約100mm薄型化された

神戸三宮駅のホーム柵は、すでに設置されていた十三駅のものと比べて約100mm薄型に。ホーム階段部分の障壁をガラスフェンスにすることにより、ホームの広さを確保している。可動式ホーム柵を設置したことで、神戸三宮駅の構内は現代のニーズに合った構造となった。

■「EKIZO 神戸三宮」開業で駅北側も大きく変化

神戸三宮駅の東改札口はJR三ノ宮駅西口に直結しており、改札前は待ち合わせ場所によく利用される。以前は薄暗い印象だったが、現在はデジタルサイネージの設置などにより、ずいぶんと明るい印象になった。

4月26日にオープンした神戸三宮阪急ビル「EKIZO 神戸三宮」は、旧神戸阪急ビルの面影を残す構造で話題となっている。一方、駅北側のサンセット通り周辺にも注目したい。

  • 「EKIZO 神戸三宮」のオープンに合わせ、駅北側もヨーロッパらしい雰囲気に

以前の駅北側は雑然とした雰囲気であり、お世辞にも神戸らしいスマートな雰囲気ではなかったが、「EKIZO 神戸三宮」の建設にともない、駅北側を走るサンセット通りもリニューアル。道は石畳となり、一般車は終日乗入れ禁止となった。あわせて「EKIZO 神戸三宮」に入居する飲食店が歩道にテラス席を出し、ヨーロッパらしい雰囲気に。Twitterやインスタグラムを見ると、新しくなった駅北側の写真が多数投稿されているようで、神戸三宮の新名所になりそうな勢いを感じた。

阪神・淡路大震災以降、阪急電鉄の神戸三宮駅はターミナル駅であったものの、どこか物足りない印象だった。「EKIZO 神戸三宮」の開業で駅周辺が変化し、駅構内も可動式ホーム柵の設置を含む改良工事により、質的にレベルアップしたように感じる。現在、兵庫県は緊急事態宣言の発令中だが、この状況が落ち着いたら、ぜひ生まれ変わった阪急神戸三宮駅を訪れてみてほしいと思う。