【進む選択と集中】1兆円買収と日立化成売却で「デジタル製造業」目指す日立

「1兆円規模の買収でも成功すると確信している」と語るのは、日立製作所社長の東原敏昭氏。日立が米IT大手グローバルロジックの買収を決めた。

 買収額は96億㌦(約1兆368億円)で電機業界では過去最大。7月をメドに既存株主から全株式を取得する。日立は製造業の強みを生かしつつ、データを駆使した「デジタル製造業」への転換を急ぐ。「1兆円の買収額は妥当では。特に驚きはない」。日立の大型買収に市場関係者の多くは驚きを示さなかった。

 近年、ハードウェアからソフトウェアに重心を移している日立。自社のIoT基盤「ルマーダ」を成長のエンジンに位置づけ、「デジタル製造業」を標榜している。その実現には、デジタルのノウハウを持つ企業の買収が不可欠といわれていた。

 グローバルロジックはシリコンバレーに本社を置き、デジタルトランスフォーメーションの支援システムを手がける。製造現場からデータを吸い上げた上での経営効率化に定評がある。日立は機器売りだけでなくデータを生かしたソフトウェアをパッケージで提供することで収益性の向上につなげる狙いがある。

 日立は2009年3月期の巨額赤字の計上以降、構造改革に着手。営業利益率10%を視野に入れ、利益率の低い事業を次々と切り離した。日立国際電気やクラリオンなどを手放した他、IoTのシナジーが薄いとして「御三家」と呼ばれた日立化成も売却。同じく「御三家」の日立金属も米投資ファンドのベインキャピタルなどと売却交渉を進めていて、「聖域なき構造改革」は最終章を迎えている。

 今回の買収が実現すれば、デジタル製造業への道のりを一歩進める格好になるが、課題もある。日立はデジタル製造業化では国内では一歩先を行くが、世界を見渡せば独シーメンスが先行。米ゼネラル・エレクトリックも製造業回帰を掲げ、巻き返しに必死だ。世界展開の速度がカギになりそうだ。