東北大学大学院医学研究科と東北大学病院は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した際の肺の障害を改善する治療薬「PAI-1阻害薬TM5614」の有効性を研究するための前期第Ⅱ相の医師主導治験が終了したことから、日本国内の20医療機関で後期第Ⅱ相の医師主導治験を6月から始めると公表した。

東北大大学院 医学系研究科の張替秀郎教授の研究グループは、血栓を防ぎ、傷害から肺の細胞を保護するという視点から、COVID-19による肺傷害に対するPAI-1阻害薬TM5614の前期第Ⅱ相医師主導治験を東北大、京都大学、東京医科歯科大学、東海大学、神戸市立医療センター中央市民病院などの合計7医療機関で実施し、2021年3月に終了している。この前期第Ⅱ相医師主導治験の研究成果を基に2021年6月から、日本国内の20医療機関での治験体制で、「新型コロナウイルス肺炎患者に対するTM5614の有効性及び安全性を検討する後期第II相医師主導治験」を開始する予定という。

TM5614は元々、東北大大学院医学系研究科の宮田敏男教授によって開発されたPAI-1阻害薬であり、血栓の溶解を促し、肺の炎症や線維化を改善する作用を持っている。このためTM5614は、COVID-19に伴う肺傷害を軽減する治療薬としても有効性が期待できることから前期第Ⅱ相医師主導治験が進められてきた。経口内服薬の錠剤として患者に投与できるために「将来は病院外来で処方することが可能で、COVID-19の感染者と推定される対象者が自宅やホテルで療養中の際にも投与できるという利点が期待されている」と同大学は解説する。

同治療薬は、2000年2月に設立された東北大学発医療系ベンチャー企業であるレナサイエンス(東京都中央区)との連携で開発が進められている。