「わかんないよね新型コロナ」と言い続けて放送しながら早1年。そろそろ「わかってきたよね」と言いたいところですが、そうはいかないのが新しい感染症の悩ましいところ。4月17日(土)の放送回では「わかってきたこと まだわからないこと」をサブタイトルに掲げ、国立国際医療研究センター(NCGM)国際感染症センターのセンター長・大曲貴夫先生のインタビュー動画を見ながら、これまでのこと、今のこと、今後のことをいつものようにNCGM国際診療部の堀成美さんとゆる〜く話して参りました。ファシリテーターを務めたのは科学コミュニケーターの小林望です。

新型コロナが収束しこの番組がお役御免になる日はいつなのだろう

放送されたときは、2回目の緊急事態宣言は解除されたものの、「蔓延(まんえん)防止等重点措置」の適応が各地に広がりつつあるときでした。とはいえ、緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置って、何がどう違うのかわかりにくかったですよね。番組ではまず現状の確認と2つの違いのおさらいから始まりました。

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整理してみると、より差し迫ったステージ4相当の状態にあるときに出されるのが緊急事態宣言、ステージ3相当のときは蔓延防止等重点措置であるとわかります。都道府県単位が対象になるか、市町村単位が対象になるかといった違いもありますね。

風向きが変わった

そして放送の前日(4/16)に収録した大曲先生へのインタビューから、医療現場の状況をお伝えしました。あくまでも東京にある大曲先生が勤めるNCGMでのお話しですが「今週(4/12からの週)あたりから風向きが変わってきたと感じます。よその病院で状態が悪化してきた患者さんの受け入れ要請が増えてきた」とのこと。

ここで軽症と中等症・重症の違いをはっきりさせておきましょう。たとえば私たちは友人が39度の熱が出たりすると「重症だね」と言ったりしますが、大曲先生は「本人さんやまわりのお友達が(それを)“重症”とおっしゃるのはすっごくわかるんですけれど」と言いつつ、熱があってもそれだけならば軽症。息苦しくなって酸素吸入が必要になると中等症となるのだそうです。私たち一般人と病院では「軽症」の言葉が指している状態が違うのですね。「悪気があって、(軽症と)言っているわけではないんですよ。ご本人さんが苦しくても、必要な治療によって分けているんです。そこはご理解いただきたいです」。

高熱が出てツラくても、それだけでは軽症。

重症者が増えているという話も聞くので伺いました。大曲先生は3月4月の患者さんのデータがまだ集まり切っていない、としながらも「大阪のニュースでは『入院してくる患者さんが重症の方ばかりで大変』と聞きますよね。それはすっごく事実だと思うんですよ。ただ、その裏に軽い患者さんがどのくらいいるのか、そこを見極めないとまだ判断は難しいと思っています」と仰います。絶対数が増えているのは間違いないけれど、重症化する人の割合が増えているのかどうかは、まだわからないようです。

気になる変異株の拡大

気になる変異株についてはどうでしょう? イギリス株などとも呼ばれる変異株は感染する力が強い、重症度も強いなどの報道も出ています。大曲先生は「広がりやすいのではないか、亡くなる率が高いのではないかというのは、イギリスあたりのデータを参照しているのだと思います。日本ではまだデータが多くないのだけれど、厚労省の会議で出てくるデータや今週(4/12からの週)大阪府からのデータを見ると、やはり広がる力が強いのかな、とか、重症になるリスクが高いのかな、とかそう思わせるものがありますよね。正確なところはこれからだけれど、今のところ僕らはそういう認識でいます」。

病原性についても「結果として重症の方が占める割合が高いように見える」と仰いますが、「このウイルスに感染すると身体が強く反応して重症化しやすくなっているのかなぁと思っています」。ウイルスが身体に入ると、感染した細胞を排除しようとして私たちの身体の免疫系が反応します。「これが強く反応することによって、自分の身体まで攻撃して悪くなる。変異株に感染するとそういった反応が強く出やすいのかもしれない。結果的に重症化しやすいのかとは思っています」。

臨床の現場では変異株の拡大を感じているのでしょうか?「東京で患者さんのお顔つきや様子を診ている分には(変異株拡大は)わからないですね。ただ、調べてみると変異株だということはざらにある。そういう意味では(東京にも)もう来ているよねって思っています」。とはいえ「僕たちが診ている限りでは、悪くなりやすさとかそんなに変わった様子はみえない。ただ、僕らの診ている数は限られているし、人間のものの見方は偏っていることもあるので、慎重に慎重に見きわめるようにしています。データも取っています」

変異株も従来株も患者さんの様子だけではわからない

変異株でも診断や治療、防ぎ方は変わらない

医療現場での対応はどうなのでしょう?変異株では変わったりするのでしょうか。「結論から言えば、変わらないです。最初のときはわからなかったので、退院基準を厳しくしていたりしたけれど、今は変異株の患者さんの身体からウイルスが排出されている期間と従来株の患者さんとでそんなに変わらないとわかったので、退院基準も一緒になりました。ただ、例外もあって、日本でまだすごく少ない変異株に対しては、封じ込めが可能かもしれないので、医療機関に余裕があれば個室などの対応をしています」

この1年少しをかけて積み上げてきた知識が変異株の出現で変わることがあるのでしょうか?「(変異株は)まだわからないこともあって不安な部分はありますが、やることは変わらないです。診断の仕方も防ぎ方も治療も一緒。だからといってなめているわけでないですが、変異株だからといってこれまで積み上げてきた(知識に基づく)治療が効かないとか、そういうことはないです。そこはご安心いただいていいと思います」

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なお変異株では何がどう変化しているのかなどは2月20日の回でややマニアックにご紹介しています。こちらもぜひどうぞ。

2月20日の放送回 https://live.nicovideo.jp/watch/lv330413145
そのまとめ記事 https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20210305-220.html

後遺症についてわかっていることは?

気になる後遺症についても伺いました。年代や性別などどういう人が後遺症が残りやすいかなど、わかっているのでしょうか。大曲先生は「言い方が難しい」としばらく考えた後、「傾向はない」とお返事になりました。「私たちの病院に入院した患者さんに調査をさせていただいて、各年代の方々で後遺症の出た方がどのくらいいるのかを出してみたら、差がない。どの世代の方にもどこかで何らかの症状が出た方が7割、8割いらっしゃる。僕らもびっくりした」。どの年代の人にも後遺症の出る可能性があるとはいえ、「年代による症状の違いというのはあって、多くの人はだるさや息切れなのだけれど、20代の方は匂いや味がわからないというのが多いんです、50%くらい。けっこう高い。若いから大丈夫とは、僕らはこの数字を見てしまったら、もう言えない。匂いがわからないなんて大変ですからね。若い人にも気をつけてねって、言いたい」

軽症や中等度ですんだ方にも後遺症が出ることはあるのでしょうか。「あります、ありますね。匂いや味の症状は、むしろ軽症の人の方が頻度たかいですね」

後遺症が生じるメカニズムについては、たとえば息苦しさはウイルスのせいで肺の組織が硬くなる(線維化)とか、認知機能の低下に関しては血栓が脳の細い血管で梗塞を起こしているのではないかとか、少しずつわかってきてはいるものの、まだわからないことが多いそうです。

ほかにもたくさんの話題が

この回はほかにもいろんな話題を扱いました。大曲先生のインタビューは全部で約30分になります。堀さんからも医療体制に関してこの1年で整えたこと、ワクチンの話題、過去の感染症での収束のお話しなどを伺いました(科学コミュニケーター田中の生き物オタクぶりを発揮した休憩タイムの話題も必見です)。

どなたでもこの回のアーカイブをご覧になることができます。

https://live.nicovideo.jp/watch/lv331312435

下のリストは、それぞれの話題を扱った時間になります。見たい話題を探すときにお役立てください。

3:48  いまの新型コロナの流行状況は?まん延防止等重点措置っていったいなに?
8:11   大曲先生インタビュー①
    東京の医療機関の状況
16:15  医療がひっ迫しないようにどんな取り組みがある?
19:40  新型コロナウイルスについてわかってきたこと
21:35  変異株についておさらい
25:00  大曲先生のインタビュー②
    変異株が医療現場にどんな影響を及ぼしている?
    変異株が広がっても基本的にはこれまで積み重ねてきた対応をする
34:10  大曲先生のインタビュー③
    まん延防止等重点措置へ期待すること
36:11  変異株に対して私たちができること
39:10  科学コミュニケーター田中による休憩コンテンツ
51:20  感染症が収束するってどういうこと?
52:00  大曲先生のインタビュー④
    大曲先生の感染症収束のイメージ
    収束に向けて必要なものは?
58:29  過去の感染症の収束は?
1:01:40 新型コロナの経験を記録に残していくことが大事
1:02:59 ワクチンを打つリスクとワクチンの効果
1:08:20 ワクチン接種後に気を付けることは?
1:11:04 新型コロナに感染するリスク
1:13:55 大曲先生のインタビュー⑤
    後遺症について
1:20:25 ワクチンを打たないことのデメリット
1:23:58 これまでの対策振り返り
1:27:50 大曲先生のインタビュー⑥
     番組視聴者へのメッセージ
1:32:50 これから対策はどうしよう?



Author
執筆: 詫摩 雅子(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
新聞記者、科学雑誌の編集者を経て、未来館へ。バックグラウンドは生態学ですが、雑誌の編集部に長くいたせいか、ムダに雑学が多い(らしい)。イラストはアマミノクロウサギ(吉田静佳・画)。短足胴長、変わり者であるところにシンパシーを感じております。アマミノクロウサギに関してならば40字から4万字まで、何字の原稿でも書けます。