村上春樹「ときが経てば言葉はだんだん死んでいきます。でも芸術は残ります」レイ・チャールズの歌を聴いて実感すること
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。2021年4月より、これまでの不定期放送から毎月最終日曜日放送のレギュラー番組にリニューアル。月1レギュラーの第1回となる4月25日(日)の放送は、「村上RADIO~花咲くメドレー特集~」と題して、新旧さまざまなアーティストが演奏する「3曲以上が連なるメドレー音源」を村上さんの解説付きでオンエア。
この記事では、クロージング曲と“今日の最後の言葉”についてお話された概要を紹介します。


村上RADIO



<クロージング曲>
John Scofield「Georgia On My Mind」


今日のおしまいは、ジャズ・ギターのジョン・スコフィールドの演奏する「我が心のジョージア」Georgia On My Mindです。
     


今日の最後の言葉は、黒人歌手レイ・チャールズです。

レイ・チャールズは南部ジョージア州生まれで、貧困家庭に育ち、盲目というハンディキャップを背負い、厳しい人種差別に苦しみました。でも生涯を通して、社会的メッセージを込めた歌、いわゆる「プロテストソング」みたいなものをほとんど歌っていません。あるインタビューでそのことを訊かれて、彼はこう答えています。

「私の目が見えないことは、もうみんなが知っていると思う。だからそんなことを今さらことわるまでもあるまい。そして私が歌を歌うとき、黒人であるというだけで私が長年にわたってくぐり抜けてきた心の哀しみ、闘いや嘘、ひどい仕打ち、そんなすべてを、いちいち歌詞にしなくとも、聴く人に伝えることができるはずだと、私は思いたいんだ」

彼の代表的ヒットソングのひとつ「我が心のジョージア」は、生まれ故郷であるジョージア州を称える歌だけど、その声に込められた深い悲しみは、聴いているものの心を静かにじわりと打ちます。

もちろん直接的なメッセージの発信も必要だけど、そうではないアプローチもあっていいですよね。いろんなやり方があります。ときが経てば言葉はだんだん死んでいきます。でも芸術は残ります。

レイ・チャールズのこの歌を聴くと、あらためてそう実感します。

<番組概要>
番組名:村上RADIO~花咲くメドレー特集~
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:4月25日(日)19:00~19:55(※放送日時が異なる局があります)
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/