倉庫業務の人手不足が深刻な理由と対策とは?IT化による4つの解決方法も紹介

倉庫管理

昨今の倉庫業務の現場では、需要の増加と人手不足の両方が発生しており深刻な状況です。本稿では、倉庫業務が人手不足に陥る理由についてまとめました。また、人手不足対策、中でもIT技術を活用した人手不足解消策、ITを利用した人手不足の解消事例について解説します。

倉庫業務が人手不足に陥る5つの理由

倉庫業務が人手不足に陥っている理由は、需要の増加と確保しにくい供給力の両方が発生しているためです。ではどういう要因で需要は増加しているのか、なぜ人材を確保しにくいのかについて、それぞれ掘り下げていきます。

1 通販の拡大と貨物の多品種小ロット化で業務量は増加

ECサイトの発展によって、通販事業は拡大し、物流および倉庫業の役割はますます増しています。消費行動の多様化等の影響で、貨物は多品種小ロット化。倉庫業の業務量はかなり増加しており、現場の負担は大きくなるばかりです。

2 新型コロナウイルスの影響

さらに、2020年から2021年にかけては、新型コロナウイルスの影響が倉庫業に大きな影を落としています。

緊急事態宣言の発令で巣ごもり需要が増加する一方で、倉庫で働く人材は、感染回避のための自宅待機で労働力不足に陥りました。倉庫業にとって、新型コロナウイルスは需要増加と供給減少のダブルパンチとなったのです。

3 少子高齢化による労働力不足

そもそも人手不足のベースとなっている理由は、日本の少子高齢化の進行です。端的に言えば、現在の日本は、力作業の多い倉庫業に適した人材が不足しています。他の業種なら腕力のない高齢者や女性も労働力にできますが、倉庫業は業務の性質から、腕力のない労働力は受け入れにくい状況です。

4 2021年1月時点で正社員の不足している上位10業種にランクイン

2021年1月時点で、運輸・倉庫業で正社員が不足していると答えた企業の割合は43.9%。上位10業種にぎりぎりランクインしています。2019年1月の71.9%に比べるとかなり減少しているとはいえ、全業種で見れば高いレベルだと言える数字です。

2021年1月は新型コロナウイルスの影響もあり、国内景気が冷え込んだことも影響して一時的に人手不足感が解消したのかもしれません。ただ、新型コロナウイルスの影響が解消されるころには、また高いレベルで人手不足に陥る可能性もあります。

5 働き方改革により長時間労働もしにくい状況

2019年4月から実施された働き方改革により、現状の人材が長時間労働で業務を遂行するのも難しくなっています。ここまで見てきた通り、倉庫業が人手不足に陥る理由はさまざまで、簡単には解消できない課題です。

では、倉庫業務の人手不足を解消する対策には、何が考えられるでしょうか。

倉庫業務の人手不足を解消する対策4つ

倉庫業務の人手不足を解消するための対策について、4点ピックアップして紹介します。

1 作業を細分化して女性や高齢者も働けるようにする

倉庫業務の作業を細分化して、女性や高齢者でも可能な業務と力作業とに分ける、というのもひとつの対策方法です。また、労働時間を短縮して、短時間だけ働きたいというニーズにも対応することで、学業との両立が可能な学生が労働力として入ってくることも期待できます。

2 外国人の登用

外国人を登用して人手不足に対応する、という対策も検討されています。人手不足が深刻な状況にあると認められた14業種は、外国人就労を解禁する制度があります。その業種に、倉庫業も追加してほしいという要望が出ている状況です。この要望が認められて、外国人就労が解禁されれば、人材不足が緩和されると期待できます。

3 人員管理システムなどを利用した人員管理の効率化

倉庫業務の人員管理を効率化するためには、従業員の労働時間を正しく管理し、合理的なシフトを組む必要があります。シフト作成を現場の勘ではなく合理的に判断するため、人員管理にITシステムを導入することも、人手不足対策のひとつです。

4 倉庫業務自体のIT化

倉庫業務自治をIT化して、人手不足を解消するという方法もあります。最新のIT技術を利用して倉庫業務の省人化を進めることで、少人数の従業員でも、従業員の負荷を下げるとともに倉庫業務をこなせるようになります。どの倉庫業務をIT化するかの具体的な施策は、以降で見ていきましょう。

倉庫業務IT化による4つの人手不足解消策

倉庫業務のIT化による人手不足解消策について、具体的な施策を紹介します。自社の倉庫作業でお悩みの場合、いずれかの施策が可能かどうか検討してみてください。

1 無人搬送ロボットの導入

搬送作業をロボットに任せる施策は、特に人手不足となっている力の必要な作業を少なくするため、人手不足解消策として有効です。無人搬送ロボットは、倉庫内のピッキング作業を担当します。

従来は作業員が倉庫内にある複数の商品をピッキングして回っていました。ピッキング作業の負荷は大きく、なかなか省人化が進みませんでした。無人搬送ロボットが負担の大きいピッキング作業を代行することで、人間の負担は大幅に軽くなります。

2 入荷時に商品を保管する棚入れ作業の自動化

ピッキング作業だけでなく、入荷時の商品を棚入れする作業もロボットに任せるのも、倉庫の人手不足解消に役立つ施策です。倉庫内の作業員は、ピッキングと棚入れ両方の力仕事から解放され、大幅に業務効率化が進みます。

3 入出庫時の検品自動化

現在アパレル業界などでの導入が進んでいる「RFID」と、一括でRFIDのデータを読み取るゲートタイプの装置により、入出庫時の検品を自動化することもできます。RFIDとは、 ID情報が格納されているRFタグに、電波などを使って非接触で情報の読み書きを行うシステムのことです。

特に商品分類が細かく検品作業の大変な商品を扱う場合、入出庫時の検品ではミスが起こりがちでした。RFIDの情報を一気にかつ正確に読み取る仕組みができれば、入出庫時の作業も大幅に効率化できます。

4 倉庫管理システムの活用

搬送作業におけるロボットやゲートタイプのRFID自動読み取り装置の導入は、非常に高コストなので簡単には導入できない企業もあるでしょう。これらの施策よりも比較的コストを抑えつつIT化で倉庫業務を効率化する選択肢のひとつとして、倉庫管理システムの導入があります。

倉庫管理システムは、倉庫内に保管している物品の情報を一元管理するシステムです。倉庫管理システムでは倉庫内の商品配置を整理し、入庫・出庫時の移動距離を短縮することで、倉庫内作業の効率化を促進します。

ここまで見てきた通り、倉庫業務をIT化することで、これまで負担の大きかった業務も省人化できます。次に、具体的にITを活用して倉庫業務の人手不足を解消した事例を紹介します。

倉庫業務における人手不足の解消事例

倉庫業務における人手不足の解消事例として、無人搬送ロボット活用の例と、RFIDタグを活用した倉庫業務の自動化例を紹介します。

1 無人搬送ロボットにより作業員の労力を削減

大型の倉庫内で働いている作業員は、出荷時のピッキング作業や入荷時の棚入れ作業で、1日に10km以上移動するケースもあります。1日10kmの移動は、体力的にかなり負担が大きいと言えるでしょう。

無人搬送ロボットによって、ピッキング作業と棚入れ作業を自動化することで、作業員は1日10kmも移動しなくてよくなりました。棚入れ作業で無駄のない商品の保管を行うことで、ロボットの移動距離も最短で済み、倉庫業務の効率化が進みました。

2 RFIDによる倉庫業務自動化で業務効率を大幅に改善

アパレル大手企業は、全国に多くの店舗があり、倉庫も複数あります。商品数とサイズ・カラーのバリエーションも豊富なため、RFIDとハンディターミナルを使って入出荷の商品数をリアルタイムで把握できる仕組みを構築しました。

さらにRFIDの情報を利用して、ピッキングや出荷・検品・保管などの業務を自動化。結果として、倉庫内の作業量を10分の1まで効率化できました。

倉庫業務の人手不足は倉庫管理システムの活用でも解消可能

倉庫業務の人手不足は、さまざまな要因が重なりかなり深刻な状況です。人手不足を解消する対策はいろいろありますが、倉庫システムの活用でも、人手不足解消に役立ちます。

倉庫内にロボットを導入する施策はかなり高額です。相対的に低コストで導入できる倉庫管理システムを、倉庫業務の人手不足解消策として検討してみてはいかがでしょうか。

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