電子カルテの導入費用とは?相場や費用を抑えるポイント、補助金について解説!

電子カルテ

電子カルテの導入費用は、さまざまな要因で非常に大きな幅があるため、事前の見積もりが欠かせません。この記事では、電子カルテの導入費用を決める7つの要素について解説するとともに、導入費用を抑えるためのポイントと、見積依頼を出す際のチェックリスト、利用できる公的な助成金・補助金を紹介します。

電子カルテの導入費用は無料から数千万円まで大きな差がある

電子カルテの一般的な導入費用の相場は、電子カルテで初期費用300万円+月額3万円、レセコンで初期費用150万円+月1.5万円です。レセコンとは、レセプト(診療報酬明細書)作成システムで、医事コンピュータとも呼ばれます。

平均相場は上記の通りですが、選択する製品のタイプやオプション費用、導入サポートまでを視野に入れると、導入費用は無料というパターンから数千万円規模まで大きな差があります。電子カルテの導入費用は、どういう要素で決まるかを知り、自院はどのパターンに当てはまるかを確認しましょう。

電子カルテの導入費用を決める7つの要素

電子カルテの導入費用は、いくつかの要素が絡んで決まってきます。どのような点が費用に関わるのかについて解説します。

1、オンプレミス型かクラウド型か

電子カルテは、自院内に環境を構築するオンプレミス型と、サービス提供者が用意する環境に接続して使用するクラウド型の2パターンがあります。どちらもメリット・デメリットはありますが、低コスト・短期間で導入できるクラウド型の方が導入費用を抑えられます。

1:オンプレミス型の導入費用

オンプレミス型を導入する場合導入費用は高めで、5年ごとにパソコンのリプレースが発生し、初期費用と同等の費用を見込んでおかなければなりません。

レセコン・電子カルテ・院内ネットワーク用にサーバーを3台用意する前提で、導入かつ初期設定込みの費用で300~500万円程度となります。毎月かかる保守費用は2~3万円程度です。

レセコンを別途用意する場合には、初期費用は150~200万程度必要です。月額利用料は2万円前後かかります。

2:クラウド型の導入費用

これから開業する小規模・中規模の診療所・クリニックなら、基本的にクラウド型の電子カルテ導入を検討すると良いでしょう。

クラウド型の場合、すでに使っているパソコンからサービスを利用する形となるため、初期費用は無料で月額利用料だけかかる、という製品もあります。月額料金は2~4万円程度が平均相場です。クラウド型のレセコンは、日本医師会の日医標準レセプトソフト(ORCA)を利用し、月額1万円台と割安なサービスも見られます。

導入費用だけ見れば低コストに抑えられますが、運用開始後のサポートサービスをどこまで受けるかによって、年間の総コストは変わってきます。操作の質問や定期的な研修などのサポートが必要な場合、年間で50~100万円のコストを見積もっておきましょう。

2、レセコン一体型か別とするか

開業時には、電子カルテだけでなくレセコンの導入も併せて検討することになります。そのため、レセコン一体型の電子カルテを選ぶかどうかも、導入費用を決定づける重要な選択肢です。

大手メーカーの電子カルテはレセコン一体型で機能豊富ですが、その分導入費用は高くなる傾向にあります。無料のレセコンであるORCAと連携可能な電子カルテを単独で導入すると、初期費用は安く抑えられます。ただし、連携に設定などが必要な場合は、導入支援サポート費用が必要です。

3、システム設定を依頼するかどうか

開業時に電子カルテやレセコンを導入する場合、開業の準備で忙しく、導入した電子カルテなどのシステム設定まで手が回らないケースも多く見られます。オンプレミス型の場合は、システムの導入から設定までを初期費用の中に含んでいるケースが一般的です。

クラウド型の場合は、システム設定を利用者側が行うようになっていて、システム設定は別サービスになっているパターンが多い傾向にあります。クラウド型電子カルテを選び、システム設定依頼する場合は、初期費用はさらに多く見積もる必要があります。

4、その他サポートサービスが必要かどうか

導入支援サービス以外にも、電子カルテの操作などの研修・サポートに関するサービスが必要かどうかでも初期費用は変わってきます。各種サポートサービスは、費用対効果を考えて選びましょう。

5、自院に合わせたカスタマイズを実施するかどうか

カスタマイズをしたい場合、基本的に提供形態はオンプレミス型を選択する必要があります。自院の状況に合わせたカスタマイズが必要な場合、多額の開発費用がかかるとともに、開発期間分導入までの期間も長くかかります。

6、ライセンス体系

電子カルテのライセンス体系は、主に以下の3パターンがあります。

  • クライアントライセンス
  • ユーザーライセンス
  • 利用人数や病床規模別のライセンス

クライアントライセンスはパソコンの台数で決まり、ユーザーライセンスは利用人数で決まります。利用人数や病床規模のライセンスは、料金体系が数段階になっていて、ボリュームディスカウントされる場合もあります。

これらのライセンス体系はクラウド型で採用され、月額料金かつクライアントまたはユーザーライセンスでの課金が一般的です。

少人数の診療所は、クライアントライセンスまたはユーザーライセンスを選ぶ方が、低コストで電子カルテを利用できる傾向にあります。大規模な病院なら、ボリュームディスカウントが効くライセンス体系を選ぶことが重要です。

7、災害時などのトラブルへの対応方法をどうするか

災害やシステム障害などが発生したときも、診療を止めるわけにはいきません。トラブル発生時も診療を続けられるような対策も必要となります。

データのバックアップをどうするか、クラウド型の場合はインターネット回線不通時の対応も検討が必要です。クラウド型の電子カルテを利用している場合も、サブサーバーを自院内に設置する必要がある場合、ハードディスクなどの機器購入費用やデータセンター利用などの費用も見積もらなくてはなりません。

電子カルテの各製品は、災害対策がそれぞれ違います。製品ごとに災害時の対応内容を比較して、利用者側で必要となる対応と対応にかかる費用も見積もりましょう。

ここまで見てきた通り、電子カルテの導入費用は、単純に製品の価格だけには収まらず、選択肢によってはかなり高くなる可能性があります。

電子カルテの導入費用を抑えるポイント4点

電子カルテの導入費用をできるだけ抑えるには、事前に知っておくべきポイントがあります。ここでは、導入費用を抑えるコツを4点紹介します。

1、予算を明確にする

まず、電子カルテ+レセコンに使える予算を明確にしましょう。立てた予算の範囲内で収めるように製品を比較検討することで、本当に必要なサポートサービスも含めて取捨選択し、導入費用を抑えられます。

2、保守費用などのランニングコストも含めて総コストを比較検討

導入費用だけでなく、ランニングコストも含めた総コストを比較検討することも必要です。

クラウド型の電子カルテを導入するつもりの場合は、1年間の予算を算出しましょう。オンプレミス型とクラウド型で迷っている場合は、オンプレミス型製品のリプレースが発生する可能性の高い5年単位での総コストを算出して比較検討します。

5年単位で総コストを比較検討する場合は、利用者数の増加も計算に織り込んでください。ずっと少人数のままならいいのですが、病院を大きくしたいと考える場合、人数増加による月額料金の増加も視野に入れなくてはなりません。

3、複数業者に相見積もりを取る

電子カルテの導入費用・運用コストを含めた総コストは、電子カルテの販売会社に見積もりを取る必要があります。このとき、複数業者に相見積もりを取ることも重要です。高額なものなので、比較検討して自院に必要な機能が揃っていて、費用対効果の高い製品を選びましょう。

相見積もりを取る場合は、各社同じ条件でないと比較しにくくなります。電子カルテ導入の見積依頼に役立つチェックリストを後ほど紹介しますので、相見積もりを取る際ぜひご活用ください。

4、公的な助成金・補助金が利用できないか検討する

経済産業省の「IT導入補助金」などのように、電子カルテにかかる費用の一部を、事業者向けの公的な助成金・補助金で受け取れるケースもあります。補助金は後から支給されるため電子カルテの費用はいったん全額負担しなければなりませんが、申請が通れば導入費用の負担軽減が可能です。

電子カルテ導入費用を見積依頼に出す前のチェックリスト

電子カルテ導入費用の見積依頼を複数の業者に出す場合、チェックリストを用意して、見積もりに必要な情報を洗い出しておくと便利です。以下に、電子カルテ導入費用を見積依頼に出す前のチェックリストの例を紹介します。

項目 条件
デスクトップパソコン 受付〇台 診察室〇台 処置室〇台
ノートパソコン 〇台
タブレット 〇台
モニター 〇台
レーザープリンター 〇台
インクジェットプリンター 〇台
診察券 手書き・印刷・リライト印刷
保険証スキャナー 必要・不要
バックアップ クラウド・自院内サーバー・製品に合わせる
予約受付 必要・不要
オンライン診療 必要・不要
必要なオプション (自由記載)
必要なサポートサービス (自由記載)
接続機器 (自由記載)
外部検査会社との連携 (自由記載)
利用人数 医師〇人 看護師〇人 医療事務〇人
病床数 無床・有床(〇床)
社外からの接続(スマホ含む) 必要・不要
診療科目 (自由記載)

各項目の記載内容について簡単に解説します。

1、パソコンなどの機器類と利用人数

電子カルテやレセコンを利用するパソコン・タブレットの台数を洗い出します。患者様に説明するためのモニターや、診察券・領収書・処方箋などを印刷するプリンターも必要でしょう。電子カルテのライセンス体系がクライアントライセンスの場合、見積もりに重要な情報となります。

2、バックアップ費用

電子カルテデータのバックアップをどうするのか記載します。クラウドでバックアップ希望か、自院内にサーバーを立てるかの希望を記載しましょう。製品によってバックアップの仕様が決まっているケースもあるので、「製品に合わせる」という選択肢も入れています。

3、予約受付やオンライン診療等の対応

予約受付やオンライン診療などの対応が必要かどうかを記載します。機能的にあるかどうかの確認、ない場合はカスタマイズやオプション機能を希望するかも書き添えると、業者側もより正確な見積もりができます。必要によっては業者側から有用な提案も受けられるでしょう。

4、利用したいサポートサービスやオプション

導入支援サービスや研修サービス、24時間無休の運用保守サービスなど、利用したいサポートサービスは列挙してください。記載するサポートサービスの例は以下の通りです。

  • 導入支援サービス
  • カルテデータの移行(紙・電子)
  • 研修サポート
  • サポート体制(24時間希望など)
  • 訪問サポート

オプション機能は、例えばセキュリティ関連機能やデータのバックアップ機能など、製品によって違います。製品の公式サイトを確認して、自院に必要なオプションを選択しましょう。

サポートサービスやオプションの選択は導入費用に直接関係するため、しっかり検討したい項目です。

5、既存の機器やシステムとの連携

既存の機器やシステムとの連携が必要な場合は、すべて書き出してください。

6、外部検査会社との連携

外部検査会社と連携すると、検査結果をシステム内ですぐ参照できるなど非常に便利で、医療のスピード化が実現できます。連携したい外部検査会社があれば記載しましょう。

7、自院の規模や特徴(無床・有床、診療科目など)

自院の規模や特徴に関する項目(利用人数・有床か無床か・診療科目・社外からの接続が必要か)も費用を決める重要な要素です。漏れなく記載しましょう。

電子カルテ導入時に利用を検討したい助成金・補助金

電子カルテを導入する際、検討したいのが公的な助成金・補助金の申請です。助成金・補助金どちらも融資とは違い返済する必要のないお金であり、電子カルテの導入費用を抑えるのに役立ちます。利用を検討したい助成金・補助金は以下の通りです。

助成金・補助金 監督官庁 補助内容
IT導入補助金 経済産業省 費用の1/2、最大450万円を補助
小規模事業者持続化補助金 中小企業庁 費用の2/3、最大50万円を補助

1、経済産業省「IT導入補助金」

IT導入補助金は、電子カルテ導入時に利用できる補助金で、通常枠(A・B類型)は最大450万円と金額も大きい補助金です。ただし、導入したい電子カルテ製品およびベンダーが「ITツール」「IT導入支援事業者」として登録されている必要があります。

2021年4月22日時点では、ご紹介した通常枠(A・B類型)に加え、低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)も申請可能です。低感染リスク型ビジネス枠は上限450万円で費用の2/3まで補助を受けられます。

「複数プロセスの非対面化や業務の更なる効率化を目的とした事業が対象」のため、電子カルテも対象になると考えられるので、申請が可能ならぜひ検討しましょう。 (出典:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金-低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型))

2、中小企業庁「小規模事業者持続化補助金」

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓の費用として利用できる補助金です。本命はIT導入補助金ですが、自院の公式サイトを制作する費用などにも使えます。

電子カルテの導入費用は自院の要件を明確にして確認を

電子カルテの導入費用は非常にざっくりと言うと300万円が平均相場です。ただ、影響形態や求める機能・サポートサービスなどの選択によっては、導入費用・運用コストともに大きな振れ幅があります。

電子カルテの導入費用を少しでも抑えるためには、自院の要件をまとめて業者に相見積もりを取ることや、公的な助成金や補助金の利用も検討しましょう。

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