グレタ・ヴァン・フリート、ロックの救世主が手にした「映画的な傑作アルバム」を考察

2019年にグラミー賞を受賞したアメリカの4人組バンド、グレタ・ヴァン・フリートが待望のニュー・アルバム『The Battle At Gardens Gate』をリリース。日本のロック・ファンとも相思相愛の関係を築いてきた彼らの新境地を、音楽ライターの荒金良介が考察。

グレタ・ヴァン・フリートの2ndアルバム『The Battle At Gardens Gate』がとにかく素晴らしい。一度目に聴いた衝撃もさることながら、聴き返すたびに感動は膨らむばかりだ。早くも2021年を代表する作品と言いたい。先行MVが「My Way, Soon」、「Age Of Machine」、「Heat Above」と公開される中、そのどれもが斬新な映像描写でファンの好奇心を煽り続けた。特に「Heat Above」はメンバー4人が中世貴族のような白装束に身を包み、時代や流行を超越したアーティスティックな雰囲気を放っている。また、先行で聴いたそれらの楽曲たちがアルバム内に収まると、新たな命を吹き込まれたように輝きが増していることに気づく。1曲1曲のクオリティはもちろん、作品のトータル性においても隙のない傑作が誕生した。



「レコーディング中に、アルバムのタイトルとテーマのアイディアは色々と出し合ってた。それで、アルバムの半分の曲ができた頃に、これはすごくシネマティックなアルバムになるって分かったんだ」(ダニー・ワグナー:Dr、以下発言同)

屋台骨を支えるダニーの言葉を借りれば、「映画的な作品」ということになる。そのキーワード一つ取っても、バンドが以前とは全く異なる視点を獲得したことがわかる。

規格外の成功を収めたバンドの歩み

バンドは2012年に米ミシガン州にある5千人の小さな街・フランケンムースで産声を上げた。ジョシュ(Vo)とジェイク(Gt)は双子であり、その弟であるサム(Ba, Key)のキスカ3兄弟とカイル・ホーク(Dr)の4人で結成。しかし、2013年にカイルが抜け、メンバーの幼なじみだったダニー・ワグナー(Dr)が加入し、現ラインナップが揃った。

彼らは2017年4月に1st EP『Black Smoke Rising』でデビュー。この4曲入り作はバンドの名刺代わりと言える内容で、ここ日本でも海を越えて輸入盤が大きな話題を呼んだ。その1st EPには結成後に数カ月で作った初のオリジナル曲「Highway Tune」も収録され、それがリード・トラックになるや、全米のラジオで積極的にオンエアされ、ビルボードのメインストリーム・ロックとアクティヴ・ロックの2つのチャートで1位を獲得する。その後にイギリスのザ・ストラッツのサポートで全米を回り、華々しいツアー・デビューを果たした。


Photo by Alysse Gafkjen

同年11月には1st EP収録の4曲を含む8曲入り2ndダブルEP『From The Fires』を発表。新曲2曲にプラスして、サム・クックの「A Change Is Gonna Come」、フェアポート・コンヴェンションの「Meet On The  Ledge」のカバーも収録。バンドのルーツが垣間見える選曲で、特にフェアポート・コンヴェンションはあのレッド・ツェッペリンにも影響を与えたブリティッシュ・フォークの大御所である。グレタ・ヴァン・フリートの音楽性は地中深く根を下ろしている。ライブにおいてはハウリン・ウルフの「Evil」を取り上げたりと、それ以前のブルースなども貪欲に吸い上げ、若い感性とパッションで瑞々しく吐き出しているのだ。そのギャップがまた世界中のロック・ファンを魅了している要因だろう。以前にライブの客層について尋ねると、「俺たちの観客層はとても面白いよ。8歳から80歳まで揃っている感じなんだ」とサム・キスカが答えてくれたことがある。まさに老若男女、幅広いファン層を味方に付けた破格の新人なのだ。

2018年には20歳前後という年齢で、1stアルバム『Anthem of the Peaceful Army』をリリース。これが全米トップ・アルバム・セールス・チャート1位の快挙を成し遂げる。過去2枚のEPではストレートな勢いを押し出していたが、ここに来てグッと腰を据えた奥深い作風にシフトした。言わば最先端とは真逆の音楽だが、古くも新しい独自のサウンドに新鮮な衝撃を受けた人が多かった。



そして、前作から2年半ぶりになる2ndアルバム『The Battle At Gardens Gate』がここに到着。プロデューサーにはポール・マッカートニー、アデル、フー・ファイターズなどを手がけたグレッグ・オースティンを迎えている。曲作りはライブやツアーの合間を縫う形で、2019年にロサンゼルスで10曲をレコーディングしている。しかし、2020年はコロナ禍による影響で多くのバンドがツアー中止に追い込まれた。

「想像を絶するほど大変だよ。パンデミックが始まった当初は、数カ月のオフは良いことだった。その後、何が起こるか誰にも分からなかったからね。それで、全員がその状況の中でできることをやって、自分たちの時間を持てばいいんだと気づいて、すごく生産的になったんだ。曲作りしたり、アルバムのアイディアを出したり、アルバムをまとめたり、色々とやっていたよ。でも6カ月ぐらい経過したところで、クレイジーになったんだ。僕たちはライブを愛してるし、ライブ・バンドだからね。プレイできなくて、全員がクレイジーになっていたよ」




2019年1月に大阪、東京で行われた初の単独来日公演は、今も生々しく記憶に焼きついている。原曲をインプロヴィゼーションで発展させ、観客の熱気と興奮をうなぎ登りに高めていくアプローチは、まさに70年代のハードロック・バンドを彷彿させるものだった。グレタ・ヴァン・フリートは真のライブ・バンドなんだ、と認知した瞬間だった。話を本作に戻すと、2019年に10曲を仕上げ、さらに2020年に新曲2曲を作り上げたという。

「新曲の『The Barbarians』と『Caravel』は同時期に作られたもので、その後にグレッグのスタジオでレコーディングしたんだ。この2曲をレコーディングする時は凄く緊張したことを覚えているよ。グレッグの新しいスタジオで、僕たちは使うのが初めてだったから、どういうサウンドになるかは分からなかったけど、その前のレコーディングの時と同じ意識で臨むと、全てが迅速に進んだ。この2曲が完成して、今回のアルバムのサウンドになったからね」

最新アルバムは「アート作品」

本作『The Battle At Gardens Gate』は全12曲入り(日本盤はボーナス・トラック2曲追加)の内容となった。では、気になるアルバム名はどんな経緯で付けられたのだろう。

「アルバムのタイトルが出る前に、ジョシュが『Stardust Chords』の歌詞を書き終えた。僕はあの曲の歌詞が大好きなんだ。このアルバムのテーマは僕たちが創造している世界で、アルバムを通して僕たちが語るのが好きな神話とかストーリーテリングがある。アルバムが完成した後に僕たちが感じたのは、このアルバムに名前を付けるのは、映画やドラマ・シリーズに名前を付けるようなものだった。だから、そういう大作のような感じがする名前を付けたかったんだ。ジョシュとジェイクがヨーロッパをツアー中にカフェかどこかでそのことを話し合い、ジョシュがこのタイトルを曲の歌詞から思い付いたんだよ。彼がそれを口にした途端に、アルバム全体の核心やテーマを表現する素晴らしいタイトルだと思った。このアルバムはアート作品だからね」



いままでにないリズミックなフレーズを用いた「Stardust Chords」は、ライブ・フィーリングに溢れた1曲だ。ほかにも神秘的なイントロで始まる冒頭曲「Heat Above」、繊細な歌心に感情移入してしまう「Broken Bells」、アコギやピアノを導入したバラード調の「Tears Of Rain」など、前作以降に培った表現力を総動員したナンバーがずらりと並ぶ。特に本編ラストを締め括る「The Weight Of Dreams」は、スリリングなアンサンブルに息を飲む強烈な1曲である。

「これはツアー中にほぼライブで作った曲なんだ。以前に『Black Flag Exposition』という曲名でプレイしてた。僕たちはジャムが大好きで、ライブではその時々で行きたい方向に進むから、何度も同じショウはできないんだ。過去数年のツアーでこの曲を書いて、それをスタジオで成熟させたんだよ」

この曲を含む全12曲をライブで聴ける日を楽しみにしている。またこちらの想像を上回るとんでもないパフォーマンスを魅せてくれるに違いない。グレタ・ヴァン・フリートと同時代に生きる喜びを噛みしめながら、あの”狂熱のライブ”を再び体験したい。





グレタ・ヴァン・フリート
『The Battle At Gardens Gate』
発売中
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日本盤CD購入特典(抽選で直筆サイン・プレゼントなど)詳細:
https://www.universal-music.co.jp/greta-van-fleet/news/2021-03-19/

公式サイト(日本):https://www.universal-music.co.jp/greta-van-fleet/