東京大学(東大)は4月19日、超薄型で柔軟な有機ELと超薄型の有機フォトディテクタ、有機太陽電池を活用することで、外部電源を必要としない自立駆動が可能な皮膚貼り付け型光脈波センサの開発に成功したことを発表した。 東京大学(東大)は4月19日、超薄型で柔軟な有機ELと超薄型の有機フォトディテクタ、有機太陽電池を活用することで、外部電源を必要としない自立駆動が可能な皮膚貼り付け型光脈波センサの開発に成功したことを発表した。

同成果は、東大大学院 工学系研究科 電気系工学専攻の横田知之 准教授、同・甚野裕明 特任研究員(研究当時)、同・染谷隆夫 教授(研究科長兼任)、理化学研究所 開拓研究本部 染谷薄膜素子研究室の福田憲二郎 専任研究員、広島大学大学院 先進理工系科学科の尾坂格 教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

柔軟な有機ELは、曲面ディスプレイや折りたたみ型スマートフォンなどで活用されるようになっているが、近年ではウェアラブルデバイスやヘルスケアに向けたウェアラブル光源への応用も進められており、光による脈拍センサや、血中酸素濃度を計るパルスオキシメーターなどの開発が進められているという。しかし、これまでの超薄型有機EL素子は、十分な大気駆動安定性を持っていないことから、皮膚貼り付け型で連続駆動可能な光脈波センサはまだ実現されていなかったともいう。

そこで研究チームは今回、大気安定な電子注入層と透明電極を組み合わせた逆型構造を持つ有機ELを活用することで、大気駆動安定を実現した超薄型有機ELの開発に成功したという。

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    (上)今回の研究で作製された超薄型の逆型構造有機ELの構造図。(左下)実際に作製された超薄型の逆型構造有機EL。大気中においても明るい発光が確認された。(右下)従来の順型構造との駆動における安定性の比較。順型構造よりも高い大気駆動安定性が示された (出所:東大プレスリリースPDF)

実験では、超薄型基板上へ作製した際も11.7時間の連続駆動後であっても初期の70%の輝度を保持できることが確認されたとする。これは、これまで実現されてきた超薄型有機ELの約3倍の値だという。

さらに、この超薄型有機ELを、超薄型の有機フォトディテクタ、有機太陽電池と集積化させ、太陽電池が発電した電力で駆動する、エナジーハーベスティックな皮膚貼り付け型光脈波センサも開発。いずれの素子も薄く、かつ柔軟であるため、作製された皮膚貼り付け型光脈波センサは、長時間の皮膚貼り付けにおいても装着感が少ない点が特徴だという。

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    太陽電池駆動の皮膚貼り付け型光脈波センサは薄く柔軟で、太陽光発電により外部電源を用いない連続駆動が実現された。(左上)皮膚貼り付け型光脈波センサの有機太陽電池部分の拡大画像。(右上)皮膚貼り付け型光脈波センサのセンサ部分の拡大画像。(下)皮膚貼り付け型光脈波センサ全体の模式図 (出所:東大プレスリリースPDF)

また、太陽光発電による自立駆動のため、外部電源が不要であるため、取り回しも容易で、実際に、人体の皮膚に貼り付けた実験でも、太陽光発電だけで光脈波センサをの駆動させ、77bpmの脈拍計測に成功したとする。

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    (左)超薄型デバイスは薄く柔軟で、皮膚のような複雑な表面にも貼り付けることが可能。(右)超薄型有機太陽電池を用いて、皮膚貼り付け型光脈波センサを駆動させたところ、有機ELを光源として測定された脈波信号を計測することに成功した (出所:東大プレスリリースPDF)

研究チームによると、今回開発された光脈波センサは、装着感の少ない貼り付けができ、さらに太陽光によって、外部電源を必要としない自立駆動が可能であることから、常時装着・連続計測に向けたウェアラブル医療デバイスとして期待できるとしており、日常生活における医療ケア、急激な体調悪化への対策など、従来の医療システムと相補的な医療ケアデバイスとしての活用につながることが考えられるとしている。