ファンドに頼り、ファンドに振り回される東芝

綱川新体制発足も成長戦略が見えず……

 

「当社は新たなる成長過程の入り口に入っている。企業価値の向上により、ステークホルダーの信頼回復につとめたい」

 こう語るのは、東芝の新社長CEO(最高経営責任者)に就任した綱川智氏。東芝は4月14日付で社長CEOだった車谷暢昭氏が辞任し、会長の綱川氏が社長CEOに就任。綱川氏は2016年から昨年まで社長を務めており、2度目の登板となる。

 英投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」から買収提案を受け、混乱が続く東芝。CVCの買収額は2兆円を超える見通しで、東芝の株式非公開化を提案。車谷氏は17年から18年までCVC日本法人の会長を務めており、「利益相反ではないか」と言われていた。

 車谷氏は会見には現れず、「今年1月に東証一部に復帰したことで再生ミッションは完了、天命を果たした」とコメント。

 東芝は2017年以降に債務超過を解消するため、約6千億円の増資を実施。引き受け手となって東芝を救ったのが、「物言う株主(アクティビスト)」だった。その後、取締役選任を巡る株主総会の運営を巡り、筆頭株主でシンガポールの投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」などとの対立も表面化。昨年の総会ではエフィッシモの提案を退けたものの、車谷氏の賛成比率は57・20%に留まり、信任は厚くなかった。

 このため今回の買収提案について、市場では「車谷氏自身が仕掛けた提案ではないか」「非公開化した方が、複数の物言う株主の圧力を回避できる」など、様々な声が上がっている。

 東芝は原子力事業などを抱えており、日本の安全保障にかかわる外資規制の対象になるとして、今後はCVCも日本政府との調整が必要だ。また、水面下では米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)も買収に関心を示しているという。

 ある経営者は「経済と安全保障が密接に絡むようになったということであり、世界的なカネ余りの中で、マネーゲームに揺さぶられるモノづくり国家・日本を象徴している」と語る。

ただ、今の東芝には「成長戦略も見えなければ、固定費の圧縮も十分ではない。事業売却を繰り返し、手元に世界で戦える弾が残っていない」(アナリスト)のも事実。

 もはや企業再生にファンドは欠かせない存在だが、東芝の最大の問題は”経営者不在”ということ。経営の基本軸を欠いた再生は危険だという他ない。