「地方にいながら東京出店」 JR東が「未来の物産展」

百貨店や駅構内の催事スペースなどを使って地方の特産品などが販売される物産展。この物産展の姿が変わるかもしれない。

 JR東日本と同社のコーポレートベンチャーキャピタルであるJR東日本スタートアップ、そしてNTTドコモがVR(仮想現実)空間内での自由移動・体験共有を可能にするソリューションの開発・運営を担うABALと、リアルとバーチャルの空間を掛け合わせた新たな観光・購買・飲食体験を実現する次世代型流通小売りシステムの実証実験に踏み切った。

 JR東日本スタートアップ社長の柴田裕氏は「新しい旅の形をつくりたい。普通の日常が戻った暁にはリアルの青森も旅して欲しい」と強調する。今回の実証実験のポイントはVRと次世代通信規格「5G」通信を活用している点だ。

 JR東京駅の飲食店の中に3㍍四方の特設ブースが設けられ、VR用のゴーグルを付けた来場客は、VR空間内に再現される青森ねぶた祭、弘前城の桜、奥入瀬渓流などの青森県内の観光名所を巡りながら、VR空間内に出てくるご当地グルメなどをその飲食店内で購入することができる。

 コロナで移動が制限される中、顧客の物理的距離を縮めるというメリットもあるが、一方で店舗を出店する側の出店コストも解消できる。例えば、VR空間では遠隔地にいる販売員がリアルタイムで接客する。地元の方言が含まれた生のセールストークを受けながら、来場客は好きな商品をECサイトのように選んで商品カートに入れることができる。出店者は「地方にいながら東京に店舗出店できる」
(ABAL代表取締役の尾小山良哉氏)というわけだ。

 JR東日本はこれまでも首都圏の駅構内で地方の物産展を積極的に開催してきた。しかし、出店者には常に出店コストなどの課題があったという。そこで今回の実験を通じて新たな物産展が展開できれば、これらの課題を解決し、地方の事業者の都心でのビジネス展開のハードルを下げるソリューションとなる。複数の駅をつないだショッピングモールのような展開も可能だ。

 VRや5G通信といった次世代技術が古くから続いている物産展という営業スタイルを変える可能性を秘めている。