きょう16日に放送されるテレビ朝日系『明治ドラマスペシャル ずんずん!』(23:15~ ※一部地域除く)で、16年ぶりにドラマ主演する小堺一機。『ごきげんよう』(フジテレビ)での“お昼の顔”やモノマネのイメージが強いが、NHK大河ドラマ『八重の桜』(13年)への出演など、ドラマ・舞台・ミュージカルでも幅広く活躍している。

今作でささやかな“奇跡”を起こした牛乳配達員・タツさんこと田代龍平を演じる小堺に、芝居のルーツになった人や、今の時代に感じることを聞いた。

  • 小堺一機

    お笑いタレントの小堺一機 撮影:蔦野裕

■ルーツとなった伝説のコメディアンや名優たち

まず小堺は「僕『芝居だからこう』って、ジャンル分けはしてないんです。よく取材でも『トークショー、バラエティ、ミュージカル……それぞれどう取り組んでますか』って聞かれるんですけど、何も変わらない。言葉にするとキザになっちゃうけど、“人前で何かやる”っていう意味で、すべて同じことですから、区別はないんです」と心構えを明かす。

そのうえで「ルーツになったのは出会った方全員ではあるんですけど。記事読んだときに『何で俺の名前出さないんだ』って思われるとね(笑)」と前置きし、出て来たのは「順番で言うと、いわゆるビッグな方というのは、せんだみつおさん、堺正章さん、勝新太郎さん、萩本欽一さん……おひょいさん(藤村俊二さん)とか」と、錚々たるメンバーの名前。

伝説のコメディアンや名優が並ぶが、皆口を揃えて「人の台詞をよく聞きなさい。台詞っていうのは、お前から出るんじゃない。相手に言われたことで出てくるんだから」と小堺に告げたという。「言い方が違うだけで本当に皆同じことを言っていたんですよ。せんださんはこんな感じで……大将(萩本)は……」と、丁寧なモノマネを交えて伝えてくれた。

■芝居はあくまで「周囲と作っていくもの」

人を変え、言葉を変え、何度も受けたその教えは、今もしっかりと根付いている。「相手の台詞を聞いていると、台本で見ていた文字が生きた言葉になる瞬間があるんですよね。だから、自分勝手な事はしない」。小堺にとって芝居は、あくまで周囲と作っていくもの。勝は“一番タチが悪いのは、完璧に役作りをして現場に来る役者”だと提言していたという。

その意図を「たとえば、相手に何かあって『どうしたんだよ』っていう台詞があるとしますよね。『どうしたんだよ!(大声)』って言い方まで自分の中で作り込んで来ちゃうと、相手が『大変なんですよ!(大声)』って来たときはそれでいいんですけど、『大変なんですよ…っ(周囲を注意深く見ながら小声)』って来たときに『どうしたんだよ!(大声)』って言ったらおかしいじゃないですか。これはたとえであって、こんな極端なことは起こらないんだけど(笑)」と、説明し、“余白”を持っておくことの大切さを語った。「そうすると、相手の方の芝居で、自分も想像を超えた芝居ができたりするんです」

今回の現場でも、正にそんな場面が。「『シュークリームはお好きですか?』って台詞があるんですけど、撮影で相手の表情を見たときに、判で押したような質問の仕方じゃなくて、魔法がかかってとてもいい『シュークリームはお好きですか?』が言えたんです。10パターン用意しておいたとしても、本番で違うことができちゃったりすると、とてもうれしい。今回は皆僕より若いけど、共演の方の刺激でそういうことがいっぱいあって、自然に演じることができました」