こんにちは! 科学コミュニケーターの深津です。

春になりましたね! 外で過ごしやすい気候となり、つい、こんな風にみどりに囲まれたいと感じる今日この頃…!

みどりに囲まれたいと思ったら、どこに行けばいいか? すぐに思いつくところとしては公園、また地域によっては並木道や裏山などもあるかもしれません。今回のブログでは、まちの「みどり」について、市民とともに活動された研究者を紹介します。

オンラインイベント「みどりでつくる、人とまち」

「兵庫県立 人と自然の博物館」館長の中瀨勳(なかせ・いさお)先生は、みどり豊かな景観づくりを市民とともに進め、令和2年度の「みどりの学術賞」を受賞されました。未来館では2020年に「みどりでつくる、人とまち」と題して、中瀨先生とオンラインイベントを行いました。

こちらがイベントの様子です。右上の画面に多くの方々が映っていますが、こちらは、兵庫県内で中瀨先生とともに活動されたみなさんです。中瀨先生がオンラインでご登壇されると聞いて、中瀨先生の配信会場(人と自然の博物館)まで応援に駆け付け、イベントにご参加くださったのです。この情景そのものが、中瀨先生のお人柄を表していますね!今回は、集まったみなさんも交えて、座談会のようなかたちでワイワイとイベントを行いました。

市民主体の公園づくり

私たち市民にとって、公園は自然に触れる場であると同時に、憩いの場、遊びの場でもあります。中瀨先生は兵庫県立有馬富士公園にて、市民主体で公園を運営し活動できるよう「運営・計画協議会」をつくり、座長としてご活躍されました。

上空から撮影した、有馬富士公園

有馬富士公園は森に囲まれたのどかな公園なのですが、中瀨先生によると「のどかすぎるからよかったのかもしれません」とのこと。森や溜池といった景観は、市民が行う様々なプログラムを際立てる良い舞台になったというのです。子どもたちの声を取り入れて、鬼の民話をモチーフにした「あそびの王国」をつくったり、さまざまなプログラムを行ったりしたとのことです。

当時、県の職員として有馬富士公園のコーディネーターをしていた小坂真也さんにも、当時の様子をお伺いしました。公園の運営に携わる、県、市、博物館と所属の異なる職員が毎週集まって、盛んに議論がなされたとのこと。また仕事外の飲みの席でも中瀨先生からざっくばらんに叱咤激励やダメ出しをもらい、学ぶことができたといいます。

小坂さん(右上)を交えてお話。おふたりとも笑顔がステキです。

丹波での「地域理解」と「合わせ技」

また、おいしい黒豆で有名な兵庫県丹波地域のまちづくりにも、中瀨先生は関わられました。

丹波では、企業や地域と連携した森づくり、ライフスタイル提言など、さまざまな分野の活動が行われましたが、中瀨先生はご活動の中で「地域理解」という言葉を大切にしてきたといいます。これまでの学問になかった「地域をどう理解していくか」ということについて、中瀨先生は地域に出向いて地域の方の話に耳を傾けるといったフィールドワークを重ねてきました。地域づくりには、数値データなどのいわば「ハード面」だけでなく、人とのつながりといった「ソフト面」も必要だというのが、中瀨先生のお考えです。

丹波の森研究所の門上保雄さんによると、中瀨先生は「合わせ技」という言葉をよく使っていたそう。中瀨先生はなにか事業に取り組む際、「普通にやっても面白くない」と、分野を横断しさまざまなことを合わせて実践をされたそうです。

この考えが、丹波でのユニークな活動につながっているのですね!

中瀨先生(左上)の笑顔にさそわれ、門上さん(右上)も私(右下)も笑顔に!
学びの場となったり、ミュージアムになったり!

一人の市民の思い、専門家とともに大きな活動へ

中瀨先生は、阪神淡路大震災後の復興にも携わりました。周囲の研究者や学生とともに震災でみどりがどのように役立ったのかを調査したり、市民とともに被災者を花と緑で支援したり、専門家としてさまざまな活動をリードされました。

ガレキに花を咲かせる活動でご活躍された阪神グリーンネットの天川佳美さんは、専門家ではなく一市民として活動を始めました。倒れた家々の周りには、植木や鉢植えが残っており、中には「この木を残してやって下さい」という札が下げられた木もあったそうです。それらは住んでいた方々の「必ずここに帰ってくるという意思」の表れだと感じた、そう天川さんはいいます。この言葉を聞いて、私は思わずウルっとしそうになりました。みどりはモノではなく生き物であるからこそ、私たちの思いが込められるのでしょうか。

天川さんから声をかけられた中瀨先生は、専門家としてこの活動を支え、震災で空き地となった場所に花を植える活動にともに取り組まれました。徐々に活動が大きくなり、以後の国内の震災やアメリカでの同時多発テロといったさまざまな被害に遭われた地域を訪ね、花やみどりで元気づける活動にまで発展しました。

天川さんのお話、一言一言が心にしみます。

終わりに

このイベントを通して、中瀨先生はこの30年ほどの間に取り組まれたご活動を振り返ることができたといいます。そして、雪が降る日本海側から太陽がさんさんと降り注ぐ淡路島まで、多様な景観のある「兵庫県で仕事ができて本当によかった」とおっしゃっていました。

私もこのイベントのファシリテーターを務め、まちのみどりの恩恵を改めて感じ、その背景には専門家をはじめとするさまざまな方のご活動があることに感謝の気持ちを抱きました。この思いを胸に、これからも(コロナに気を付けながら)身近なみどりを楽しんでいきたいと思います!

このブログではイベントの一部だけをご紹介しましたが、ご興味をもった方はぜひ以下のアーカイブ動画をご覧ください!

未来館では、今後も「みどり」に関するイベントを実施する予定です。ぜひご注目ください!

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Author
執筆: 深津 美佐紀(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
いろいろなことに心のアンテナが反応!ひとつに決められない!そんな思いで、大学では文系理系の両方が学べそうな教育学部で理科を専門に学びました。大学ではカタバミの研究を行ないました。カタバミはハート型の葉の雑草で、みなさんの身近にも生えているはず!教員経験を経て、未来館へ。趣味は植物散策とトランペット演奏(吹奏楽、ビッグバンド、管弦楽)です。