2021年4月1日、名城大学特別栄誉教授の赤崎勇先生がお亡くなりになりました。92歳でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。

赤崎先生は2014年に、「高輝度で省電力の白色光源を実現可能にした青色発光ダイオードの発明」でノーベル物理学賞を受賞されました。

今では、私たちの身の周りのあらゆるところで、LED(発光ダイオード)は使われています。照明器具はもちろんのこと、大型ディスプレイや電光掲示板、信号灯、液晶画面のバックライトなどなど、さらに近年では、クリスマスなどのイルミネーションにもLEDが使われることが増えています。もはやLEDの光を見ない日はないかと思います。

LEDの特長として、長寿命、消費電力が少ない、発熱が少ないなどが挙げられます。そのため、従来の白熱電球や蛍光灯をLEDの照明に変えることで、大幅な省エネにつながると言われています。また、小型化しやすいことも特長としてあげられ、それによりさまざまな機器への設計の自由度が上がったことも、近年の普及の手助けになっているのかもしれません。

未来館の常設展示でもたくさんのLEDが使われています

しかし、最初からいろんな色のLEDがあったわけではありません。先に赤と緑のLEDがあり、そこに赤崎先生らが青色LEDを発明されたことで、光の三原色(赤・青・緑)が揃い、白を含めたあらゆる色をLEDで作り出すことが可能になったのです。

赤崎先生が研究をされていた当時、青色LEDの材料として、3つの候補がありました。炭化ケイ素(SiC)、セレン化亜鉛(ZnSe)、そして窒化ガリウム(GaN)です。そのうち、ほとんどの研究者は、開発しやすいSiCか、柔らかく加工しやすいZnSeのどちらかを選択していました。GaNはきれいな結晶ができないということで、あまり選ばれなかったのです。しかし赤崎先生は、GaNの持つ壊れにくく、丈夫で安定しているという性質に着目されました。それは、ご自身が「われ一人荒野を行く」とつぶやかれたほど、学会などでも見向きもされなかったそうです。しかし、その中でも研究を進められたことで、今日の私たちの生活を支える青色LEDの発明へとつながったのです。

赤崎先生の研究と青色LEDについては、こちらのブログでも紹介しています
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/201310042013-3.html

さらに、青色LEDの実現にいたる詳しい内容については、こちらのブログをご覧ください
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/201410092014-30.html

未来館では、ご来館いただき、館の活動へのご理解・ご協力をくださったノーベル賞受賞者の方々に対して、「名誉館員」として顕彰し、敬意を表しています。そして常設展示「ノーベルQ」では、名誉館員のみなさまに「来館者にいつまでも考え続けてもらいたい問い」をいただいています。

赤崎先生には2回、2015年と2016年にご来館いただき、問いも記していただきました。

2016年にご来館いただいた時の様子
3階の常設展示「ノーベルQ」のコーナーにある先生からの言葉

「あなたが本当にやりたいことはなんですか?」

これが、赤崎先生からいただいた問いです。

やりたいこと……。一瞬、ハッとさせられる気がします。みなさんはこの問いかけをどのように受け取りますか?

多くの研究者が手を引いていた、GaNを使った青色LEDの研究。世の中の研究の主流を外れながらも、実現できる材料はGaNしかないとお考えになり、挑戦を続けられました。そこにはもしかしたら、青色LEDを開発することで世界を変えたいという、赤崎先生自身の確かなる「やりたいこと」があったのかもしれません。

たくさんの情報が飛び交い、目まぐるしく変化する現代社会。その中で一度立ち止まり、この問いに対する答えを考えてみてはいかがでしょうか。そして、そこからどのような未来が描けるのか、ぜひ考えてみてください。



Author
執筆: 清水 裕士(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
「地球に大変なことが起きている!」そんなイメージから、小学生の頃に環境問題に興味をもちました。ただ、「モノづくりに携わりたい」という好奇心から、電機メーカーでシステム設計に従事。しかしやっぱり環境問題が気になり、その解決のために何ができるかと考える中、科学コミュニケーションに出会いました。「これこそ環境問題を考える上で必要だ!」と思い、未来館へ。