あっせん団体「ベビーライフ」廃業で問題に。特別養子縁組とは?海外に比べ養子制度が浸透しないワケ


生みの親が、事情により育てられない子どもと法的な親子関係を解消し、育ての親(養親)が新たな親子関係を結ぶ「特別養子縁組」。特別養子縁組をあっせんする民間団体「ベビーライフ」が、2020年7月に突然事業を停止したことで、さまざまな問題が明らかになっています。

東京都によると、同団体が2012年~2018年度にあっせんした約300人の子どものうち、半数を超える養親が外国籍であったことが分かりました。また、事業停止に伴い、都は養子らの資料の提出を求めましたが、一部しか引き継がれていないと言います。養子縁組のあっせんは、原則国内となっており、養子の子どもには出自を知る権利があります。

司法統計によると、特別養子縁組は2019年に711件成立しており、成立件数は年々増加していますが、養子を迎えることに積極的な諸外国と比べると、成立数は少ないと言います。

特別養子縁組の制度とはどのようなものでしょうか。また、今回問題となった、海外へのあっせんや出自情報の管理など、今後の課題は。弁護士の半田望さんに聞きました。

特別養子縁組は、実親との法的関係をなくし、養親と新たな親子関係を結ぶため、家庭裁判所の審判が必要。日本では「養子は家を継ぐため」という価値観が根強く残り、差別や偏見にもつながっているため、まずは制度を正しく理解することが大切

Q: 特別養子縁組とはどのような仕組みですか?普通養子縁組や里親との違いは?
--------

<特別養子縁組>
実の(生みの)親と法律上の親子関係を解消し、養親と新たな親子関係を結ぶものです。戸籍上も「長男」「長女」と、実の親子と同様に記載されます。また、一度結ばれた養親との親子関係は原則解消できません。そのため、養親の年齢制限(※上記表参照)など、普通養子縁組と比べ厳しい条件を設けています。さらに縁組の可否も家庭裁判所により、慎重に判断されます。

<普通養子縁組>
実の親との法的な親子関係が残ります。戸籍上は、実父母と養父母の双方の氏名が記され、「養子」「養女」と記載されます。相続権も、実父母、養父母の両方に対してあります。

<里親>
児童相談所から委託された子どもを、実の親に代わり、一定期間預かって育てる制度で、養子縁組とは異なります。子どもと里親に法的な親子関係はありません。

Q:養子縁組に関する法律は、近年改正されています。それぞれ改正のポイントを教えてください。
--------
社会問題になっている子どもの虐待等の対策の一つとして、特別養子縁組の年齢要件を緩和した民法等の改正が2020年4月に施行されました。

改正の主なポイントは、次の通りです。
①養子となる子どもの年齢の上限を、原則6歳未満から原則15歳未満へ引き上げ
これまでは幼児期の方が養親との親子関係の形成が容易であるとの理由から、養子となる子の年齢が原則として6歳未満とされていましたが、虐待等により児童施設に保護されている児童などについて、6歳以上でも特別養子を利用して新たな親子関係の下で生育することが望ましい場合があることをふまえ、年齢の幅を広げました。

②家庭裁判所による手続きが二段階に
これまで並行して行われてきた実親の同意などの確認と、試験養育期間を二段階に分けました。また、試験養育の途中で実親の同意が撤回され不成立となる事例も多かったことから、同意の申立て後2週間経過すると撤回不可となりました。

民法のほか、「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(特別養子縁組あっせん児童保護法)」も、2018年4月に改正されています。

目的は、一部の事業者による営利目的のあっせんや不正なあっせんなどを防ぐことです。これまでの届け出制から都道府県による許可制になり、無許可や不当行為を続ける事業者に、罰則や許可取り消しの措置をとれるようにしました。

Q: 実際に、特別養子縁組を希望する場合は、どのような手続きが必要ですか?
--------
虐待を受けた子どもの保護などを行う児童相談所からのあっせんか、事情により望まない出産をせざるを得ない女性の支援などを行う民間のあっせん団体に登録して紹介を受けるケースが多いようです。あっせん機関を通さず、養親希望者が直接家庭裁判所に申立てを行うこともできます。民間団体では、登録時に、養親向けの研修を設けているところもあるようです。

前述のように、家庭裁判所での手続きは二段階に分かれます。

まず、第一段階として、養子となる者について「特別養子の適格確認の申立」が必要です。ここでは、実父母が養育できない具体的な事情や、親子関係を解消することに同意するかどうかを確認します。

その上で、第二段階として、「特別養子縁組成立の申立」を行います。申立を受けて6カ月以上の「試験養育期間」が設けられ、養親として適正があるかどうかの審判が行われます。適正は子どもの利益を第一に考え、養子との相性のほか、夫婦の収入や職業、他の子や同居家族の有無、住宅事情など、生活が安定しているかどうかも判断基準となります。

手続きにかかる費用は、養子縁組児童保護法に基づき、手数料として厚生労働省令に定められています。

Q:日本国籍で生まれた子どもが、海外籍の親と養子縁組されるのは、どのような場合が考えられますか?ベビーライフによる海外へのあっせんに、問題はなかったのでしょうか?
--------
特別養子縁組あっせん児童保護法第3条で、「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんは、可能な限り日本国内において児童が養育されることとなるよう行われなければならない」と定められていますが、海外籍の親との養子縁組を禁止する法的規制はありません。

日本も批准している「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」21条では、「児童がその出身国内において里親もしくは養家に託されまたは適切な方法で監護を受けることができない場合には、これに代わる児童の監護の手段として国際的な養子縁組を考慮することができる」と認めています。そのため、海外籍の養親から受け入れの希望があれば、国際養子縁組を進めることができます。

ただし、「法の適用に関する通則法」第31条で、「養子縁組は縁組当時の養親となるべき者の本国法による」ことが原則とされますが「養子となるべき者の本国法によればその者もしくは第三者の承諾もしくは同意または公の機関の許可その他の処分が必要であるときは、その要件も備えなければならない」と規定されており、日本国籍の子を外国籍の親の養子とするためには、養親の国の法律による手続きのほか、日本法(民法)所定の手続きが必要となります。

報道によると、「ベビーライフ」があっせんした海外の受け入れ先は、カナダやアメリカが多かったようです。

もともと欧米では、富裕層や社会的地位のある者が社会福祉活動の一環として積極的に養子を受け入れる文化があり、国内よりも養親希望者が多く、受け入れ先が探しやすかった可能性が考えられます。

ただ、国際養子縁組には、「人身売買となる可能性」や「文化や言葉の違いをケアできるか」など、難しさも指摘されています。

Q:「ベビーライフ」は2020年7月の廃業後、養子縁組した子どもの情報の一部を東京都に引き継がないままと言います。懸念される問題点や今後考えられる対策はありますか?
--------
「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」の第7条に、「できる限りその父母を知る」権利があると定められており、養子縁組をした子どもには「出自について知る権利」があります。将来、「自分がどのように生まれたのか」「生みの親は誰か」などを知りたい場合に、その記録などを知ることができない可能性がある点が問題です。

ただ、出自などの情報は、複雑な事情がある場合が多く、プライバシー保護の問題に関わります。子どもは出自を知る権利があるとはいえ、どれだけの情報をどのように伝えるかはケースバイケースです。

例えば、「性暴力被害によって生まれた」「赤ちゃんポストに預けられ、実父母をたどることができない」など、さまざまなケースが考えられます。養親が子どもの利益のために適切に情報を管理できる場合もありますが、後々の親子関係に影響する可能性もあるため、無条件で養親にすべての情報を託すことにも不安が残ります。

戸籍上にも残らない実親の情報などは、プライバシー保護の観点から見ると、本来、第三者が永続的に持っておくべきものではないと考えます。登録データは一定期間を経て抹消されるべきで、行政が一元管理する方法にもリスクが伴います。子どもの出自に関する情報管理については、まだ多くの議論が必要でしょう。

Q: 国際的にみて、日本で養子縁組の利用が積極的に進んでいるとは言えません。特別養子縁組制度の課題とは。
--------
「家制度」が重視されていた日本では、江戸時代の大名や将軍家のように、歴史的にも「家を継がせる」「家の存続」のために、養子をとるという価値観が根強く残っています。

生まれたばかりの乳幼児を引き取り、養子縁組をせずに実の子どもとして虚偽の届け出を行う「藁の上の養子」も、昭和の終わりごろまで行われていました。特別養子縁組はこのような慣行を脱却し、要保護児童の救済を目的として、1987年に創設されました。それまで、「家のため」であった養子について「子どもの利益」を守る制度としての意味合いが加えられたと言えます。

それから数十年が経ち、時代が変わったとはいえ、もともと「家」という概念が薄く、個人が尊重されるアメリカやカナダとは違い、日本での養子に対するイメージをすぐに変えることは難しいでしょう。また、要保護児童の救済という特別養子制度の趣旨も十分に理解されているとは言い難い状況です。
実際に、特別養子縁組の成立件数は約700件と、普通養子縁組の年間約8万件に比べると圧倒的に少なく、徐々に認知度が高まっている里親制度についても、里親に登録する人は少ないようです。

近年、虐待を受け、乳児院や児童養護施設などで暮らす子どもが増えており、実親の元に戻せなくても、円満な家庭での養育が望ましい子どもは数多くいます。

まずは、養親を希望する人だけでなく、誰もが特別養子縁組制度をきちんと理解し、養子に対する偏見や差別をなくしていくことが、大切なのではないでしょうか。制度についての正しい情報が社会で広く知られるようになれば、あっせん団体による不正や悪用などを防ぐことにもつながります。

また、特別養子縁組は、養う親のための制度ではないということも改めて知ってほしいですね。

例えば「子どもが授からないから」と養子を迎えたものの、親子関係がうまくいかなくなったというケースも聞かれます。あくまで養子になる子ども自身の利益や健やかな成育を尊重するために、制度の利用が広がることが期待されます。

(半田 望:弁護士)