2020年9月10日、立飛ホールディングスはNTTe-Sports、NTT東日本とともに「立川eスポーツプロジェクト」の推進に向けた連携協定を締結した。eスポーツの注目が年々高まる中、このプロジェクトが目指すものとは? 立飛ホールディングス総務部のみなさんに聞いた。

  • (左から)立飛ホールディングス 総務部 総務課 鈴木裕也氏、新藤真子氏、後藤孝輔氏 ※オンライン取材のため画像は立飛ホールディングスより提供

立飛ホールディングスとは?

戦前、飛行機を製造していた立飛(たちひ)ホールディングスは、立川飛行機を前身とする不動産(賃貸・開発)会社だ。JR東日本・立川駅至近に再開発したGREEN SPRINGS内に多機能ホール「TACHIKAWA STAGE GARDEN」、多摩モノレールの立飛駅至近に 「アリーナ立川立飛」「ドーム立川立飛」などを続々と建設しており、さまざまな演劇や音楽、スポーツなどのイベントで利用されている。

近年は、地域社会とスポーツへの貢献に力を入れており、立川に文化を根付かせることを目的としてさまざまな事業や支援を行っている。

同社は2020年9月10日、NTTe-Sports、NTT東日本とともに「立川eスポーツプロジェクト」の推進に向けた連携協定を締結した。eスポーツ事業に参入した狙いはどのような点にあったのだろうか。eスポーツ事業を担当する、立飛ホールディングス 総務部 総務課の後藤孝輔氏、新藤真子氏、鈴木裕也氏にお話を伺ってみたい。

連携協定が結ばれた経緯

今回の「立川eスポーツプロジェクト」の推進に向けた連携協定の始まりは、立飛ホールディングスが自社の保有施設を活かして、eスポーツを核とした地域活性化を目指そうと考えたことにある。

「当社はまもなく創立100周年を迎えるのですが、地域貢献に大きく舵を切ったのはここ10年ぐらいであり、地元での評価はまだ決して高いとは言えません。eスポーツを通じて立川市での認知度を上げ、ひいては立川市を盛り上げ、そして立川の都市格を上げたいという想いがあります」(後藤氏)。

そんな中、2019年9月に「アリーナ立川立飛」において、 MOBA(Multiplayer online battle arena)ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」の国内プロリーグ決勝大会「LJL 2019 Summer Sprit Finals」の開催が決定する。

この大会の開催に向けてNTT東日本が技術協賛で参画したことをきっかけに、立飛ホールディングスは新たな地域活性化の取り組みとしてeスポーツの活用に着目。さらに、2020年1月にはNTTグループのeスポーツ分野における新会社、NTTe-Sportsが発足し、3社で協業の検討が進められた。

  • 「立川eスポーツプロジェクト」立ち上げの経緯について語る後藤氏

「立川eスポーツプロジェクト」に参加した企業の役割

「立川eスポーツプロジェクト」においては、立飛ホールディングスが保有施設を活用した各種取り組みの推進を、NTT東日本がICT・IoTに関する先進的技術と地域密着型の営業活動を、NTTe-Sportsがeスポーツ関連のノウハウとアライアンスを活用したイベント開催および全国に向けた情報発信を担当する。

「NTT東日本グループさまには、我々の課題や企業としての強みを理解していただいておりましたので、早期にプロジェクトを始動させることができました。当社は多機能ホールや多目的アリーナを保有しており、そしてeスポーツを通じた地域の活性化というテーマをはじめから掲げておりましたので、滑り出しは順調です」(後藤氏)。

今後はさらに大規模なイベントの開催や、将来的なeスポーツ文化の醸成に向けた練習拠点の開設、地域企業や学校のeスポーツクラブ支援なども検討しているという。現段階で、すでに2021年6月・10月にeスポーツイベントの開催を予定しているそうだ。

「当社保有施設ではプロバスケットボールの試合などが開催されておりますが、その際は主催者様に施設を貸し出し、運営までお任せする形でした。しかし、これから始めようとしているeスポーツでは、自分たちの手で一から大会を作り上げていきます。いろいろな課題が出てくると思いますので、NTT東日本グループさまにバックアップをいただきながら進めていきます」(後藤氏)。

チーム「NEXUS TACHIHI」の立ち上げ

この連携協定と併せて、立飛ホールディングスではeスポーツチーム「NEXUS TACHIHI」も立ち上げたという。「APEX Legends」「ストリートファイターV」「ぷよぷよ」「スプラトゥーン」「実況パワフルプロ野球」「ウイニングイレブン」「グランツーリスモ」「クラッシュ・ロワイヤル」「ブロスタ」といった9タイトルに対してチームを編成しており、社内公募で集められたメンバーが各チームに4~5人在籍しているそうだ。

  • 立飛ホールディングス社内にあるeスポーツルーム

「eスポーツチームの立ち上げには、社内全体をこのeスポーツの波に巻き込んでいきたいという想いがありました。部署も年齢も性別も問わず、さまざまなメンバーが参加してくれたので、いままでにない交流も発生しています。この『NEXUS TACHIHI』をきっかけに、eスポーツがもっと社内に広まれば良いなと思っています」(新藤氏)。

同社が2020年末に社内で行ったアンケート調査では、約3割の社員が「eスポーツに興味がある」と回答したという。eスポーツによって社員間のコミュニケーションも増え、事業展開に留まらない効果も現れているようだ。

  • 新藤氏は、e-Sportチームの立ち上げで社内の雰囲気も変わったと話す

「『立川eスポーツプロジェクト』推進に向けた連携協定締結が報道発表されたことで、社内のみならず、社外からの問い合わせもずいぶん増えました。少しずつではありますが、当社の取り組みが世の中に広まっているんだなと感じます」(新藤氏)。

一方で、プロジェクトが始動してから新たな課題も見えてきたという。

「企画・運営面での我々の力不足を感じています。現時点ではNTT東日本さまと連携を組み、そのノウハウをお借りしながらeスポーツ事業に携わっています。当社だけでは企画・運営面すべてを担うのは厳しいというのが現状です」(鈴木氏)。

  • 連結協定締結後に企画・運営面での力不足が見えてきたと話す鈴木氏

「本年6月・10月にNTT東日本さまとともに大会を開く予定です。そういったイベントを通じて経験を重ね、ノウハウを習得し、いつかは当社単独でもイベントを開催できるようになりたいと思っています」(後藤氏)。

立川eスポーツプロジェクトメンバーの親密な関係性

現在、この「立川eスポーツプロジェクト」に関わっているコアメンバーは立飛ホールディングス3名、NTT東日本2名、NTTe-Sports2名の計7名だという。メンバーはそれぞれ年齢が近く、コミュニケーションも密に行えているそうだ。連絡のやりとりには、ゲーマー向けとして生まれたチャットツール「Discord」が利用されているそうで、こういった点からも年代や親密さが窺える。

「仕事中でも、業務時間外でも、ちょっとした疑問や考えなどを『Discord』で瞬時に展開しています。そして、それに対して素早いレスポンスもいただけています。NTT東日本さまとは非常に良い関係が築けているのではないかなと感じます」(後藤氏)。

後藤氏、新藤氏、鈴木氏の3名は「ブロスタ」でチームを組んでプレイしているそうで、NTT東日本グループの同タイトルのプレイが上手なメンバーからアドバイスをもらうこともあるという。

  • プロジェクトメンバーはもちろんのこと、社内でもeスポーツへの理解が広がっている

NTT東日本への期待と立川・多摩地区への貢献

「立川eスポーツプロジェクト」は気軽に情報交換ができる関係を築いているが、立飛ホールディングスはこれからのNTT東日本グループにどのような発展を期待しているのだろうか。

「大会の運営にあたっては、回線の安定化が重要です。とくに現在はコロナ禍で対面での試合が行いにくい状況にあります。NTT東日本さまが持つ大容量・高速通信をふんだんに活かしていただいて、日本全国の方に、将来は全世界の方に見ていただけるような大会が開催できるよう、ICT技術のさらなる発展に期待しています」(後藤氏)。

さらに「立川eスポーツプロジェクト」を通じて立飛ホールディングスが目指す地域活性、そしてこれからのeスポーツへの期待についても触れた。

「これからの立川にもっと注目してほしいと思います。6月・10月に行う大会を、立川におけるお祭りのような存在になるまで盛り上げて、『立川では毎年、eスポーツの大会が開催される』ということが浸透するとうれしいですね」(新藤氏)。

「最終的には、立川をeスポーツの聖地にしたいという想いがあります。欲を言えば、我々の『NEXUS TACHIHI』がそこで活躍してくれれば、それに勝ることはありません。これからの世代は、eスポーツが当たり前にある環境で育ってきます。将来的にはオリンピックの種目にも選出されると私は思いますし、年齢・性別・言語・身体的なハンディキャップなどを超えた、新しいスポーツの形になるのではないでしょうか」(後藤氏)。

eスポーツを通じてつながりを持ちたい

eスポーツ、そして立川・多摩地区の発展に向けて取り組みを進める立飛ホールディングスとNTT東日本グループ。最後に後藤氏は、この記事を読む方に次のようなメッセージを送った。

「eスポーツに取り組んでいる地域企業や自治体、教育機関などともっとつながりを持ちたいと考えています。日本においてeスポーツはまだまだ発展途上で、みなさま、それぞれの立場でいろいろな課題をお持ちだと思います。そういった課題を持ち寄って、解決策などを情報交換したいですね。もちろん、eスポーツチームの練習相手としても大歓迎です」(後藤氏)。