リーマンサット・プロジェクト(rsp.)の超小型衛星「RSP-01」(愛称:Selfie-sh)が3月14日20:20頃(日本時間)、国際宇宙ステーション(ISS)より放出された。衛星はその後、21時すぎに日本上空を初めて通過。ここで地上局が電波の受信に成功し、放出後の衛星が軌道上で動作していることが確認できた。

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    放出の瞬間。4機まとめて放出されたためくっついて見えるが、最後尾(右側)がRSP-01だ。イメージカラーであるデザインワッシャの青色が特徴的 (C)JAXA/NASA

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    電波を初めて受信した瞬間。rsp.の運用メンバーが見守る中、衛星からのCWビーコン(モールス信号)が確認され、地上局は歓喜に包まれた (C)rsp.

rsp.は、趣味で宇宙開発を行っている異色の民間団体。2018年に打ち上げた試験機「RSP-00」は電波が確認できず、rsp.としては2機目での初成功となった。実際に軌道上で動いた衛星を開発できたことで、「趣味」の世界に新たな1ページを刻んだと言えるだろう。

放出時の動画。この30分22秒あたりで、4機(GuaraniSat-1、Maya-2、Tsuru、RSP-01)まとめて放出された瞬間を見ることができる

地上局でこの瞬間を見届けたプロジェクトマネージャの三井龍一氏は、「高度400kmへの道のりは遠く、大変だったなと素直に思いました」とコメント。「rsp.の立ち上げからは7年。山あり、谷あり、何度も壁にぶつかってきたけど、ここまで来たことを改めて誇りに感じました。本当に仲間たちのおかげ」と、メンバーに感謝した。

RSP-01は放出後、すぐに電源が投入され、タイマーにより、30分後にアンテナ3本(送信×2、受信×1)を展開し、CWビーコン(モールス信号)を出し始める予定だった。地上局で電波が確認できたことで、このシーケンスは完了した可能性が高い。

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    RSP-01は、1Uサイズ(10cm立方)のキューブサットだ (C)rsp.

ここまでは衛星の自律動作なのだが、次のステップに進むためには、地上からAFSK方式のコマンドを送り、衛星からGMSK方式のデータを受信するという、双方向通信を確立する必要がある。ただこれまでのところ、通信できるタイミングで衛星にコマンドを送っているものの、まだ衛星側からの反応は得られていないという(3月20日時点の情報)。

どこで問題が起きているのか。原因はまだ特定できていないものの、考えられる可能性としては、以下の3つがある。

  • (1)衛星にコマンドが通っていない
  • (2)コマンドは通っているが衛星が反応していない
  • (3)衛星は送信しているが地上側で受信できていない

このうち、(1)については可能性が低いと見られている。RSP-01は、コマンドを24時間受信しないと停波する仕様になっているのだが、放出の24時間後以降もCWビーコンが確認できていた。そのため、少なくともどこかでコマンドは通っていた可能性が高い。なお、地上側の送信機の出力が低下していた問題もあったが、これはすでに対処済み。

CWビーコンの受信報告はこちらで見ることができる。

原因については、今後さらに調べていく。RSP-01の送信機は冗長構成になっており、今まではメイン側を使っていたのだが、サブ側に切り替えることを試す。そのほか、地上側の受信感度を上げるための機器の増強も考えているそうだ。

RSP-01の紹介動画。この33秒あたりでは、アームを出し入れする様子も見える

RSP-01のメインミッションである“自撮り”を実現するためには、双方向通信の確立が不可欠。なんとかトラブルを解決して欲しいところだが、同衛星の最新情報については、公式サイトやTwitterアカウントなどを参照して欲しい。