オランダの独立系研究機関TNO傘下でプリンテッド・フレキシブルエレクトロニクスの研究機関であるHolst Centreから、3D構造全固体電池メーカーとしてLionVolt がスピンオフしたことが明らかとなった。

過去5年にわたって研究が進められてきた3D構造化技術に基づき、革新的な全固体電池の開発を加速させるためだとしている。

Holst CenterのマネージングディレクターであるTon van Mol氏は、「自動車産業のエレクトロニクス化とワイヤレス通信機器の成長のため、欧州ならびにオランダが独自の電池製造技術にアクセスし、アジアメーカーへの依存度を下げることが戦略的に重要である。私たちはLionVoltの立ち上げを通じ、欧州のバッテリー・エコシステムの強さと、未来の車載電池メーカーの主要なプレーヤーとして、オランダの地位向上に貢献していきたい」と抱負を述べている。

LionVoltが開発する新しい電池は、3D構造化技術と固体機能層に基づいており、現在使用されているリチウムイオン2次電池と比較して、「3D固体機能薄膜」電池は軽量かつ安全であり、急速な再充電が可能で、より高いエネルギー密度を持ち、製品寿命も長いのが特徴だとしている。

具体的には、数十億おいう柱構造体を機能性材料の薄層で覆い、大きな表面積と両電極間の距離が短い3D構造を作成することで実現するという。リチウムイオンは短い距離を移動するだけで済むため、充電時間と放電時間の短縮が可能になるという。

すでに同社では、2020年12月に全固体3D薄膜電池の概念実証を完了させており、新型電池の製造が可能な状況にあるという。

LionVoltのCTOであるSandeep Unnikrishnan氏は、「電池産業は、2025年までに現状の5倍の1370億ドルを超える産業になるとされている。これは、主に電気自動車などのアプリケーションによって推進される見込みである。我々の新しい3D全固体電池は、競争力のあるコストで、より安全かつより高いパフォーマンスを提供する。エネルギー密度だけで言えば、LionVoltは現在入手可能なものより、少なくとも3倍優れた電池を実現する」と述べている。

なお同社では、自動車に搭載される前段階として、ウェアラブル領域のスマートテクノロジー製品への搭載が期待されるとしており、小型の電池からスタートし、大型化を進めていくことで、自動車をはじめとするさまざまな市場への適用を進め、オランダにおける経済活動の活発化と雇用の創出につなげたいとしている。

  • 全固体3D薄膜電池

    LionVoltの全固体3D薄膜電池の構造イメージ (出所:TNO)