東京大学、日本能率協会マネジメントセンター、NTTデータ経営研究所の3者が3月19日に発表した、共同で実施した行動実験とfMRI(機能的磁気共鳴画像法)実験結果から、スケジュールなどを書き留める際に使用するメディア(紙の手帳や、スマートフォンなどの電子機器)によって、記銘(記憶の定着)に要する時間が異なり、想起(記憶の再生)において成績や脳活動に差が生じることが判明した。

同実験では、参加者を手帳群・タブレット群・スマホ群という3群に分け、これら3つのメディアを使って具体的なスケジュールを書き留める課題を行った。手帳とタブレットでは見開きの大きさを等しくし、どちらも手書きのペンを使用。その後、そのスケジュールの内容について想起して解答する課題をMRI装置内で実施したとしている。

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その結果、手帳群では他の群よりも短時間で記銘を終えており、それでも記銘した内容に関する想起課題の正答率(全問の平均)には3群で差が見られなかったことから、手帳群は短時間で要領よく記銘できていたことが分かったという。また、一定の直接的な設問についての成績では、手帳群の方がタブレット群よりも高いという結果が示されたとしている。

また、この想起課題を行っている時の脳活動をfMRIで測定したところ、言語処理に関連した前頭葉や、記憶処理に関係する海馬に加えて、視覚を司る領域でも活動上昇が観察されたという。このことから、言語化・記憶の想起・視覚的イメージといった脳メカニズムが関与すると言えるとのこと。

さらに、これらの領域の脳活動は、手帳群が他の群よりも高くなることが定量的に確かめられたとしている。このことは、記銘時に紙の手帳を使うことで、電子機器を用いた場合よりも一層豊富で深い記憶情報を取得できることを示唆しているとのことだ。

3者は、同実験結果を踏まえると、日常生活において、紙の製品と電子機器を目的に応じて使い分けることによって、より効果的な利用につながることが期待されると説明する。特に教育やビジネスなどにおいて、経費削減・効率化を重視して使用メディアのデジタル化が進んでいるが、あえて紙のノートや手帳などを用いることで、本来求めるべき成果を最大化させることができるとのことだ。