TrendForceによると、DRAM市場は2021年第1四半期に周期的な好転期に入ったという事実を踏まえ、DRAMサプライヤ各社は特殊DRAM製品の見積価格の引き上げを行ったという。

2021年2月の特殊DRAM製品の契約価格を前月比でみると、DDR2およびDDR3が大きく値上げしており、DDR3チップの相場が上昇した影響から、DDR4チップの価格も上昇。特殊DRAMのメインであるDDR3 4Gビットチップの平均契約価格は前月比6.8%増となったという。また、主に台湾DRAMサプライヤが手掛けるDDR3 2GビットチップについてTrendForceでは、見積もり額が提示されているものの、十分な供給がなされていないことを確認しているという。

こうした供給不足が当たり前の状況となっていることから、DDR3 2Gビットチップの2月の平均契約価格は前月比で約9%の上昇となったほか、Samsung ElectronicsがDDR3チップ価格の値上がりを踏まえ、DDR4 4Gビットチップの見積もり額を引き上げており、その結果、特殊用途向けDDR4 4Gビットチップの平均価格は同約6%上昇、DDR4 8Gビットチップの平均価格も約4%上昇となったという。

ただし、これは主に月次契約の価格の動きで、ティア1クライアントのような四半期ごとの大口契約の価格は安定していたという。

  • 特殊DRAM平均販売価格

    2020年2月における特殊DRAM平均販売価格の前月比上昇率 (出所:TrendForce)

利益率でDDR4を上回るDDR3に振り回されるDRAM各社

特殊DRAMの需要が高まりを見せる中、DDR3の利益率がDDR4やロジックICを上回り始めているという。その結果、DRAMサプライヤ各社も戦略を変更しようとしている。例えばSamsungでは、長期的にDRAMからCMOSイメージセンサにシフトし続けてきたLine 13の生産能力をここにきて縮小しているという。また、SK Hynixも2020年に古いファブであるM10のDRAM生産能力を削減したが、2021年は比較的一定の規模を保とうとしている。

さらにMicronに関しては、1Z-nmおよび1α-nmプロセスの歩留まりを向上させるため、高度な技術に基づくこれらの製品の生産数量を徐々に拡大させる一方、20nm以上の成熟したプロセスを台湾から米国のFab6に移転しようとしている。この大手3社のDDR3 DRAMの生産量は今後も引き続き減少していくが、その減少ペースは当初の予想よりも遅くなっているという。

一方の台湾勢は、Nanyaが20nm/30nm DRAMの生産品目をDDR4からDDR3へと戻す動きを見せているという。また近年、フラッシュメモリに注力してきたWinbondは、高雄の新工場が完成するまでDRAM生産能力は限られたままの状態が続くが、そうした状況においてもDRAMの生産を1Gビット/2GビットのDDR2ならびにDDR3に集中させている模様である。そしてロジックICのファウンドリに注力してきたPowerchip Semiconductor Manufacturing(PSMC)は、DDR3の価格上昇を受け、ウェハの生産能力の一部をDRAMに戻そうという動きを見せているという。

このように各社ともに特殊DRAMの生産を強化しようとしているが、TrendForceでは少なくとも2021年上半期中は供給不足が続くものとの見方を示している。