こんにちは。科学コミュニケーターの竹下あすかです。
2/10から3/6まで毎週水曜と土曜の週2回、ニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ~だからプロに聞いてみよう2021春~」を放送していました。
このブログでは私がはじめてファシリテーターを務めた3/3(水)の放送回を振り返ります。

2/13 23:08に福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生しました。その後の報道で避難所となった建物の中にテントが設置されている様子をご覧になった方も多いのではないでしょうか。新型コロナの流行以前とは災害避難の様子が変わっているようです。そこで、毎回出演いただいている感染対策のプロ・堀成美さんとコロナ禍の災害対策は何が変わったのか、私たちは何ができるのか考えてみました。

災害への備えどうする?

災害が発生を想定して準備をしてくれているのが、皆さんがお住まいの自治体です。
新型コロナが登場する前から、避難所での感染対策というのはありました。昨今の状況を受けて、各自治体では感染症の流行に対応した備蓄をさらに行い、避難所の運営の訓練を実施しています。例えば、感染の疑いがある方を隔離するために、避難所に入る際に健康チェックを実施します。避難者同士の距離を保つために、テープでの区分けやパーテーションの設置も行われます。

個人でできる準備にはどんなものがあるのでしょうか。
番組の中では奈良県庁のHPを参照しながら防災グッズの確認を行いました。

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すぐに集められる防災グッズ。奈良県庁HP(http://www.pref.nara.jp/secure/229520/coronabitiku.pdf)より引用させていただきました。

感染症対策に使うもの(赤下線のもの)

タオルやてぬぐい
ウェットティッシュ/おしりふき
ビニール袋(大・小)
マスク
手指消毒剤
体温計
うわ履き

感染症対策として普段から持ち歩いているものもあれば、避難生活で必要そうだけど感染症対策なの?というものもあります。堀さんからのアドバイスは「これらは自治体でも用意はしているけれど、避難時には個人でも持ってきてもらいたいものとして読むとわかりやすい」というもの。災害時には物流が止まり、必要な物がすぐに手に入らないこともあります。マスクがなかったら、ビニール袋がなくなったら…。物品が足りなくなれば十分な感染症対策ができなくなってしまうことに加えて、不安や不満も私たちの心に生まれます。

すでにお気づきかもしれませんが、密を作らないこと、マスクを着用することなど新型コロナ対策の基本的な考えに災害時も平時も違いはありません。しかし、災害時には私たちがすでに不安な状態になっているということを忘れてはいけません。不安になっているとちょっとしたことでイライラしてしまったり、他者につい多くの要求をしてしまいがちになります。イライラしている人を見ると自分も落ち着かない気持ちになって、さらに不安や不満は広がってしまいます。事前の備えをしておくことで、物が足りなくて生まれる不安や不満を防ぎ、落ち着いて過ごすことができます。

新型コロナ対策だけで大丈夫?

コロナ禍では感染症対策をふまえた災害対策が定番となりそうです。
新型コロナが流行する以前から、災害時の感染症の流行は問題となっておりました。これからは新型コロナを意識して、感染症対策を行うから安心なのでしょうか?決してそんなことはありません。

新型コロナでは人から人への感染を警戒しています。しかし、感染症の中には環境から人にうつるものもあります。災害に巻き込まれてけがをしたときに傷口から感染するかもしれない。がれきの片付け作業で粉塵を吸い込むことで感染するかもしれない。食べ物から感染するかもしれない。気をつけなければいけない感染症はたくさんあります。

環境から人にうつる感染症の例。

では人から人にうつる感染症ならば、新型コロナと同じ対策で十分なのでしょうか。
残念ながら、新型コロナ対策でよく使用されるアルコール消毒の効果が薄いウイルスがいます。

新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスはエンベロープと呼ばれる脂質の膜に包まれた構造をしています。アルコールはエンベロープを破壊しウイルスの構造を壊すことができます。一方でノロウイルスやロタウイルスなどは、元々エンベロープを持たないウイルスです。そのためアルコール消毒の効果が薄くなってしまうのです。

ウイルスの構造図。エンベロープという脂質の膜の有無がポイントです。

じゃあどうすればいいの?と思った方、ご安心ください。石鹸を使った手洗いで、手についたウイルスを落とすことができます。ただ、災害時にはライフラインが止まって水を流しながら手洗いできないときもあります。そんなときはこちらを参考にして、アルコール消毒を丁寧に実施してください。

流水で手洗いできない場合の手指消毒について(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00346.html

※ノロウイルスやロタウイルスにも有効な次亜塩素酸ナトリウムの消毒液は、人体には使えませんので注意してください。

堀さんからは、災害時にはできない感染症対策は、平時のうちにやっておくというお話がありました。平時にはできるけど、災害時にできない感染症対策のひとつがワクチン接種です。過去に避難所で水ぼうそうが広まったことがあったそうです。水ぼうそうにはワクチンがありますが、災害により物流が止まったり、保管用の冷蔵庫が使えなくなったりすればワクチンを接種することはできません。また、ワクチンを打ってもすぐ次の日から免疫が得られるわけでもありません。「やっておけばよかった」と後悔しないように、平時にできることにも注目です。

いま災害が起きたらどうする?

災害が起きる前に、こんなことがあるかも?あんなことがあるかも?と様々な想定をすることが大切だと堀さんは話します。
「コロナ禍で避難所に行ったら?」「自宅療養中に災害が起きたら?」そんな想定のもと災害への備えは進められています。実際に、自治体では新型コロナに感染した人が避難することも想定しています。そのうえで、避難所の運営の方法が考えられ、訓練が行われています。浸水の恐れがある、自宅が損壊しているなど、自身の居場所が危険だと思ったら命を守るために迷いなく避難しましょう。
ただ、避難所に行くことだけが避難ではありません。安全を確保できるのであれば、自宅にとどまる在宅避難もできます。台風のように接近が事前にわかっている場合には、安全な立地の親戚・知人宅に身を寄せる、頑丈な建物に宿泊するなどの手段があります。実際、昨年の台風10号のときには、このような用途でホテルを利用した人もみられました。

災害の備えが新型コロナの備えにもなる

番組の後半ではもし自宅療養になったら?という話題をお届けしました。災害に備える準備としての食料の備蓄などは、新型コロナに感染してしまって自宅療養になっても安心かもしれません。視聴者の皆様から自宅でできる備蓄について素敵なアイデアをいただくことができました。

パスタソースの活用の他、ゼリーの備蓄もおすすめいただきました。

ぜひ、放送のアーカイブをご覧ください。
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv330413170

■番組放送内容
4:10 :自治体の災害備蓄・避難所はどうなってるの?
5:25 :個人で備えておけることは?
7:45 :平時と災害時で感染対策に変化はある?
10:19:災害時の新型コロナ以外の感染症対策は?
12:50:手洗いはどんなウイルスに効果があるの?
15:15:平時から災害に備えて感染対策できることは?
16:15:避難所にいくことをためらうとき、どう判断すれば良いか
20:20:自宅療養に向けた備え
23:40:自宅療養中の食事はどんなもの?

■次回の放送は2021年3月20日(土)12時15分を予定しております。
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Author
執筆: 竹下 あすか(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
作物の品種改良をやってみたくて農学部を志しましたが、気づけば農業工学分野に進学していました。大学院時代は、農業用水中の放射性物質の動態について研究し、その中で地元農家やボランティア等、さまざまな立場の方と対話を行うことの重要性を実感。いろんな人と科学や社会のことを話す場をつくりたいという思いから、未来館に来ました。