山中さわお、ロックンロールに染まったツアーファイナル「音楽がどうしても必要なんだ」

山中さわおが、2021年3月4日に東京・恵比寿LIQUIDROOMにて全国ツアー「NONOCULAR VIOLET TOUR」のツアーファイナル公演を行なった。

the pillowsのギターボーカルとしてはもちろん、GLAYのJIRO、ELLEGARDEN / PAMの高橋宏貴と共にTHE PREDATORSとしても精力的に活動してきた山中。昨年はコロナ禍で世の中が停滞する中、ソロ名義での3枚のアルバム作品をはじめ、佐々木亮介(a flood of circle)との共作EPなど驚異的なペースでリリース。さらに、2020年11月にアルバム『Nonocular violet』が発売されたことを記念して行われた本ツアーは、年を跨いで全国18公演での開催と、停滞どころかますます加速する勢いで活動してきた。そんな彼の「NONOCULAR VIOLET TOUR」ファイナル公演当日。開演前の場内には、彼のロックを目の当たりにしにきたファンが集まった。

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定刻になると、会場は暗転。観客たちからのクラップと共に、山中はアルバム制作を共にした千葉オライリー(Dr / THE BOHEMIANS)、安西卓丸(B / ex. ふくろうず)、木村祐介(G / ArtTheaterGuild)とともにステージに登場し、『Nonocular violet』のタイトル曲「Nonocular violet」からスタート。流れるように穏やかなアルペジオとともに曲は始まり、「輝く未来はきっと目には見えない花を育てて 僕らに手招きしてるって」、「キミとの再会も叶うだろう」と、曲に身を委ねるようにゆらゆらと歌いあげる。ゆったりと幕を開けたように見えたが、「POP UP RUNAWAYS」、「The Devils Pub」と少しづつエンジンを掛けていく。曲に合わせて山中は腰をくねらせたり、間奏中にはギターのヘッドで客を射抜くように構えたりと、少しずつ会場と共にテンションが高まっていく。

「本当に久しぶりじゃねえか。皆元気かい? 俺はもちろん元気だ」、「集まってくれてありがとう。最後まで本当にいい夜にしたい、よろしくね」と挨拶を済ませると、タイトル通りステージが真っ赤に照らされた「RED BAT」、「オルタナティブ・ロマンチスト」と立て続けに披露。エンジンが掛かりノリノリな山中に負けじと、木村も大きく前に出てきて切れ味のあるギターソロで魅せる。「オルタナティブ・ロマンチスト」の間奏では、千葉オライリーのビートも力強く、それに重なる安西卓丸の滑らかなベース。ツアー中の何度ものライブを経て、バンドとしてのグルーブもガッチリと高まっているのが感じられた。


Photo by 岩佐篤樹

「Old fogy」、「ノスタルジア」とどこか哀愁の漂う楽曲を経て、山中のMC。今回のツアーで回った地方の小さなライブハウスの状況について話すとともに、「今回のツアーは俺ノーギャラだから、皆はプロのミュージシャンのライブを観に来たと思ってるでしょ? 違うのよ、バンドが大好きなおじさんを観に来てるだけだから。バンドが好きなおじさんは音楽がどうしても必要なんだ」と切実に語り、会場からは大きな拍手が巻き起こる。事実、デビューから30年以上を経ても第一線で活躍し続ける彼のその言葉は、説得力を持って響いた。



「ロックンロールを楽しもう!」という言葉とともに、演奏は再開し「Slide in tomorrow!」、「Permanent black sheep」など、立て続けに披露。山中がギターソロを奏でる場面では、ロックンロールに酔いしれ、ロックンロールを楽しむ姿が光る。「無理難題と待ち合わせ」、「不格好でもまだ死ねない」と歌い上げて、「敵がいるなら戦うぜ!」と叫び、逆風の時代の中でも持ち前のロックンローラーとしての矜恃を見せつけた。新旧入り混じったセットリストの曲を聴いているうちに、例えば「Permanent black sheep」の「ブーイングを浴びても言うよ 好きなだけ」、「僕に何が出来るんだ はみだし者が喚いているだけ」と、彼はいつも自分が言いたいことを言葉と音にして、伝えてきてくれていたことを改めて実感する。それを、時には音が割れてしまうほどの力強い声で、山中は精一杯ギターを掻き鳴らして歌う。


Photo by 岩佐篤樹

彼はMCで「俺もこの歳で1年に作る曲数をあんなに(多く)出すとは思わなかったよ、ちょっと頭おかしくなってたのかな」、「色々な曲を作って、本来俺はソングライターとしては時事ネタを取り入れないタイプではあるんだけど、去年はどうしてもそれが自分の感情に入り込んできて、いくつかそういう歌を作ってしまった。この曲は今後も自分自身に対して、できれば君たちにも特別な曲になってほしいと思ってる」と語って次の曲「サナトリウムの長い午後」へ。「心を奪い返しに行こう」と、時には身体を震わせながら歌う山中の声は、どの楽器の音よりも響いてきた。山中は伝えたい言葉を特に分かり易く声を張りあげている。今回組んだセットリストは、新旧問わない様々な楽曲のメッセージが溢れていたが、以前の曲も、この時代の中で聴くからこそ改めてメッセージが胸に伝わってきた。コロナ禍でライブをしづらい日々が続いたが、それでもライブで示したい、伝えたいことが溢れていた。



最後のブロックでは、「音楽業界に爆弾を落とす!」と、不要不急とされたことに皮肉を述べた楽曲「ロックンロールはいらない」、会場の最後尾まで余すところなく手が上がった「Mallony」、ロックに染まった彼自身を「俺は死ぬ日まで他の生き方を知らない」と改めて歌い上げる「アインザッツ」など、ステージと客席の分け隔てなくラストに向かってヒートアップ。このまま駆け抜けると思いきや、ラストは「ケモノミチ」を披露。ギターのアルペジオの揺れるサウンドから雰囲気は一転し、壮大な曲の中で「もう一度人間を信じたいんだ」という言葉を力強く叫ぶ姿に、会場全てが思わず固唾を飲んだ。最後まで迫力を感じさせつつ、余韻のあるラストを迎えた。


Photo by 岩佐篤樹

会場に灯りがつきエンドSEが流れても、会場からは山中を求める拍手が止まない。この日、彼は合計3回のアンコールを敢行。アンコールを挟んで一旦落ち着くどころか、倍の勢いで「All we need is rock and roll」、「Buzzy Roars」と続ける。フロントマン3人でステージ前方に踏み出したり、ステージのモニターに足を掛けたりと、心から求めてきたロックンロールを楽しそうに見せつける山中の姿がそこにはあった。3回目のアンコールには、「1曲くらいthe pillowsの曲聞きたいだろ?」と、1人で登場した山中が「どこにもない世界」を弾き語り、ライブは終了。ライブがやりづらい時期の中で開催したツアーを駆け抜けた山中は、集まったファンに向けてマイクを通さずに一言「ありがとう」と伝え、ステージを去った。


<公演情報>

山中さわお
「NONOCULAR VIOLET TOUR」ファイナル公演

2021年3月4日(木)東京・恵比寿LIQUIDROOM
=セットリスト=
1. Nonocular violet
2. POP UP RUNAWAYS
3. The Devils Pub
4. RED BAT
5. オルタナティブ・ロマンチスト
6. Old fogy
7. ノスタルジア
8. Slide in tomorrow!
9. アトラクションガール
10. Permanent black sheep
11. All memories
12. サナトリウムの長い午後
13. HEAVENS PINHOLE
14. Answer
15. ロックンロールはいらない
16. ヒルビリーは かく語りき
17. Mallory
18. アインザッツ
19. ケモノミチ
EN1
20. All we need is rock and roll
21. Buzzy Roars
EN2
22. DAWN SPEECH
EN3
23. どこにもない世界 [the pillows]

<作品情報>

山中さわお
LIVE Blu-ray & DVD
『Nonocular monument 2021.3.4 at LIQUIDROOM ”NONOCULAR VIOLET TOUR”』

発売日:2021年5月12日(水)
【Blu-ray】価格:6600円(税込)
【DVD】価格:6600円(税込)